今年度(3月まで)は、もうブルーインパルスは見納めかな‥と思っていましたが、空自ホームページなどに嬉しいお知らせが追加されました。3月5日(日)に愛知県小牧市の空自小牧基地で開催される「令和4年度 小牧基地オープンベース」でブルーインパルスが展示飛行を行うことに。当サイトに寄稿してくれているブルーインパルスファンネットさんが、小牧基地とブルーインパルスとの歴史や当日の見所、「オープンベース?航空祭とどう違うの?」といった疑問にも解説してくれました。開催日まであと約1カ月。首を長くして待ちましょう♪(編集部より)

 航空自衛隊よりブルーインパルスの小牧基地オープンベースへの参加が発表されました。令和4年度内での嬉しい追加公演ならぬ追加日程の発表です。
 小牧基地オープンベースもまた、他の航空祭と同様に3年ぶりの開催ということで、前回は2019年でした。久しぶりの小牧ですが、2020年の医療従事者等への感謝飛行で興味を持った、オリンピックで興味を持った、など新しいファンの方たちにとっては、どんなイベントなんだろう?航空祭とどう違うのだろう?という疑問もあると思いますので、これまでの小牧基地オープンベースを振り返って、その様子を探ってみたいと思います。

2009年にブルーインパルスが初参加

 まずトップに挙げた表紙の写真はお馴染みのブルーインパルス列線ですが、これはT-4ブルーインパルスが初めて小牧基地航空祭に展開した時の2009年10月10日(土)のものでした。1996年にT-4に機種更新して初の年間ツアーを始めてから実に13年も後のことでした。

画像: T-4ブルーインパルス(第11飛行隊)の第8代飛行隊長を務めた第1輸送航空隊司令兼小牧基地司令、渡部琢也空将補(写真出典・小牧基地HP)

T-4ブルーインパルス(第11飛行隊)の第8代飛行隊長を務めた第1輸送航空隊司令兼小牧基地司令、渡部琢也空将補(写真出典・小牧基地HP)

 今年3月はまだ2022年度内ですので、1996年から13年後の2009年のそのまた13年後といってもいいかもしれません。そして、その初展開だった2009年にブルーインパルスを率いていたのが現小牧基地司令の渡部琢也空将補でした。あの頃は小牧基地オープンベースではなく小牧基地航空祭という名称だったと思います。

画像: 2009年の小牧基地航空祭から岐阜基地へ向けて飛び立ったブルーインパルス(写真・今村義幸)

2009年の小牧基地航空祭から岐阜基地へ向けて飛び立ったブルーインパルス(写真・今村義幸)

 2009年の初展開時は展示飛行なしの地上展示のみ。小牧基地の会場からウォークダウンして乗り込み、離陸して、直線で15kmしか離れていないお隣の岐阜基地へと向かったのでした。翌日11日(日)は岐阜基地航空祭で、土曜日の小牧と日曜日の岐阜を梯子して回ったのを覚えています。この頃小牧基地航空祭と呼ばれていた本イベントは、後に3月開催になって小牧基地オープンベースという名前に変わったようです。

 小牧基地航空祭のちのオープンベースは、ブルーインパルスや戦闘機の展示飛行を中心とした航空祭と少し違い、自宅に友人を呼んで休日を過ごすようなオープンハウスにも似た、基地を一般開放してのんびり過ごしてもらうようなオープンベースでした。そこにはかなり通好みのグッズ店が並びレアなワッペンなどを競い合うように売っていたり、基地売店も開放されていたりして、日頃隊員たちが利用しているお土産品や本物のグッズ、他にも地元の物産品が買えることなど、お買い物が楽しみのイベントでした。それがブルーインパルスが参加するようになってから、展示飛行も充実した航空祭そのもののイベントになっていったのです。

2019年の小牧基地オープンベース

画像: 小牧基地オープンベース 2019年11月 ブルーインパルス展示飛行 全課目収録(出典・NAOYUKI-N STUDIO) youtu.be

小牧基地オープンベース 2019年11月 ブルーインパルス展示飛行 全課目収録(出典・NAOYUKI-N STUDIO)

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 前回2019年のブルーインパルスを振り返ってみましょう。
 2機ずつ3回の編隊離陸を終えたブルーインパルスは会場正面より「デルタダーティーローパス」で会場に向かってきます。途中より左旋回し会場右方向へと抜けて行きました。その後は右から左手へと航過飛行課目を実施した後、ハートを描く「ビッグハート」やデルタ隊形で360度旋回を見せる「デルタ360ターン」、左手から折り返し右への「フェニックスローパス」からこの時期にぴったりの「サクラ」といった編隊連携機動飛行を実施しました。
 この展示飛行の特徴は、曲技飛行(アクロバット飛行)ではなく編隊連携機動飛行であるということと、会場後方の空域を使わない変則的な飛び方をしているということです。地形や会場毎の事情により変則的な飛び方をすることはこれまでにもあり、後方を使わない曲技飛行の前例もありますので、今後小牧オープンベースでも何らかの曲技飛行が実施されることが期待されています。
 

国際平和協力や陸海空自衛隊統合運用を象徴する小牧基地

画像: 2019年11月9日の小牧基地オープンベースでは74式戦車も地上展示された。(写真提供・KK)

2019年11月9日の小牧基地オープンベースでは74式戦車も地上展示された。(写真提供・KK)

 小牧基地の代表的な部隊としてK/C−130HやKC-767といった空中給油・輸送機を運用する第1輸送航空隊があります。イラク復興支援航空隊としてイラクでの国際平和協力に出動したC-130Hが記憶に強く残っています。
 そうした国際平和協力における航空輸送任務やレッドフラグアラスカなどの国際合同演習で展開する際には、隊員は小牧基地の第5術科学校へ入校して英語教育を受けるようです。

画像: 海上自衛隊からは哨戒機P-1や救難機US-2も飛来し地上展示された。(写真提供・KK)

海上自衛隊からは哨戒機P-1や救難機US-2も飛来し地上展示された。(写真提供・KK)

 第5術科学校は主に陸海空自衛隊の航空管制やコンピュータ技術の教育を一貫して担っています。陸上自衛隊や海上自衛隊の装備品が集結して展示されるのも、そうした教育を通じての交流や、航空輸送任務を通じて従来から統合運用を地で行くような協力関係を構築してきたからではないでしょうか。

画像: 輸送機の定期便のターミナルでは展示飛行の時間が電光掲示板に表示された。2017年の小牧基地オープンベースより。(写真・今村義幸)

輸送機の定期便のターミナルでは展示飛行の時間が電光掲示板に表示された。2017年の小牧基地オープンベースより。(写真・今村義幸)

 第1輸送航空隊はC-130Hで空自基地間の定期輸送便も運行しています。入間基地航空祭で入間ターミナルを見かけた方も居られると思いますが、小牧ターミナルはオープンベースで中に入ることもでき、電光掲示板でブルーインパルスの展示飛行が案内されるオツな計らいも見られました。

展示飛行も充実の小牧基地オープンベース

画像: 小牧基地所属のKC-767と岐阜基地飛行開発実験団飛行隊からリモートで飛来したF-2による模擬空中給油展示。2018年の小牧基地オープンベースより。(写真・今村義幸)

小牧基地所属のKC-767と岐阜基地飛行開発実験団飛行隊からリモートで飛来したF-2による模擬空中給油展示。2018年の小牧基地オープンベースより。(写真・今村義幸)

 国際社会における自衛隊の貢献や役割が高まってきていることは皆さんも日々実感するところと思いますが、展示飛行の内容もそれに伴い充実してきています。
 戦闘機がグアムまでは無給油で展開できてもアラスカまでは空中給油なしに展開できない、といった場合に、空中給油輸送機KC-767が配備されるまでは米軍の空中給油機の支援を受けてアラスカまで展開していました。今日では KC-767が戦闘機と一緒に展開し自前で空中給油しながら海外展開することが当たり前となっています。 その他、KC-767は海外での大規模自然災害が発生した際の救援物資輸送やウクライナ難民への救援物資輸送でも活躍しており、国際社会における自衛隊の顔とも言える存在になりました。

 小牧基地には先に触れた第5術科学校や災害派遣における人命救助の最後の砦となる航空救難団の教育を担う救難教育隊なども配置されています。対領空侵犯措置を担う戦闘機の基地とも違う玄人受けするイベントが小牧基地オープンベースといえるかもしれません。

年度末でラスト展示となるブルーインパルスメンバーも

画像: 2019年3月2日の小牧オープンベースは飛行班長・越後英3空佐のラスト展示となった。(写真提供・TAMA)

2019年3月2日の小牧オープンベースは飛行班長・越後英3空佐のラスト展示となった。(写真提供・TAMA)

 小牧基地オープンベースのブルーインパルスは、これまでのところ曲技飛行ではなく編隊連携機動飛行が実施されてきました。背面飛行や宙返りといった曲技飛行課目は実施されません。しかしながらウォークダウン、ウォークバックを行うフルショーを実施します。フルショーとはその会場から離着陸する展示飛行で、搭乗からエンジンスタート、飛行後の降機まで、ミッション全体を見せてくれます。
 展示飛行前か終了後にはファンサービスとしてのサイン会も期待できるかもしれません。ファンサービスはオープンベースのメニューにはないブルーインパルスの自主的なファンとの交流機会です。イベント全体の時間割の中で実施が難しい場合もありますが、3月ということで離隊を控えているメンバーもおられます。あの紺の展示服を着るのは最後となるかもしれませんので、これまでの活躍にご声援を宜しくお願いします。

画像: 2019年3月2日にラスト展示となった越後英3空佐と背後には805号機。(写真・伊藤宜由)

2019年3月2日にラスト展示となった越後英3空佐と背後には805号機。(写真・伊藤宜由)

 2019年3月2日(2018年度)の小牧オープンベースは2代前の飛行班長・越後英3空佐のラスト展示でした。越後3空佐の背後に写る1番機は、先日リポートしましたあいち航空ミュージアムに常設展示された805号機です。ミュージアムの805号機には尾翼に1番機の「1」、キャノピーには「MAJ. ECHIGO  MAJ. UNNO」のデカールが貼られていました(MAJ.はMAJOR=3空佐の意味)。この日、前席は写真中央の越後3空佐、後席は飛行班長を引き継ぐ右隣の海野勝彦3空佐でした。805号機はこの日の状態で保存されていたのですね。
 小牧基地オープンベースの前日や当日午後からあいち航空ミュージアムに寄ってみるのもいいかもしれません。

 こうして小牧基地オープンベースを振り返ってみるだけでも幾重にも折り重なったブルーインパルスの歴史の一端を垣間見ることができます。個々のイベントやメンバーは一見点や細い繊維に見えるかもしれませんが、紐解いて全体をよく見てみるとブルーインパルスは幾重にも折り重なった強くて太い糸なのですね。

 筆者は元ブルーインパルス隊長のWATTさん(渡部琢也空将補のTACネーム)が基地司令の今年の小牧基地オープンベースに大変期待しております。小牧基地ホームページやツイッターでも随時情報が更新されていますので是非チェックして参加してみてください。

《特別協力》NAOYUKI-N STUDIOさん(映像)、KKさん(写真)、TAMAさん(写真)
《文と写真》ブルーインパルスファンネット 今村義幸/伊藤宜由


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