雷は直撃しなくとも地面や建物を伝わり2kmまで被害が生じる

 自然災害というと地震や台風、大雨などが思い浮かぶが、意外に知られていないのが雷による被害だ。

 雷は直撃しなければ大丈夫と思われがちだが、落雷電流は非常に大きいため、配電線や通信線近傍の電磁界が急変し、電源線や通信線への誘導による雷サージ(過渡的高電圧や過渡的高電流)が発生し、電気設備に大きな被害を与える。

 停電以外にも雷サージが電源線などを通ってパソコン機器に侵入もしくは発生し、最悪の場合、HDD(ハードディスクドライブ)などの記憶装置が壊れ、重要なデータを失う危険もある。

 長年、雷対策メーカー関係者と共に、国内の幅広い施設の電気火災予防に取り組んできた株式会社ミリオンズ代表の小山武夫氏は、日本における雷対策への認識不足に警鐘を鳴らす。

──紫外線C空気クリーナーの開発に携わった経緯を教えてください。

 小山 雷の被害というと、空から落ちてくる雷に直撃する「直撃雷」のことを想定されがちですが、実際には直撃雷以外にも、樹木や地面に落雷した場合などでは、猛烈な電磁界により、その近傍の電線などに発生する「誘導雷」によって被害が生じる場合が多いです。また、電気学会の発行する技術報告(902号)によると、雷による年間被害総額は1000億円~2000億円と推定されています。

 昨今、雷の発生頻度やゲリラ豪雨などの気象異常が年々増えてきており、弊社にも雷から電気機器を保護したいという問い合わせが増えていたため、簡易的でも強力な雷対策製品を普及させたいと考えておりました。

 本格的な雷サージ対策をする場合、日本工業規格(JIS)に基づいた、専門家による接地工事・等電位ボンディング・避雷器(SPD)の設置が有効ですが、場合によっては避雷針の設置を行うこともあり、何ヶ月もかかる大掛かりな工事となります。

 そこで、少子高齢化による技術者不足になりつつある現在、もっと手軽に雷サージ対策ができる商品が必要だと考え、ちょうどコロナ禍ということもあり、空気除菌機能(電気消毒器)と雷対策の両方の機能を備えた商品「紫外線C空気クリーナー(イナズマガード)」が誕生しました。

 紫外線C空気クリーナーは経済産業省の定めるところの電気消毒器であるため、本装置の有するサージ処理能力は本装置の正規性能表記とはなりませんが、本装置を接続する10メートル範囲の100Vのコンセントにつながっている同系統の電子機器について10年間、十分な雷サージ防御効果が得られます。コンセントに差し込むだけで、工事も不要です。

 実は同様の雷対策機器(UL認証SPD)は、アメリカなどの先進国では全ての建物に取り付けることが法律で義務化されているのですが、先進国の中で唯一日本だけがまだ導入が義務付けられていないのです。

ミリオンズの代表・小山氏

 小山 雷サージによって物が壊れるだけでなく、ブレーカーそのものが雷サージに耐え切れず、火災に至る危険もあります。紫外線C空気クリーナーは、UL/CE/TUV()共通の技術基準をクリア。UL認証されている防煙・防火SPD(避雷器)を採用しており、処理能力以上の大きなエネルギーが侵入・発生しても、製品自体が発火しないよう安全に抑える(故障する)機能が備わっています。

※UL:アメリカの認証機関が策定する安全規格、CE:欧州連合が策定する安全規格、TUV:ドイツの認証機関が策定する安全規格

 本装置は前述した通り正規性能表示とはなりませんが、定格サージ処理能力は、2kA(8/20(μs))2000回以上(UL/CE/TUV)、5kA(8/20(μs))では15回以上(UL/JIS/CE/TUV)です。また、サージ抑制動作開始電圧は300(V)±10%となっており、実態としてのコンセントまで到達するレベルの雷サージ処理能力は90%以上と確率計算しております。

 コンセントまで到達するレベルの雷サージは2kA(8/20(μs))までのものが97%(ただし、日本海側などの激雷地域では90%のため、定格は90%以上)であり、平均的に10年で2000回に達する計算です。

 また、過渡的高電圧や過渡的高電流は雷以外でも発生します。例えばパソコンから発生するノイズもそうですし、そういったものを取り除くだけで機器の寿命を延ばすことが期待できます。コンセントや他の電子機器、スイッチング(電源のオン・オフ等)などに起因するサージを意識すると共に本装置を導入していただいて、今まで以上に良質な電気を使ってほしいですね。

雷対策+換気補助のW機能を搭載した紫外線C空気クリーナー

自然エネルギーを防災灯に活用!明かりが被災者の心の支えに

 太陽光発電とバッテリーを利用した、停電時でも消えずに利用できる照明機器の開発・製造を行っている株式会社オーディックス

 早くから太陽光をはじめとする自然エネルギーに着目した代表の畠山剛治氏は、東日本大震災で明かりの安心感というものを改めて認識し、ソーラーライトが防災に役立てると決意を新たにし、開発に取り組んだ。

 ──ソーラーライトを開発したきっかけは何だったのでしょうか。

 畠山 もともとは、前身の会社が大手の電気機器メーカーの下請けをやっていたのですが、その後「自分たちで何か作ろう」と始めたのがきっかけです。

 ソーラーパネルに着手した理由は、先代が「これからの時代はソーラーパネルだ」と先見の明を持っていたからです。

 製品開発に試行錯誤している時に東日本大震災が発生しました。友人が気仙沼市で被災した際に、弊社のソーラーライトを届けたのですが、改めてソーラーライトに関心が集まり、津波避難タワーや避難施設、指定避難所などに導入していただきました。

 ソーラーライトの基本構造は、昼間はソーラーパネルによって発電し、内蔵されたバッテリーに蓄電します。日が落ちて暗くなるとコントローラーが認識してLEDライトが自動で点灯する仕組みです。

 避難所では明かりが点いているだけで皆さん安心します。われわれも計画停電の際に、ソーラーライトのテスト設置をしたのですが、真っ暗闇の中では、わずかな光でもとても明るく感じました。

 そして、私たちが思っている以上に、弊社のソーラーライトが防災に役立てられると思いました。

オーディックスの代表・畠山氏

 畠山 これまでソーラーライトを設置した現場も実にさまざま。弊社のある静岡県には駿河湾や伊豆半島があり、山が切り立っている場所では太陽がまったく当たらず、ソーラーパネルを置く場所がない場合もあります。

 そのようなケースでは、太陽の当たる場所にソーラーパネルを設置し、イルミネーションユニットへ配線を延ばし設置するしかありません。現場ではさまざまな課題が生じるのですが、弊社の強みはお客様の要望に合わせたカスタマイズをすることができることです。

 例えばセンサーを取り付ける場所や点灯時間などもそうです。「この坂を上がって避難路まで行くには5~10分はかかるから、一度ライトが点いたら20分は点灯するよう設定する」、また「センサーは坂の登り口だけでなく、上った山の上の方にも設置した方がいい」など、たったそれだけのことで、使い勝手というのは大きく変わります。

 現場に行き、利用される方と相談して、導入しやすい形で提供することで、防災のお手伝いをさせていただいております。足りない部分を補うこともあれば、逆にお客様が不要に感じる部分を割愛してコストを下げる提案もできます。

 停電で突然電気が消えた時に、明かりがあると安心しますから。避難指定地となっている場所に付けて、有事の際の目印にしていただいたり、老人ホームなどの介護施設にも導入してほしいですね。

ソーラーライティングシステム「PLシリーズ」の設置イメージ

震度7の揺れにも耐えうる転倒防止商品

 阪神淡路大震災で亡くなられた方の死因の多くは、家屋や家具の下敷きによる圧死や窒息死だったといわれている。

 建材販売やエクステリア工事、耐震補強工事などを手掛けている株式会社庄の屋では、家具転倒防止BOX「耐震君」を販売。

 家具の上に耐震君を置いてジャッキアップしていくと、家具と天井を突っ張り棒の要領で固定。面で支えることにより、抜群の安定性と耐震性を誇る商品だ。同社の代表・庄野章夫氏は自信を持って推奨する。

 ──耐震君の販売を開始した経緯を聞かせください。

 庄野 弊社はもともと建材販売から始まり、エクステリア工事耐震補強や耐震工事なども請け負っている、地域密着型の会社です。

 会社のある徳島県は、南海トラフ巨大地震の震源域に入っていますし、巨大地震が発生した際の津波の第一波が到達するまで3分しかありません。その分、県民の地震災害に対する危機感や意識は強く、役所や学校、企業でも家具や棚の転倒防止対策はしっかりやっていると思います。

 一方、従来の転倒防止器具は、突っ張り棒などで支えるものが多かったのですが、棒が外れてしまうなど耐震性に不安がありました。また、転倒防止の粘着テープなどはテレビや高さの低い家具に付けるものなので、高さのある家具や書庫に付けるのは危険です。そもそも、家具や書庫を持ち上げるのは大変ですから。

 それに、転倒防止グッズを自分で付けられないという人もいますし、天井で固定する突っ張り棒タイプのものは、家具の手前ではなく、奥の方に設置しないと意味がありません。

 そのような声を聞くたびに心配になっていたんですが、「耐震君」の存在を知り、いいアイデアだと思いました。

 「耐震君」は面という広い範囲で支えるので、強度は申し分ありません。耐震実験場で震度7の実験でも耐えられたので、自信を持って販売できるものだと思いました。

庄の屋の代表・庄野氏

 庄野 女性でも簡単に取り付けられますし、天井との高さもドライバー1本で簡単に調整できるのも使いやすいですね。

 「ジャッキBOX」と合わせて使う「収納BOX」には防災グッズを入れておけば便利ですし、デッドスペースも生かすことができます。

 家具屋さんがお客様へ家具と合わせて「耐震君」をセットでお届けしているケースもあります。

 実は、徳島県は2023年中に人口が70万人を割り込み、高齢化率が4割に近づくことが予測されています。また、徳島県の経済規模は全国の1/170ほどということもあり、もっと外に訴求していきたいという思いもありました。

 今後はデザインにもこだわり、一般家庭から企業まで幅広く導入していただけたらと思います。

耐震君を設置する様子。ドライバー1本で女性でも簡単に取り付けられる。天井までの高さも収納BOXを組み合わせれば対応可能

さまざまな製品やサービスをセットで提案可能

 「危機対策&アウトドア総合展online」チームでは、メンバー間のコラボも実現している。

 庄の屋では浄化槽(マンホール)に取り付ける災害時用トイレも取り扱っているが、段ボール製だった便座部分の耐久性を向上させるため、C-SOSの「BENKING」の高密度発泡スチロールを採用して開発を進める予定だ。

 また、非常用バッテリー内蔵電灯も、室内においてはアスプラウトの「いつでもランプtsuita」、屋外であればオーディックスの「ソーラーライト」、電気の充電などの要望があれば国重・ライティングの蓄電池「タメルラボ.」を提案できる。

 それぞれの領域のプロフェッショナルが集い、さまざまな製品やサービスをセットで提案できるのも「危機対策&アウトドア総合展online」チームの強みといえる。

36社共同で防災意識の改革を呼びかけるメッセージ「Re防災」

 「危機対策&アウトドア総合展online」の全出展社を含む、全国で防災活動や復興支援に取り組む36社・組織は共同で、防災意識の改革を呼びかけるメッセージ「Re防災」を発信していく。

 生活者の視点で日常生活における防災対策の大切さを発信するとともに、専門性が高い各参加団体のコラボレーションやシナジー効果のさらなる向上を図るのが目的だ。

 情報発信の一環として、「災害対策の日常化」を題材に訴えかけるポスターも完成。

 地震計の記録紙と街並みを一体化したデザインによって、私たちの生活と表裏一体にある災害や、防災対策によって維持する日常生活を表現している。

災害対策の日常化を訴求する「Re防災」のポスター6種

(協力:アスプラウト株式会社、株式会社カイデア、株式会社C-SOS、株式会社サンアート・クリエイト、国重・ライティング株式会社、株式会社ミリオンズ、株式会社オーディックス、株式会社庄の屋 ※順不同)

→【日本を護る VOL.04②】いま備えておきたい防災商品&サービスを紹介!


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