部隊数と人員規模で空自最大のマンモス基地の入間基地。その基地で2月5日、空自各基地で給食として隊員に提供されている「空上げ(からあげ)」のナンバーワンを決める初の頂上決戦となる「航空自衛隊調理競技会」が行われると聞き、行ってみた。(空自入間基地発・特派員=ボエマル)
会場の隊員食堂では、午前9時15分から行われる競技を前に、大勢の隊員が整列。緊張した空気の中、「幕僚長が入られます」との声で、一同が直立不動の姿勢をとる。まもなく会場入りした丸茂航空幕僚長が自席の前で会場を一度見渡し、「おはょーす」と一言放ち、着座した。隊員は全員で、大きな声を揃えて「おはようございます」と元気よく返礼してから着席。あいさつ一つだけでも、自衛隊員の明確な主従関係がビシバシと伝わってきた。
競技ルールは、いたってシンプル。基地代表の給養員10人が制限時間2時間以内に唐揚げを使った献立で20食を作り上げ、盛り付ける。「味」「独創性」「集団給食の適合性」「調理技術」「衛生管理」「安全管理」の6つの項目で、審査員14人の厳しいチェックをクリアしなければならない。出場した給養員10人のうち9人が野郎で、唯一の女性は長沼分屯基地(北海道)所属の高玉亜弥架3空曹。競技中は密かに、ずーっと応援していたことを告白しときます。
給食は、おいしいのは当たり前。それと同時にコストをはじめ、材料の裁断の均一性、髪の毛や糸くずなどの異物が混入しないかなど、多岐にわたって審査員の鋭い目で監視される。でも大丈夫、給養員10人は、全国9カ所の地方競技会を勝ち抜いた猛者。至近距離を審査員が歩き回り、あれこれメモし、どんな厳しいまなざしを浴びせられようとも、別に気にするでもなく動じず、調理人としての誇りと部隊の名誉を賭けて戦い抜いた。
会場では、取材エリアが制限され、競技中の給養員10人のそばに取材者は近寄れない。最も近づけて5㍍くらい。離れていても各競技者が油で揚げる「ジュ~」という音と空上げの香ばしい匂いが届き、おいしそうな香りに思わずお腹が鳴った。早く食べたい。取材エリアの後方では、競技者の所属部隊の仲間が横断幕を掲げて声援を送っていた。ここは自衛隊。競技である以上、やはり勝たねばならない。応援する側に熱が入るのも当然だ。
午前11時15分、競技終了。美しく盛り付けられた10種の空上げが会場中央のテーブルに並べられた。「試食していい」との許可があり、10種の空上げを1つずつ頬張ってみた。「う~ん…、じゅうしぃ~」。どれもとても旨かったから、素人には甲乙つけられず。別ブースでは審査員一同の「もぐもぐタイム」。評価をノートに書きながら実食していた。
審査の結果、競技会会長の丸茂航空幕僚長から贈られる「航空幕僚長特別賞」に、35警戒隊(京都府)所属の千原誠児2空曹の「七味鶏」が選ばれ、初代頂点に輝いた。七味鶏は下味を付けた鶏肉を卵黄でコーティングした後に衣で包み、隠し味に「沖縄そばだし」を使用。七味の風味とサクッと揚がった食感が絶妙で、高い評価を得たようだ。紅一点の高玉3空曹も大健闘、お疲れさまでした。
丸茂航空幕僚長は「各部隊の意気込みを感じた。部隊の活力の源に給食がある。これからも部隊を支えていってほしい」と大会を総括。千原2曹は「空上げを柔らかくするため、できるだけ水分を多く含ませた。だし風味を効かせ、また食べたくなることを意識した。空自全体で空上げ作りがさらに盛り上がっていけばうれしい」と話した。これから「空上げ」が空自名物となること、間違いなし。
【金賞】 | 「航空幕僚長特別賞」 経ヶ岬分屯基地・千原誠児2空曹 「七味鶏」 |
---|---|
【金賞】 | 「ホテルグランドヒル市ヶ谷洋食総料理長特別賞」 美保基地・武井忠信空士長 「美保サルサ空上げ」 |
【銀賞】 | 「隊員審査員特別賞」 長沼分屯基地・高玉亜弥架3空曹 「ジンギスカン風味空上げ」 |
【銀賞】 | 秋田分屯基地・佐々木謙吾3空曹 「NO.2029」 |
【銀賞】 | 見島分屯基地・坂下慶誌空士長 「見島みそ空上げ夏みかんソースがけ」 |
【銀賞】 | 東北町分屯基地・保浦文哉3空曹 「長芋ハーブ空上げ」 |
【銀賞】 | 静浜基地・小林智弘2空曹 「空上げ三種盛〈桜えび・かつお・椎茸風味〉」 |
【銀賞】 | 恩納分屯基地・池原盛明技官 「うちなー空上げ~すばだしを添えて~」 |
【銀賞】 | 目黒基地・山根直樹3空曹 「東京三昧2020」 |
【銀賞】 | 入間基地・桝田優一2空曹 「狭山茶空上げ」 |