遅くなりましたが本年もよろしくお願いいたします。
手探りで始まった昨年の本格的ツアーは12月11日の宮古島で一旦シーズンオフを迎えました。これまでの展示記録を見ると、3月頃に小牧基地オープンベース、一般公開はありませんが航空学生卒業式や防衛大学校卒業式での実績があります。ですので今年度という区切りで考えるとまだツアーは完了していない可能性があり、あるのかないのか、あるとすれば発表がいつになるのか、気の抜けないシーズンオフを迎えました。
「飛行初め」で飛行訓練開始
年が明けて1月5日には「飛行初め(ひこうはじめ)」として飛行訓練が開始されました。飛行初めは「始め」ではなく「初め」と書くのは書道の書初めに準ずるような精神でしょうか。飛行初めが恒例のニュースになるようになったのは震災以降のような気がします。それ以前は1、2社は取材に来るけれども他に大きなニュースがあれば放送されないような補欠のニュースでした。ところが最近は各社こぞって、今年は10社近くもブルーインパルスの飛行初めを取り上げていました。しかも、以前は飛行はじめとか飛行始めとかバラバラに報じられていたものが、遂に全社「飛行初め」に統一されて、壁に並んだ書初めを見るがの如く、清々しい思いで一年がスタートできました。恐らくは空幕広報室が飛行初めの用語について周知徹底したのだと思いますが、これは画期的なことです。
アクロバット飛行を行っていないのにアクロバット飛行が実施されたかのようなニュースが多い中、用語使いには今年もこだわっていきたいと思います。なぜなら宮古島のように飛行場外でアクロバット飛行が実施されたとき、ふだんうやむやにアクロバット飛行という言葉を使っていれば、その画期的な出来事が伝わらないからです。
良いときばかりではありません。例えば、原発の飛行「禁止」空域を通過して、という表現が実際には、原発の飛行「自粛」空域を通過して、という事実である場合もあります。飛行禁止空域を通過したのと飛行自粛空域を通過したのでは意味も違いますし、第一印象から生ずる風評もずいぶんと違ってくると思います。ですので、特に報道各社には正しい用語を使ってほしいという意味も込めて、用語使いにはこだわっていきます。
さて飛行初めが行われたことは各社から報道されましたが、飛行初めの日がどんな日であるかは吉田信也元2空佐が解説してくれたものがありますので、是非こちらをご覧下さい。
『ブルーインパルスファンネット Facebook【説明しよう!】「2022年飛行初め!」』
シーズンオフは練成訓練の大詰め
ツアーがひと段落したこの時期、練成訓練はもっとも大事な時期を迎えます。新年度になれば1番機・編隊長の世代交代が待っています。3番機、5番機、6番機もTRが付いて練成中ですね。いずれか世代交代が済んでラストフライトの報が届くのもそろそろかもしれません。いずれにせよメンバーが一斉に交代することはありませんが、一人ずつ大事にORに昇格させていていくために、いま松島基地ではチームが一丸となって訓練に励んでいます。
練成訓練にも初期の段階から編隊での応用まで様々なステップを踏んでいきます。中でもチームにとって大きなマイルストーンとなるのはTRメンバーがはじめて飛行場上空訓練に入る時です。飛行訓練は毎回必ず6機揃って飛ぶものではなく、訓練課程に応じて少ない機数で飛ぶことが多いのですが、はじめての飛行場上空訓練に入るときは原則として6機で入ります。高度も高めに設定され、訓練が進むにつれ、徐々に本番と同じ高度に降ろしていきます。そして最後に検定を受けて合格すれば晴れてORパイロットになります。今年度は4番機・手島孝1空尉の練成訓練から展示飛行デビューまでがTV番組でドキュメントされたのは記憶に新しいところです。.
TRとは、ORとは
TR(Training Readiness/展示飛行資格を得るために練成訓練中であること)
OR(Operation Readiness/展示飛行資格を有すること)
航空自衛隊HPには以下のように記載されています。
「1年目はTR(訓練待機)として演技を修得します。展示飛行のときには、ナレーションを担当し、また後席に搭乗します。2年目はOR(任務待機)として展示飛行を行います」
TR編隊長とOR編隊長の違い
TRのメンバーが飛んでいたら是非盛大に手を振ってあげてくださいね。TRの中でも最も大変なのはやはり1番機でしょう。最終的に展示飛行の可否や構成を上空に上がってから天候等で判断して決めるのは編隊長ですから、経験がもっとも豊富といえども覚えることがたくさんあって大変です。
例えば、この課目は6機デルタ隊形で360旋回するデルタ360ターンですが、6機デルタ隊形では1番機はスモークを出しませんので、真後ろに4番機がいない訓練では、写真のような歯抜けのスモークになってしまいます。ところがこれがORの1番機になると、訓練であろうと本番であろうと何らかの理由で5機になった場合、スモークをONにして、5機傘型隊形でのデルタ360ターンを実施します。
こちらも別の角度から見たデルタ360ターンですが、1番機はスモークOFFでまだTRのようです。このように少ない機数での訓練が見られるのは、全体の訓練課程の構成によるものですが、シーズンオフには所定の機体定期修理・IRAN(Inspection and Repairing As Necessary)のために川崎重工に里帰りしている機体があり、機数が減っているため、こうした光景が多くみられる傾向にあるようです。
雪景色も綺麗ですね。シーズンオフの冬場には降雪後にはこんな雪景色のブルーインパルスを見られることもあります。これも松島基地ならではの航空祭では見られない光景です。松島基地HPでは翌週の飛行場上空訓練の予定を週末に更新しますので、是非シーズンオフの練成訓練を見に行く際はチェックしてみてください。
ブルーインパルス基地上空訓練|航空自衛隊について|防衛省 [JASDF] 航空自衛隊
航空自衛隊〔JASDF〕オフィシャルサイト:ニュース・航空機の紹介・イベント情報・採用情報
www.mod.go.jp また、松島基地のツイッターアカウントでは、当日の訓練の実施予定や変更情報をリアルタイムで告知してますので、こちらも要チェックです↓
(松島基地ツイッターアカウント @matsushimabase)
松島基地特有の冬場の北西風
こちらはRWY25の滑走路始点側から(東北東側から)撮ったデルタループです。右側が矢本駅のある北西方向なのですが、北西からの横風に流されないように踏ん張ってループしているブルーインパルスです。6機の密集隊形で同じ方向からの風とはいえあの強風で隊形を保ってループできるブルーインパルスは素人目にも、凄すぎる!と思いました。実際にあの風を体感したら皆さんもそう思うと思います。ですが航空祭で「今日は風がかなり強くて大変でしたね」なんて声を掛けると「いえいえ、松島の北西風に比べれば全然」なんて返ってくることもありました。
ただでさえ変わりやすい日本の空で飛んでいるブルーインパルスですが、冬場はより一層厳しい環境で訓練しているのですから、やはり最強と言わざるを得ません。
シーズンオフこそがチャンス。訓練は平日のみに実施されますが、是非時間を作って見に行ってみてください。
飛行場上空訓練を見るには
松島基地に行って飛行場訓練を見るにはいくつかの方法があります。
①松島基地の外柵(外周のこと)に行ってみる方法がまず第一に考えられます。最寄駅はJR仙石線の矢本駅です。ここからタクシーかレンタサイクルかでしょうか。ブルーインパルス格納庫横の土手近くには無料駐車場も用意されています。
②松島基地の見学コースに申し込む方法です。松島基地広報に電話して申し込みますが、既に2月の募集も終了しており倍率は高そうです。申込方法は以下の松島基地HPの基地見学の頁をご覧ください。
③旅行会社の松島基地を周るツアーに参加する方法です。旅行会社によっては基地見学を含めているコースもあります。
シーズンオフの一味違ったブルーインパルスを体験したら東松島市に移住したくなってしまうかもしれません。実際そういうファンの方もおられます。また、もし行かれましたら特に練成訓練中のTRメンバーに絶大な声援をお願い致します。
ブルーインパルスファンネット 今村義幸(文・写真)