中々コロナもおさまらずストレスのたまる毎日が続いてますね。結局今年度の航空祭もすべてが中止となり、残念なシーズンになってしまいましたが、これは私の後輩たち「航空学生」も例外ではありません。
例年であれば、各基地航空祭の地上の目玉として「ファンシー・ドリル」も展示を行っているところ、やはりすべてが中止となり残念ながら2年生である「第75期航空学生」たちのお披露目の場もなくなってしまいました。こうした展示でご両親やファンの皆様の前で、厳しい訓練で培った「ワザ」をお見せすることは、2年間という長い地上教育期間中でもモチベーションを維持できる格好の場でしたが・・・。
そこで「航空自衛隊チャンネル」がこのほど「第75期航空学生」の素晴らしいファンシー・ドリルの演技をYouTubeにアップしましたので、動画を見ていただくとともに、今回は少しこの「ファンシー・ドリル」について説明しましょう!
なお今回は直接ブルーインパルスの話題ではなくてすみません。しかしながら航空学生に入隊した彼らは「日本刀」に例えるなら現時点では原材料の「玉鋼(砂鉄など)」にすぎません。これからいやというほど叩かれ、鍛えられるのです。中には「刃(やいば)」とならず淘汰されるものも出てきます。そうやって磨きに磨かれ、研ぎ澄まされた「日本刀」こそが、国防を担う「戦闘操縦者」になり「ブルーインパルス」のメンバーにもなっていきます。どうかご理解のほど、よろしくお願いいたします。
すべて学生自身が考え、作り上げる
さて航空学生の「ファンシー・ドリル」は「第26期航空学生」から始まり、約50年近い歴史を持っています。これは自衛官の教練などの基本動作に応用動作を取り入れた集団演技で、ひとつの期に70名ほどの学生が約半分に分れ「ブラスバンド隊」と「ドリル隊」を形成します。
「ブラスバンド隊」の中には楽器を触ったこともない学生もおり、それこそ「ドレミ」から始まり、約3か月後には演奏できるように特訓します。
そして「ドリル隊」ですが、もちろん全員が初めてで、重さ4.3Kgの「64式小銃」を操作するところ・・・それ以前に通常の基本教練から始め、これも約3~4か月後には小銃を手足のように動かせるよう特訓します。いずれも「教官」はすべて1年先輩である「2年生」で、熱く厳しい指導(!?)をしてくれます。(笑)
そして肝心の「展示パターン」はこれもまたすべて学生自身が考え、作り上げるのです。これには「方眼紙」のひとマスを「1歩」と換算し、ひとマスごとに動き(歩数)を組合せて完成させます。このため使用する方眼紙が何百枚にもなることも・・・。さらにすべての動きを合わせるには各学生がこの「1歩」を正確に「75cm」(基本教練どおり)で歩くことが大前提なのです。
皆さんもお気づきだと思いますが、この頃からの基本動作の反復演練や集団で基準となる隊員に動きを合わせること、さらには方眼紙により緻密に計算された動きが、ブルーインパルスの展示に繋がっているのです。ブルーの編隊飛行は航空学生の頃の「小銃」が「操縦桿」となり、完成されたものと言ってもいいでしょうね!
さてさて、それでは私が長い説明をするよりも、まずは「第75期航空学生」たちの見事な演技を見てください。ちなみに彼らは高校を卒業してすぐの19~22歳くらいの若者たちです。私は「ドリル隊」でしたが後輩たちの展示を見ていると、当時のつらかったこと、嬉しかったこと、楽しかったことなどの思い出がまざまざと蘇り、今でも目頭が熱くなります(笑)。とにかく感動すること、請け合いです!!!
元第11飛行隊 "非行"班長 吉田信也
【吉田氏による前回の連載記事】