③防衛力整備計画(要旨)

 【2022年12月23日(金)2面】 計画の方針として、日米共同の統合的な抑止力を一層強化するため、宇宙・サイバー・電磁波を含む領域横断作戦に係る協力、相互運用性の向上などを推進するとしている。

 また、「自由で開かれたインド太平洋」というビジョンを踏まえ、多角的・多層的な防衛協力・交流を積極的に推進。円滑化協定(RAA)、物品役務相互提供協定(ACSA)、情報保護協定など、防衛装備品・技術移転協定などの制度的枠組みの整備をさらに推進するとともに、共同訓練・演習、防衛装備・技術協力、能力構築支援、軍種間交流を含む取り組みなどを推進すると記した。

○「トマホーク」の導入○

 各種誘導弾の長射程化を実施するほか、反撃手段となる米国製巡航ミサイル「トマホーク」を始めとする外国製スタンド・オフ・ミサイルの着実な導入を実施・継続する。あわせて、国産ミサイル開発を盛り込んだ。

 さらに、潜水艦に搭載可能な垂直ミサイル発射システム(VLS)、輸送機搭載システムなどを開発・整備するほか、衛星コンステレーションを活用した画像情報などの取得や無人機(UAV)、目標観測弾の整備などを行い、情報収集・分析機能、指揮統制機能を強化するとしている。

 「反撃能力」についても言及した。

 武力の行使の三要件に基づき、攻撃を防ぐのにやむを得ない必要最小限度の自衛の措置として、相手の領域で有効な反撃を加えることを可能とするスタンド・オフ防衛能力などを活用した自衛隊の能力を反撃能力として用いるとし、運用は、統合運用を前提とした一元的な指揮統制の下で行うと記した。

 また、宇宙領域を活用した情報収集、通信などの各種能力を一層向上させると言及。具体的には、米国との連携を強化するとともに、民間衛星の利用などを始めとする各種取り組みによって補完しつつ、目標の探知・追尾能力の獲得を目的とした衛星コンステレーションを構築する。

 さらに、12式地対艦誘導弾能力向上型などのスタンド・オフミサイル、弾道ミサイル防衛用迎撃ミサイル(SM3ブロックⅡA)、能力向上型迎撃ミサイル(PAC3MSE)、長距離艦対空ミサイル(SM6)、03式中距離地対空誘導弾(改善型)能力向上型などの各種弾薬について、必要な数量を早期に整備することを記した。

 加えて、早期かつ安定的に弾薬を量産するために、防衛産業による国内製造態勢の拡充などを後押しする。弾薬の維持整備体制の強化を図るとした。

○「統合司令部」の創設○

 計画の方針に基づき、各自衛隊の体制などの整備にも言及した。

 【統合運用】各自衛隊の統合運用の実効性の強化に向けて、平素から有事までシームレスに領域横断作戦を実現できる体制を構築するため、陸海空3自衛隊の部隊指揮を担う常設の統合司令部を創設し、米軍との連携もより緊密にするとしている。

 日本を取り巻く安全保障環境が急速に厳しさを増していることを踏まえ、共同の部隊を含め、各自衛隊の体制の在り方を検討すると示した。

 また、サイバー能力向上のため、共同の部隊として「サイバー防衛部隊」を保持するほか、南西地域への機動展開能力を向上させるため、共同の部隊として海上輸送部隊の新編も盛り込んだ。

○15旅団改編「師団」に○

 【陸自】作戦基本部隊に関して、南西地域における防衛体制を強化するため、那覇市に司令部を置く15旅団を「師団」に改編する。南西地域の有事の際、離島などに部隊を機動展開。各種事態に即応し、実効的かつ機動的に抑止、対処し得るようにする方針。そのほかの8個師団、5個旅団、1個機甲師団については機動運用を基本とする。

 また、スタンド・オフ防衛能力を強化するため、12式地対艦誘導弾能力向上型を装備した地対艦ミサイル部隊を保持するとともに、島嶼(しょ)防衛用高速滑空弾を装備した部隊、島嶼防衛用高速滑空弾(能力向上型)および極超音速誘導弾を装備した長射程誘導弾部隊を新編することを記した。

画像: 12式地対艦誘導弾の発射(陸自ホームページから)

12式地対艦誘導弾の発射(陸自ホームページから)

 また、持続性・強靱性(きょうじん)を強化するため、南西地域に補給処支処を新編するとともに、補給統制本部を改編し、各補給処を一元的に運用することで後方支援体制を強化するとした。

 【海自】水中、海上優勢の確保や人的資源の損耗を低減させるため、各種無人アセット(滞空型無人機=UAV)、既存艦艇の活用を含む無人水上航走体(USV)、無人水中航走体(UUVなど)を導入するとともに、無人機部隊を新編するとした。

○「航空宇宙自衛隊」に○

 【空自】宇宙作戦能力を強化するため、宇宙領域把握(SDA)態勢の整備を着実に推進し、将官を指揮官とする宇宙領域専門部隊を新編するとともに、航空自衛隊を「航空宇宙自衛隊」に改称すると記した。宇宙領域での能力強化を図る狙いがある。

 昭和29年の自衛隊創設以来、3自の改称は初めてとなる。

○防衛相が海保を統制○

 あらゆる事態に適切に対応するため、海上保安庁との連携・協力を一層強化。海上保安庁との情報共有・連携体制を深化するとともに、武力攻撃事態時における防衛大臣による海上保安庁の統制要領の作成や共同訓練の実施を含め、各種の対応要領や訓練の充実を図るという。

 所要経費などでは、2023年度から27年度までの5年間における計画の実施に必要な防衛力整備の水準に係る金額は、43兆円程度とするとし、各年度の予算の編成に伴う防衛関係費は、40兆5000億円程度(27年度は、8兆9000億円程度)とする。


【安保3文書 記事】
(①国家安全保障戦略)安保3文書が閣議決定 「反撃能力」を保有
(②国家防衛戦略)現有装備の稼働率向上、弾薬・燃料の確保など
岸田首相が会見「戦後の安保政策 歴史的に転換」
浜田防衛相「反撃能力行使のタイミングは『武力攻撃に着手した時』」


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