画像1: 【特集】地域とともに|沼田分屯地、第2特科連隊×北海道沼田町

~信頼~ 地域とともに歩む自衛隊

「地域とともに」をスローガンに、支援や交流、協力を通じ、相互の信頼を深める姿を報告

 「地域とともに」をスローガンに掲げる自衛隊は、地方自治体などからの要請を積極的に受けて支援している。地域住民との交流にも努め、地域社会との「信頼」をより一層深めることで、地域コミュニティーの維持・活性化に大きく貢献してきた。企画「信頼―地域とともに歩む自衛隊」では、イベントや交流を通じて信頼感を育む活動や、自衛隊と「共存」する地域が観光や特産品などを通して活性化を目指す様子など、「地域と自衛隊」のさまざまな姿を浮き彫りにしていく。第1回は、北海道の沼田町が登場。有名な夏の祭りでの連携の話題を中心に、自衛隊と手を携えながら全国へ発信を続ける町の「今」も併せて紹介する(随時掲載)。

「沼田町夜高あんどん祭り」
夏まつりに「参戦」地域社会の活性化に貢献

 北海道のほぼ中央。自然あふれる沼田町がこの夏、激しい熱気に包まれた。8月25、26の両日に開催された「沼田町夜高(ようたか)あんどん祭り」だ。今年で47回目となる祭りは、「斜里ねぶた」「八雲山車行列」と並ぶ北海道3大あんどん祭りとして知られる。

画像1: 提供:沼田町

提供:沼田町

 あんどんと呼ばれる山車(だし)は竹細工で龍や御所車を型どり、約500個の電球を仕込んで約6000枚の和紙を貼り、ロウ引きをして秘伝の色で彩色される。極彩色で施されたあんどんの一大絵巻が8月の2日間、沼田の町で繰り広げられた。

自衛隊も「参戦」
 
 自衛隊はこの町のビッグイベントに、沼田分屯地(司令・佐々木2陸佐)が開設された平成2年から参加している、今年も町を通じて要請を受けた自衛隊は強力な態勢を整えて「参戦」した。

画像: 「沼田町夜高あんどん祭り」 夏まつりに「参戦」地域社会の活性化に貢献

 その数は、沼田分屯地から20人、近隣の近文台(ちかぶみだい)燃料支処から10人、安平(あびら)弾薬支処から10人の計40人。旭川駐所在の2特科連隊(連隊長・川口1陸佐)からも太鼓チーム「北鎮太鼓」を含め、56人が集結。気合十分で「出動」した。

画像1: 提供:陸自2師団

提供:陸自2師団

画像2: 提供:陸自2師団

提供:陸自2師団

 大型あんどんの製作は、商工会や農協、町役場などの職域ごとに行われる。沼田分屯地も自前のあんどんを製作して臨んだ。

迫力満点のぶつけ合い
 
 いよいよ、本番。町によると、今年のあんどんは大小合わせて10数基が参加。大勢の引き手に支えられ、練り歩いた。自衛隊も商工会のあんどんに25人、役場あんどんに15人などで支援した。

 最大の見せ場は、高さ7メートル、長さ12メートル、重さ5トンの大型あんどん同士のぶつけ合い。一瞬にして壊れていく場面が、道内唯一の「喧嘩けんかあんどん」だ。

画像2: 提供:沼田町

提供:沼田町

 今回、自衛隊は、沼田分屯地が分屯地所有の1基、2特科連隊が沼田町所有の2基の全3基のあんどんを担当。観衆から大きな拍手を受けた。

 また、分屯地所有のあんどんには、「沼田自衛隊」の文字が描かれ、沼田町とともに歩む自衛隊の存在が大きくクローズアップされた。

画像: 提供:沼田分屯地

提供:沼田分屯地

画像3: 提供:陸自2師団

提供:陸自2師団

誘致運動を経て築いた絆、さらに深く

「要請あれば」
 
 自衛隊と沼田町との歴史の端緒は、昭和44年に遡る。

 沼田町によると、昭和初期から町内の基幹産業として栄えた炭鉱三山が一挙に閉山。こうした事態に対処する形で自衛隊誘致運動が始まった。

 その後、演習場予定地の問題など紆余曲折を経たが、町が昭和61年に町有地の売却を決め、同10月、沼田弾薬庫が着工した。平成2年3月26日には、「沼田弾薬支処編成完結式および沼田分屯地」の開設式が行われ、全国で158番目、道内では28番目の自衛隊分屯地が誕生したという。

 全町一致の運動による成果となった沼田町の自衛隊。(支援の)「要請があれば、参加します」。その言葉通り、今では8月のイベントを含め、さまざまな場で地域社会にしっかりと根ざしている。

夜高(ようたか)あんどん

 承応2年(1653)、越中・砺波の里で福野村の鎮守の氏神として、伊勢神宮より御分霊を勧請した還宮の行列一行は、加賀と越中の国境である具利加羅峠にさしかかったところで日暮れを迎えてしまい、先へ進めなくなった。知らせを飛脚で知った村民たちが、燈火用のあんどんを持って峠へとはせ参じ、村を挙げて奉迎したとされる。これを起源として祭りが生まれ、地元で代々受け継がれてきた。

 昭和52年、町の開拓者・沼田喜三郎翁の故郷(現在の富山県小矢部市)の松本市長と津沢の有志により、沼田町の開基80年(昭和49年)を喜縁として町に伝承された(沼田町ホームページなどから)。

沼田町を知る

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 沼田町(図は同町の町章)によると、町は石狩平野の最北部に位置し、人口は2951人(令和4年1月1日時点)。かつては炭鉱と稲作の町として繁栄していたが、昭和43年に雨竜炭鉱が閉山。その後、稲作中心の農業の町へと転換した。

画像1: 沼田町を知る

 7月上旬から8月上旬にかけ、ほろしん温泉にある「ほたるの里」ではホタルが飛び交い、満天の星空と相まって幻想的な絶景がみられる。平成11年には、NHKの連続テレビ小説「すずらん」のロケ地として全国に放送された。

画像2: 沼田町を知る
画像3: 沼田町を知る

 また、SDGs(持続可能な開発目標)にも積極的に取り組んだ町政を実施しており、2021年(令和3)には、50年までに二酸化炭素実質ゼロを目指す「ゼロカーボンシティ」を宣言した。

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 具体的な取り組みの一つに雪冷房の導入があり、米を貯蔵する「スノークールライスファクトリー」は世界でも珍しく、平成8年に完成した雪冷房を導入した施設で、庫内の環境を温度5度、湿度70%に低温貯蔵することができるという。米の品質劣化を防いだ「雪中米(せっちゅうまい)」 は、今では町の特産品となっている。

画像4: 【特集】地域とともに|沼田分屯地、第2特科連隊×北海道沼田町

 また、契約農家が完熟してから収穫する加工用トマトを使ったトマトジュースやトマトケチャップもおすすめの特産品だ。「ぜひ、お試しください」と町では強力にPRしている。

 8月中旬の金・土曜日に実施される「沼田町夜高あんどん祭り」は、元気な沼田町を全国へPRするイベントとなっている。

「トマト」「雪中米」…、特産品を「ふるさと納税」で全国に発信

 沼田町には地域ならではの素材が多くあり、その資源を維持し、守っていくため、「ふるさと納税」を通し、全国に広く寄付を募っている。

 加工用トマトを使ったジュース、ケチャップ、雪中米など、全国に誇る町の特産品を中心に、支援を呼び掛けている。

画像1: 「トマト」「雪中米」…、特産品を「ふるさと納税」で全国に発信
画像2: 「トマト」「雪中米」…、特産品を「ふるさと納税」で全国に発信

 沼田町では、応援してもらった寄付の使途について、(1)地域医療体制の充実(2)農業・商工業、観光の振興(3)移住定住の促進(4)小中一貫連携教育の推進(5)住宅・住環境や雪対策の充実(6)協働のまちづくり―などのほか、ホタル、雪中米などの地域資源を生かした関係人口の拡大などのために充て、「子供たちが誇りを持てる元気な街づくりに全力で取り組む」としている。

沼田町「ふるさと納税」はこちらから

<沼田町ホームページ>
https://www.town.numata.hokkaido.jp/
画像3: 「トマト」「雪中米」…、特産品を「ふるさと納税」で全国に発信
画像: 町の写真はすべて沼田町提供

町の写真はすべて沼田町提供

画像4: 「トマト」「雪中米」…、特産品を「ふるさと納税」で全国に発信

<編集部より>

 本日2面は、防衛日報社がこの秋からスタートさせた新特集「信頼ー地域とともに歩む自衛隊」を1ページでまとめました。

 「地域とともに」を大きなスローガンとする自衛隊がイベントなどへの支援や交流、協力を通じて、地域との間でどのように相互の信頼関係を築いているのか。そこには、人間模様が映し出されます。また、地域がどのように自衛隊を見つめているのか、などもとても重要なこと。さらには、その地域の特性、観光面、特産品などの「今」を紹介していくことで、「地域+自衛隊」の構図を少しでも浮き彫りにしたいという思いがあります。

 連日、駐屯地からは多くの報告が寄せられます。この2~3カ月は節目の創設、創隊記念行事が各地で繰り広げられました。皆、駐屯地を開放し、一般市民に少しでも多く足を運んでもらい、自衛隊への理解を求めていました。すべてそこにあるのは、「地域とともにある自衛隊」「地域の理解なくして自衛隊に活動は成し得ない」という、全自衛隊員の偽らざる熱い思いがあるからにほかなりません。こうした実情をできるだけ、新聞で反映し、紹介したいと考えています。

 初回は北海道のほぼ中央にある沼田町です。人口わずか3000人弱の小さな農業の町ですが、有名な「あんどん祭り」や地元の気候を生かした「雪中米」や加工用トマトなど、全国に発信できるものがいくつもあります。何よりも、自衛隊の誘致に向けた運動は大きな支えとなり、実現した経緯がありました。防衛日報では、自衛隊と地域とのコラボについてさまざまな角度から取材をした結果、今回の「沼田町夜高(ようたか)あんどん祭り」の存在があり、この著名なイベントに町からの依頼を受けた自衛隊が貢献している情報を得て、特集の1回目で紹介することにしました。

 今後も、地方自治体や地域の人たちとの連携の姿に焦点を当て、地域の情報もできるだけ多く織り込みながら、「地域とともにある自衛隊」の姿を掲載していきたいと思います。

他記事は防衛日報PDF版をご覧ください。

→防衛日報10月27日付PDF


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