はじめに

 総合防災コミュニティ「学防 manabou」運営メンバーの生活密着型ママ防災士セイコです。主婦と子どもの視点から考える「普通の暮らしの中の防災」を担当しています。

 先月、避難情報に関するガイドラインが改定されました。より伝わりやすく、より行動しやすい情報で、避難するべき人が適切な避難行動をとれるよう期待されています。
先週の【防災コラム】避難情報変更 知っておきたい3つの点!にて解説されていますので、そちらもチェックしてみてください!

  でも!避難情報が改定されても、いざというとき活用できるかどうかは、自分次第。
自分がどんな避難をすれば良いのかを、あらかじめ知って・考えて・準備しておかないと、身体はすぐに動かないものです。

自分が避難することを
考えたことはありますか?

 避難ってどんな感じでしょう? 取るものもとりあえず命からがら危機から逃げ延びるイメージ? 防災グッズを詰め込んだ避難リュックを背負って、避難所に身を寄せるイメージ? 
いずれにしても普段はなかなか自分のこととして考えることはないかも知れません。

画像: 自分が避難することを 考えたことはありますか?

 もしあなたが、災害時の避難イコール災害が起きたら助けてくれる避難所に行くことだと想像しているとしたら、そのイメージは修正する必要があります。

 避難=避難所一択ではありません。災害の到達までに時間があるなら、安全な環境にあるホテル等の宿泊施設に部屋をとったり、親戚・知人の家を頼ることもできます。もちろん自宅での避難生活準備を整えることもできます。

 避難は、場所を問わず、危険な場所から離れて安全な場所に身を置くこと
いつでもどこでも災害の可能性と隣り合わせにある日本の暮らしの中で、避難は誰にとってもけっして他人事ではありません。

 では、いったいどのタイミングでどこへどのように避難するのが、自分にとって適切な避難になるのでしょうか。

避難所へ行く? 自宅に残る?

 台風や豪雨の予報が出るたびに、避難所へ行くべきか、在宅避難すべきか、迷ってはいませんか? 

 災害の被害想定上、確実に避難をしておいた方が良い土地があります。
まずは自宅(自宅以外でも自分がいる場所)の被害想定をハザードマップで確認しましょう。ハザードマップは役所や公民館などで手に入りますし、各自治体のホームページなど、インターネットで調べることもできます。
 私がよく見ているのがコチラ→ 国土交通省ハザードマップポータルサイト 生活圏外に出かけるときには、現地の災害リスクを簡単にチェックしています。

画像: インターネット上で全国の災害リスク情報を調べられる「重ねるハザードマップ」/各地域発行のハザードマップにアクセスできる「わがまちハザードマップ」 ハザードマップポータルサイト(国土交通省)

インターネット上で全国の災害リスク情報を調べられる「重ねるハザードマップ」/各地域発行のハザードマップにアクセスできる「わがまちハザードマップ」

ハザードマップポータルサイト(国土交通省)

紙のハザードマップは、作成年度の新しいものを参考にしましょう。

 ハザードマップで「洪水」「内水氾濫」「土砂災害警戒区域」等が表示されている土地そしてその周辺で、自分のいる場所が被害を受ける恐れがあるなら、逃げ道があるうちにそこから早めに移動しておくべきです。災害がいよいよ迫ってからでは外への移動は難しくなり手遅れになりかねません。

 2018年に発生した西日本豪雨は多くの犠牲を伴う大災害となりました。発災以前に作成・公開されていたハザードマップの被害想定と実際の浸水区域がほぼ一致していた地域もありましたが、ハザードマップを見たことがなかった住民も少なくなかったようです。事前に危険区域を知り、脱出できていれば助かっていたかも知れないと思うと胸が痛みます。

 新型コロナウイルス感染症対策の緊張が高まって以降、多くの人が集まる避難所でも対策が施され、在宅避難・分散避難という選択肢が以前にもまして意識されるようになりました。

 感染拡大は気がかりですが、危険が想定されていて逃げるべき土地の方は、まずは迫る災害から命を守るために迷わず避難所へ行ってください。もちろん、感染症対策用の持ち出し品を準備しておきましょう。

画像: 避難所へ行く? 自宅に残る?

 台風や豪雨、大雪といった気象災害は、事前の予報などで比較的、自分に合った避難準備をする時間を確保することができます。そのチャンスをいかし、避難所よりも感染症対策がしやすい避難先を見つけることも一案です。

 とはいえ、ハザードマップはあくまで想定ですから、わざわざ避難したのに実際の被害はたいしたことなかった!ということもあるでしょう。でもハズレだった・やるだけ無駄だったとは思わないでください。実体験で発見できることがきっとあります。その発見は次の災害時に必ず役立ちます。

 そこが危険な土地なら必ず離れる。それが確実に命を守る方法です。

我が家はどうする?迷いに答えを出すために、避難行動を実践してみた

 避難所へ行くのか、自宅に残るのか。
それは私自身が長らく迷っていた問題です。幼い子どもを3人連れて、よそに避難をしに行くのは考えるだけでも大変。
 自宅は土砂災害警戒区域にあり本来は避難すべき立地です。でも、建物の造りと斜面の規模や形状を考えると、建物が大きく損壊することはなさそう。子連れ(しかもペット同行)避難の大変さと天秤にかけて、不安を残しながらも在宅避難を選んできました。

 迷いがあるままでは緊急時の初動が遅れるのは間違いありません。答えを出すべく、一昨年ついに私は娘と2人で台風の夜を避難所で過ごしてみることにしました。実は私にとって人生初の避難所体験です。

 普段からそれなりの防災意識をもって準備しているつもりの私でしたが、いざ実行に移してみると多くの過不足を感じました。発見と反省のオンパレード。まさに実践してみてこそ分かった事実がいっぱいでした。

 先に結論を言ってしまうと、我が家の「避難所へ行くか・在宅避難か問題」は、
・短期的な台風の時は基本的には在宅避難
・長期的な豪雨となる場合は別の場所へ避難
という方向性で確定しました。

 避難所体験を通して、なぜこの結論に至ったのか、我が家の”大したことはなかったけれど、甘くはなかった”水害避難の記録を振り返ってみたいと思います。

水害避難所に避難してみた(前編)

<いつ?>
2019年9月8日 令和元年台風15号(令和元年房総半島台風)

<どうして避難することにしたの?>
 自宅は、鉄筋コンクリート造のマンション中層階。比較的築浅で暴風雨による大きな損壊はあまり考えられません。が、立地としては土砂災害警戒区域にあり、ハザードマップ上では避難すべき土地に分類されます。
心配されるのは、大雨で地盤が緩んで裏の急傾斜地が崩れてくること。

<避難所へ行こうと決断するまでの流れ>
午後4:26 避難情報【警戒レベル3】「避難準備・高齢者等避難開始」の発令
「高齢の方や障がいのある方など、避難行動に時間がかかる方は、避難を開始。その他の方は、避難の準備を整えるとともに、自発的に避難を開始して下さい。」

ココが今年の改定ポイント!①
改定後→【警戒レベル3】「高齢者等避難開始」
避難準備という文言が削除され、主に高齢者や障害のある方の避難のタイミングとして明確になりました。身体に負担のない人も、危険が想定されている地域からは、なるべく早く避難を開始しましょう。

 その日【警戒レベル3】避難準備・高齢者等避難開始が発令されたとき、私は周囲が騒がしい場所にいたため、登録していた市の防災情報メール通知に気づきませんでした。

 自宅にいた次男がいち早く避難情報を耳にし「高齢者等避難開始が発令されたけど、ひいおばあちゃん、どうする?」と電話を掛けてくれたおかげで、発令からすぐに避難情報を知ることができました。市の防災情報メールには、市内のどこの避難所が開設されているのかが記載されていました。

 でも外はまだ青空が残り、避難なんてまだ早すぎるように感じてしまうような雰囲気だったのです。ところが…

午後7:48 避難情報【警戒レベル4】「避難勧告」の発令
「河川周辺及び土砂災害のおそれはある区域にいる方は速やかに避難を開始してください」

ココが今年の改定ポイント!②
改定後→【警戒レベル4】「避難指示」
「避難勧告」が廃止され、「避難指示」に変わりました。明確に「避難せよ」という表現になったわけです。【警戒レベル4・避難指示】が発令されたら、危険にさらされる恐れのある場所にいる人は、迷わず全員避難。

 夕飯が済んだ頃、ついに【警戒レベル4】の発令。当時は、今回の改定で廃止された「避難勧告」でした。ハザードマップで危険とされている地域の住民は「避難すべき」という通知です。

 でももう外は暗く、雨が降っていました。この状況になってからの避難開始は不便かつ不安で、高齢者や子連れの家庭などにとっては避難を躊躇する十分な理由になると感じました。次男が電話で心配していた高齢のひいおばあちゃんに徒歩で避難してもらうのは、もう難しかったと思います。(※ひいおばあちゃんは在宅避難のつもりでしたので問題ありませんでした。)

 【警戒レベル3】が発令された段階で避難所へ向かっていれば、雨に濡れることもなく、はるかに楽に安全に移動できていたはずです。

防災情報・避難情報は
どこから得ていた?

 私は、台風の進路や到達時間の目安などを天気予報アプリやインターネットでしばしば確認していましたが、直前の避難情報【警戒レベル3】の通知は、家族からの電話がなければ、気づくのが遅れていました。電話をくれた次男は、自宅の防災ラジオで発令を聞いたそうです。

情報入手の方法① 自分から情報を取りにいく
・TV、ラジオ
・国土交通省・気象庁ウェブサイト
・インターネットのニュースサイト
・SNS ※公式アカウント
・天気予報、災害情報アプリ
など

画像: 気象庁ウェブサイト 何もない時にあちこち探索して、どのページでどんな情報が見られるのかを把握しておくと、非常時のバッテリー節約につながります。

気象庁ウェブサイト 何もない時にあちこち探索して、どのページでどんな情報が見られるのかを把握しておくと、非常時のバッテリー節約につながります。

情報入手の方法② 災害情報の通知を受け取る

・市区町村発信の防災メール等を受信する
・防災ラジオで避難情報等を受信する
・家族・知人で知らせあう

画像: 藤沢市の防災ラジオ(有償配布)。 常時通電させておくと、防災行政無線を自動で受信。普段ラジオを聴くときの設定音量に関わらず、緊急情報は大音量で流れます。

藤沢市の防災ラジオ(有償配布)。 常時通電させておくと、防災行政無線を自動で受信。普段ラジオを聴くときの設定音量に関わらず、緊急情報は大音量で流れます。

避難所へ行く理由/自宅に残る理由を考える

 避難すべきか否か。我が家が台風によってどんな被害を受け、どこまで対処できるのかが検討要素になります。

①電気や水道のライフラインが止まるかも!?
→ライフライン停止は、備蓄品でしばらくは対応できる。
在宅避難可

②飛散物で窓が割れるかも!?
→自宅の外回りは片付け済。その他の予期せぬ飛散物も考えられるが、網入りガラスのサッシなので比較的飛散しにくく、段ボールやカーテンなどで予防・応急処置できる。
在宅避難可

③もし土砂崩れが発生すると、土砂が流れ込んでくる恐れのある位置に寝室がある。
→ハザードマップの想定被害の最悪の場合
避難しておくべき

 避難所へ向かうデメリットも考えあわせます。
・まだ威力は強くないものの、雨降る夜に避難リュックを背負って歩いて行くことの危険性。
・飼い猫の同行避難の問題

 みなさんなら、避難所へ行きますか? 在宅避難を選びますか?

 我が家5人で相談をし、父と息子たちは自宅に残り、母と娘は避難所へ行ってみることに。お互いの身を案じつつ、家族ふたてに分かれて実験です。時はすでに午後8時を回り、雨足もだんだん強まってきています。避難するとなれば、なるべく早く避難所に到着したいもの。

 避難リュックはいつでも準備済みです。ささっと背負って、さあ出発!

 と、いきたいところだったのですが…準備万端だったはずの避難セットに大きな想定ミスが!

 出鼻を挫かれやきもきしながら、なんとか迎える”防災好き母娘”の避難所の一夜、どうなることやら…〈後編(避難所の様子、役立った持参品などのお話。7/7投稿予定)〉につづく!!

防災コミュニティ「学防 manabou」

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