お疲れ様です。
元消防士のよろずです。

熱海市で土石流が発生して大きな被害が出ました。
いまでも懸命な救助作業が行われています。
救助に当たっている方には本当に頭が下がります。

私にできることは土砂災害に巻き込まれない知識と巻き込まれたときの対応を書くことだと思い、防衛日報社さまの場をお借りして執筆致しました。

興味のある分野だけでよいので目を通して頂けると幸いです。

土砂災害とは?

画像: 土砂災害とは?

土砂災害とは近年日本で毎年約1000件ほど発生している土石流、がけ崩れ、地滑りの総称です。
熱海市で発生した災害は土石流に分類されます。
近年6月~7月にかけて日本各地で大豪雨の影響で発生件数が増えています。

土砂災害の特徴は災害が点で発生することです。
洪水は一度発生すればその川の流れに沿って被害が拡大していきます。
しかし、土砂災害はある場所で発生したら、近くの別な場所で発生するというように点々と発生することが特徴です。
また、洪水のように同じ場所で何度も起きるのではなく、ほとんどが今まで土砂災害が発生していないところで起きます。
教訓にしづらいという部分も厄介なところかもしれません。

土砂災害の発生しやすい場所

次はそれぞれの特徴と発生する前兆を紹介します。

土石流の特徴と前兆

画像: 広島市安佐南区の土砂災害 www.photo-ac.com

広島市安佐南区の土砂災害

www.photo-ac.com

土石流の特徴と発生する前兆を見ていきましょう。
土石流は水の流れに大量の土砂と巻き込まれた様々な残骸が猛スピードで滑り落ちる現象です。
長期の雨や集中豪雨が起点になります。

【土石流の特徴】

土石流の特徴はそのスピードです。
熱海市の土石流の動画を見た方はわかると思いますが土砂がものすごいスピードで迫ってきます。
土石流は時速20~40キロメートルと言われており普通に逃げていては追いつかれます。

また、土砂のほかにも立木や岩塊、家、電柱などを巻き込んでいき破壊力もすさまじいものです。

このバイクのスピードで突っ込んでくる土砂から逃げるためには土砂の流れに対して直角に逃げることです。
土砂の流れに沿って逃げてしまうといつか追いつかれます。
なので流れに対して直角に、できるだけ高い所へ逃げましょう!

屋内にいる場合は2階以上の場所に避難してください。
できることなら各種警報や注意報にアンテナを立てて前兆を察知して避難することが大切です。

【土石流の前兆】

土石流の前兆を感知したらすぐに安全な場所へ避難してください!!

・山鳴りがする
・腐った土の匂いがする
・急に川の水が濁った、流木が混ざり始めた
・雨が降り続いているのに川の水位が下がり始めた
・立木がさける音や石がぶつかりあう音が聞こえる

盛土などがされている場合は水抜き穴があります。
この水抜き穴から濁った水が出てきたら要注意です

がけ崩れの特徴と前兆

画像: 平成9年7月6日に石川県内浦町下浜(うちうらまちしたはま)地区で発生したがけ崩れでは、全壊1棟・半壊1棟の被害 奈良県 県土マネジメント部 砂防・災害対策課 www3.pref.nara.jp

平成9年7月6日に石川県内浦町下浜(うちうらまちしたはま)地区で発生したがけ崩れでは、全壊1棟・半壊1棟の被害

奈良県 県土マネジメント部 砂防・災害対策課
www3.pref.nara.jp

がけ崩れは斜面が突然崩れ落ちる現象です。
地震や大雨、集中豪雨が起因となって発生します。

【がけ崩れの特徴】

がけ崩れの特徴は突発性です。
前兆がわかりにくく避難が遅れます。
このため普段から斜面付近に住む方は、がけ崩れが発生しやすい場所に住んでいるか知っておくことが大切です。

【がけ崩れの前兆】

先ほども紹介した通り、がけ崩れの前兆はわかりにくいことが特徴です。
少しでも異変を感じたら避難しましょう。

・がけにひび割れができた
・小石がパラパラと落ちてくる
・がけから水が湧き出てきた
・湧水が濁る
・地鳴りがする

がけ崩れは自分の住む地域が土砂災害危険個所に当てはまるか確認しておくことが大切になります。

国土交通省ハザードマップポータルサイト

地滑りの特徴と前兆

画像: 地附山の大規模地すべり昭和60年7月、長野県 地すべりとその対策(国土交通省) www.mlit.go.jp

地附山の大規模地すべり昭和60年7月、長野県

地すべりとその対策(国土交通省)
www.mlit.go.jp

地滑りは土地の一部が地下水や重力の影響でゆっくりと斜面下方へ移動する現象です。
一度発生したら止めることは不可能になります。
大雨、集中豪雨が起因となって発生します。

【地滑りの特徴】

一度発生したら建物や畑、ライフラインが特に甚大な被害を受けます。
病院などの公共機関の損壊、電線の切断、上下水の破損、道路の切断、河川のせき止めによる洪水などです。
土石流やがけ崩れよりも復旧に時間がかかります。

【地滑りの前兆】

地滑りはより前兆がわかりにくくなります。
理由としてはその地域に住む地元民の特に農家の方がわかるか?というような細かい内容だからです。

・地面がひび割れたり陥没したりする
・がけや斜面から水が噴き出す
・井戸や沢の水が濁る
・樹木が傾く
・亀裂や段差が発生する

新潟県では地滑りモニター制度を導入し違和感をすぐに県庁の担当課へ通報する仕組みがあるそうです。

土砂災害に巻き込まれたら?

画像: 土砂災害に巻き込まれたら?

今から紹介する内容はこれを知っていればギリギリまで問題ない。
というものではありません!

前提として土砂災害に巻き込まれないためには注意報、警報をよく聞き避難することが大切です。
避難しないという選択をしたとしても、前兆を察知したら一目散に逃げましょう!
土石流は場合によっては洪水よりも破壊力があります。
家にこもっていても家ごと流されてしまう可能性が高いです。

万が一前兆を察知して逃げようとしたが逃げきれなかったという想定で書いていきます。

目の前に土砂が迫ってきてる!さあどうする?

画像: 目の前に土砂が迫ってきてる!さあどうする?

外の轟音から土石流が向かってきていると確認した場合は逃げる時間がないかもしれません。
逃げられると判断したならば土石流の流れに対して直角になる方向の出口や窓から速やかに逃げましょう!!

逃げられないと判断したならば速やかにその建物の最上階へ移動してください。
屋根は濡れていると大変すべりやすく危険です。
土石流の流れに対してなるべく離れた部屋に避難しましょう!
部屋の中でも机の上など少しでも高いところへ避難してください。

生き埋めになってしまった!でも生きている

画像: 生き埋めになってしまった!でも生きている

生き埋めになってしまったらまず落ち着くことが大切です。
呼吸を整えましょう。

次に体の部位のどこが埋まっているか?何かに挟まれてないかを確認します。
上下がわからない場合は唾を垂らして下に行く方向が地面になります。

土砂で身動きが取れない、もしくは挟まれて動けない場合は助けを呼ぶ必要があります。
通報ができない場合は物音を立てたり警笛を鳴らしたりして周りの救助者に自分の存在をアピールしましょう!
大声は体力の消耗につながるため最終手段にしてください。

脱出出来たら?

低体温症や脱水症状を起こしていいる可能性が高いため体温の確保と水分補給を心掛けてください。
また、他に土石流に巻き込まれた家族や友人などがいたら人数とどの辺りにいたかを話すようにしましょう。

巻き込まれた人を救う

巻き込まれた人を救うためには何よりも人数が必要です。
こういった規模の大きい災害の場合は頼りになるのが消防機関、警察、そして自衛隊です。
しかし、そういった方々がすぐに動けるかわかりません。
万が一のことを考えて訓練をされていない方々が限られた資機材で救うことを考えてみましょう!

【装備】

画像: 土砂水があふれているときの装備 土砂災害活動要領 追加項目(案)より

土砂水があふれているときの装備

土砂災害活動要領 追加項目(案)より

・ヘルメット
・ゴーグル
・マスク
・ライト、警笛、長靴
 (消防では標準装備)
・ケブラー手袋+厚手のゴム手袋
 ↓
 重ねると泥が付きにくくなる
・レインコート(状況に応じて)

・バール
(鉄パイプなどで代用可能)
・スコップ(大、小)
・毛布
・ブルーシート

〈ポイント〉
低体温症を防ぐ一つとして長靴の中に土砂や水が入らないように、長靴の上部を養生テープやガムテープを巻くと良い!
適度な水分補給や塩分補給をするための携行食があるとなおよし

【注意すること】

画像: 【注意すること】

①二次災害の防止
一番注意しなくてはいけないことは自分たちが被災しないことです。
再び土石流などの兆候を感じたら救助活動中でもその場を離れてください。
救う側の人間が巻き込まれれば他に救える人が居なくなってしまいます。
絶対に被災しないように注意を払ってください。

②感染症
土砂には数多の細菌やバクテリアが存在します。
ゴーグルやマスクをできれば着装してなるべく口や鼻、目から土砂を吸引しないように心がけてください。
これは土砂の片付け、復旧のときも同じです!

【救助までの流れ】

土砂災害が発生して救助活動に当たるという事は生き埋めになった方の位置は見当は付いているという前提で話していきます。
まったく見当がつかない状態で救助することはとても難しいことです。
この場合は自分の命を優先しましょう!

①通報、救助する仲間を集める

まずは消防機関に生き埋めになった事態を通報しましょう!!
このとき絶対に一人で救出しようとしてはいけません!
最低でも3人以上集めてください。

このときその場を離れる場合は棒を立てるなど目印になるものを置いておきましょう!!
場所が分からなくなれば絶望的な状況になりかねないからです。

②役割の振り分け

安全管理1名、作業員2名という形で振り分けます。
この安全管理とは土石流の前兆や建物が崩れないかを監視する人です。
危険だと判断した場合は作業員を安全なところまで向かうように声や警笛で合図をします!
また、休憩するという意味合いもあります。

救出作業というものはとても体力、精神力を使います。
どんなにやる気があっても心身が追い付かなければ効率の良い救助はできません。
特に土砂は長期化しやすい傾向があるため休息は必須です。
30分などの時間を決めて役割をローテーションしながら救出作業に当たってください。
絶対に無理はしない!!

③救出開始

【足場の確保】

画像: ベニヤ板で足場を確保する様子 土砂災害活動要領 追加項目(案)より

ベニヤ板で足場を確保する様子

土砂災害活動要領 追加項目(案)より

まずは足場の確保です。
土砂は体にまとわりつき身動きが取れなくなる可能性が出てきます。
畳やベニヤ板などを土砂の上に敷き足場を作りましょう!

【土砂の除去】

画像: 手で口元の土砂をよけていく

手で口元の土砂をよけていく

スコップなどを使って少しずつ土砂を掻き出していきます。
バケツなどがなければ棚の引き出しやプランターなどを利用して土砂を運び出していきましょう。

要救助者が見えている場合は体から少し離れた場所から掘っていきます。
近いところから掘ると、掘ったところから土砂が流れてきてしますからです。
また、体を傷つける可能性があります。

無理に引き出すのもよくありません。
体に土圧が掛かっており無理に引き抜こうとすると怪我をする可能性があります。

【重量物の除去】

画像: 自動車のジャッキを活用してもよい 負傷者の救出・救助 高等学校用 www.photo-ac.com

自動車のジャッキを活用してもよい

負傷者の救出・救助 高等学校用
www.photo-ac.com

重量物の除去はてこの原理を利用して、バールもしくは鉄パイプ、角材など使います。
危険を伴いますので安全管理を一名必ずつけましょう!!

重量物をてこの力で持ち上げたときに角材などを隙間に入れるとより安全に持ち上げることが出来ます。

【声かけ】
声を掛けて安心感を与えましょう!
また、他に埋まっている人はいないか?
埋まっていた場合は人数や場所を把握することも次の救助活動につながります。

【救出完了】
脱水症状などを防ぐために要救助者に水分を渡しましょう。
重量物に挟まれていた場合などは医療機関で一度見てもらうようにしてください。

まとめ

熱海市の土砂災害のような被害は今後も各地で起こります。
巻き込まれないためにはハザードマップにて土地の確認と被害が起こる前の早めの避難が大切です!
防災意識を高めていきましょう!

防災コミュニティ「学防 manabou」

【防災コラム】は、防災コミュニティ「学防manabou (防災・防犯学習コミュニティ)」の運営メンバーが週替わりで発信しています。

画像: 防災コミュニティ「学防 manabou」

防災コミュニティ「学防manabou」は、LINEオープンチャットにて無料で防災・防犯について話し合い、学び合えます。
 ・匿名で参加が可能です 
 ・毎週月曜日に防災・防犯のプロが記事を発信しています 
 ・またコミュニティですので随時質問があれば聞くことが可能です! 

防災について話そう!学ぼう!みんなの未来を守るために。

オープンチャット「学防 manabou(防災・防犯学習コミュニティ)」
無料のLINEコミュニティーの入会はこちら


This article is a sponsored article by
''.