令和4年4月10日(日)、圧巻の高田城址公園観桜会でブルーインパルスの2022ツアーがスタートしました。伝統ある観桜会とあって運営の徹底ぶりは目を見張るものがあり、その告知や注意喚起の内容と発信のタイミング、当日の臨時観覧会場の開場閉場の手際の良さ、速報の発信の的確さ、その全てにおいて素晴らしいという言葉では収まりきらない“強さ”があり、満開日に快晴下で展示飛行ができた奇跡は、主催者の気迫が引き寄せたものと感じました。背後には上杉謙信の居城であった春日山が控え、この強さは土地柄で、もしかしたら上杉謙信の軍隊はこんな風に強かったのではないかと畏敬の念を抱くばかりです。
平成27年(2015年)の同観桜会にも飛ぶはずだったブルーインパルスは、前日の事前訓練(予行)こそ実施したたものの当日本番は悪天候で中止。コロナ禍がなければもっと早まったかもしれない七年ぶりの展示飛行は、その間の様々な出来事を覆す、最高のミッションとなりました。
七年前と違う点は天候のみならず、前回が小松基地を母基地とするリモート展示であったのに対し、今回はブルーインパルスの本拠地松島基地からのリモート展示であったことが挙げられます。上越市に寄り近い小松基地でなく松島基地からのリモートであったことにはメリットもデメリットもあります。本稿ではその辺りを少し考えてみます。
松島基地リモートのメリットとデメリット
メリット
●ブルーインパルスの年間展開日数を消費せずに展示飛行ができる。
●C-1等輸送機のチャーター便が不要となる。整備小隊、地上メンバー、支援機材を展開先に運ぶためだが、輸送機自体も多忙でかなり前持った調整が必要。
デメリット
●展示会場と離れている場合、離発着する松島基地、途中経路、展示会場の天候が異なることがあり、どれかが悪天候であれば展示飛行ができない。
●リモート距離が長くなれば展示課目数が少なくなる。
小松と松島リモートの細部を比較してみますと、小松は松島よりも近く、また同じ日本海側にあるという点も異なります。日本海側と太平洋側で天候が異なることもままありますし、前回が日本海側でのリモートでも天候には勝てなかったことを考えると、今回は天候を引き込んだ勝負強さが何者にも勝ったと言えるかもしれません。
松島リモートでツアー開始の意味
展開日数の上限はその日数こそ非公開ですが、安全面や各要員の年間訓練日数などを考慮して設けられているものです。航空祭などにおけるアクロバット飛行の展示も原則として一日一回としており、多方面から来る要請に対し、安全面を考慮し詰め込み過ぎにならないよう上限があるのです。
その年間展開日数を消費しなかったということは、まだ隙間のある後半のスケジュールに展開しての展示飛行が加わる猶予があるということを意味します。秋の大型航空祭もコロナ禍の諸事情がクリアされ開催されれば、ブルーインパルスも展開する可能性があります。松島リモートを選んだことには何かそうした決意すら感じられるのです。
松島リモートでも十分にできるとの判断には、前回のデータが参考になったことや、加えてこの七年間の間に燃料がJET A-1に変わったことやエンジン改修が為されたことが、少なくともマイナスではなくプラス側に働いていることを示しています。速報などで報じられている通り、気温が上がった当日に1課目プラスされたことも、余裕を持って松島リモートの展示が実施できた証明です。
運営企画努力が際立った高田城址公園観桜会
当日はYouTubeでのライブ配信が行われるなど現地に来られないファンへの配慮もなされました。配信は飛行前のイントロのナレーションから始まり、ファンにとっては嬉しい当日の搭乗メンバー紹介もしっかりカバーされ「わかってるな」と感じさせるものでした。ブルーインパルスを呼んだからにはこの機会にもっと高田のことを知ってほしい。興味を持つきっかけになってほしい。そんな気持ちがひしひしと伝わってくる構成は細部に至るまで充実したもので、ブルーインパルスの展示飛行を誘致するイベントとして理想的な企画運営となったと思います。
次は旧北上川河口部復旧復興事業完成式
次回展示飛行は、今週末4月23日(土)の旧北上川河口部復旧復興事業完成式です。これは松島基地の管制圏内で飛びますので松島リモートとは呼びません。恒例の石巻川開き祭りと同じ旧北上川の河口を飛びます。日和山公園から見た河口の景色はあまりにも有名になってしまいましたが、ブルーインパルスも復興のお祝いと鎮魂の展示飛行を捧げてくれることでしょう。
ブルーインパルスファンネットでは、今後も2022ツアーのトピックを防衛日報デジタルで解説していきます。
文:ブルーインパルスファンネット管理人 今村義幸
写真:今村義幸、塚田圭一、伊藤宜由