はじめに

 こんにちは。ヨメナルドです。

 みなさんはこの頃、「避難指示一本化」や、「避難勧告廃止」等の言葉を、ニュースで見たり聞いたりしていると思います。このニュースは、改正された災害対策基本法という災害に関する大本の法律が今月20日に施行され、洪水や土砂災害、高潮等の災害の際、新しい避難情報を用いることなったため、その周知として伝えられています。

なぜ変わったか

 この様な制度の変化があった理由として、

・令和元年の台風19号の被災時に避難をしなかった、または避難が遅れたことによる被災が多かった。避難指示と避難勧告の違いがわかりにくく、特に避難勧告で避難しない人が多かった。

・逃げ遅れて身の危険が迫ったときに、建物の上階に移動するだけでなく、屋外のより安全な場所への避難等を促し、柔軟に安全を図ることが必要となった。

・住民に「自らの命は自らで守る」という意識をもってもらい、自らで判断・行動し、国や自治体がそれを全力で支援するという社会をつくることが必要だということを目指していたが、まだ不十分であること。

などが主な理由として挙げられています。

何が変わったか

 では、何がどのように変わたかというと、

1、避難の発令の内容が簡潔・明確に変更された

2、土地や建物にあわせて、避難の発令をする場所を絞り込むことができるようになった

3、発令情報の絞り込みをすることで、避難所以外の避難方法を選択しやすくなった

という3点が挙げられます。以下で、詳しく説明します。

 

1、避難の発令の内容が変わった

  ニュースでしきりに言われている「避難指示一本化」がこれにあたります。

画像: 『避難情報に関するガイドライン』文中の「警戒レベルの一覧表(周知・普及啓発用)」に旧情報を加筆

『避難情報に関するガイドライン』文中の「警戒レベルの一覧表(周知・普及啓発用)」に旧情報を加筆

 上の図のように、従来あった「避難勧告」がなくなり、避難指示と避難するタイミングが明確化されました。また、「避難準備・高齢者等避難開始」という従来の名称が長いうえわかりにくいということで、「高齢者等避難」と簡潔に短くなりました。

 「緊急安全確保」は、緊急という表現により命の危険が差し迫っていることをわかりやすくし、安全確保という言葉で何より危険を回避することを明確にした言葉を組み合わせたものです。

 

2、市町村長が出す避難指示が、細かく発令できるようになった(発令情報の絞り込み)

 洪水等の恐れのある場合に避難の指示を出す人は、気象庁でも国でもなく、各市町村長と決められています。その市町村長が出す避難指示の発令の仕方も、今回変わりました。新しい制度では、市町村長が、浸水の恐れがある地域から立ち退く避難を住民に対して指示する際に、必要と認められる居住者に立ち退く指示ができるようになりました。

 逆を言えば、今までは、洪水が予想されるエリアに住んでいる人全員に避難の指示が出ていましたが、今回の法改正により、洪水で浸水するエリアに住んでいても浸水の深さより高い上層階に住んでいる住民には、必ずしも立ち退いて避難をすることを求めなくてもいいということとなりました。

画像: 避難情報に関するガイドライン www.bousai.go.jp
避難情報に関するガイドライン
www.bousai.go.jp

 例えば、図のように建物の三階まで浸水するエリアの住民に対しては、今までは浸水の恐れのない4階以上の住民も避難の対象として避難指示を出さなければいけなかったのですが、20日からは、必ずしも4階以上の住民に立ち退きを求めないことが可能となりました。 

 しかし、これには注意すべき点があります。ガイドラインによると、市町村長は、個々の具体的な情報まで把握することは難しいため、実際の運用の際は、「従前どおり、発令対象区域の居住者等にまとめて避難情報を発令し、具体的な情報伝達のなかで、自らの判断で屋内安全確保も検討するよう促すことで差支えない」としています。したがって、自宅に浸水リスクがなくても避難指示が従来通り発令されるけれども、立ち退いての避難が必要かどうかは個人の判断で検討することが必要になります。

 

3、発令情報の絞り込みがされることで、避難所への避難が少なくなる

 2、で話した発令情報の絞り込みが可能となったことで、住民も、自宅が浸水の恐れがないことがわかれば、洪水等の災害発生の恐れの際も、自宅に留まる「自宅避難」をする選択がしやすくなりました。避難というのは「難を避ける」ものです。自宅が安全であれば、大雨の中移動するリスクを負ってまで避難所に避難をする必要はありません。

 現在は新型コロナウイルスにより、避難所の収容人数が少なく見積もられているので、避難所へ行っても満員で受け入れられないことも考えられます。そのため、自宅が安全な場合は自宅に留まることや、避難指示を受けない地域の知人宅への避難をする避難方法を選択する優先度が高くなると思います。
 避難=避難所という考えだけではなく、様々な避難方法を自分で計画することが必要です。

自宅避難の判断方法は?

 しかし、自宅に避難していて本当に大丈夫か不安もあると思います。内閣府では、図「避難行動について(屋内安全確保を行う上での条件)」のように、3つの条件を示していて、全てに当てはまれば、自宅にとどまり安全を確保することが可能としています。

画像: 新たな避難情報に関するポスター・チラシ www.bousai.go.jp
新たな避難情報に関するポスター・チラシ
www.bousai.go.jp

 自分の家で自宅避難ができるか、または避難が必要かは、自分の自宅が①浸水または家屋の倒壊等のおそれがある地域かどうか②浸水する場合の浸水の深さ③浸水が継続する時間を事前に確認しなければなりません。今回の避難情報の改正は、ハザードマップを確認していることが前提であるといえます。

 多くの自治体は、浸水地域とその深さを表したハザードマップを作成しておりますので、皆さんの自治体のホームページから確認してみてください。しかし、浸水の継続時間や家屋倒壊等地域が示されていな場合もあります。浸水地域に住んでいるけれども、浸水継続時間や家屋倒壊等氾濫想定区域かわからない場合はお住まいの市町村に確認するように、ガイドラインを作成した内閣府が勧めています。

まとめ

 今回の避難情報の変更は、逃げ遅れを減らし被害を抑えるために行われました。従来に比べ、簡潔で明確な避難指示を具体的に指定できるようになりました。しかし、最終的な避難方法の判断は住民が自分の自宅のリスクを調べ、決断することが必要になりました。

 川が増水しやすい時期とされる出水期は河川毎に異なりますが、おおむね6月からとされています。出水期はもうすぐです。
 ガイドラインにもあるように、「自らの命は自らで守る」。この意識で、ハザードマップの確認や備蓄の準備をお忘れなく!

参考文献

・内閣府『避難情報に関するガイドライン』http://www.bousai.go.jp/oukyu/hinanjouhou/r3_hinanjouhou_guideline/pdf/hinan_guideline.pdf

・内閣府『避難情報に関するガイドラインの説明資料(スライド形式)』http://www.bousai.go.jp/oukyu/hinanjouhou/r3_hinanjouhou_guideline/pdf/hinan_guideline_3.pdf

・内閣府『避難情報に関するガイドライン(別冊)』http://www.bousai.go.jp/oukyu/hinanjouhou/r3_hinanjouhou_guideline/pdf/hinan_guideline_2.pdf

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