連日の雷発生率に異常さを感じる今年の夏の天気。皆さんは、頭上で雷が鳴ったらまず何を思うだろうか?高い木のそばは避ける、建物の中に避難する、などまず最初に落雷直撃を考えるだろう。しかし、落雷直撃の被害は、雷がもたらす被害全体に対し、たったの1%程度とされている。では、雷の本当の恐ろしさとはいったい何なのか、知れば「防ぐ」ことも可能になる。
「夕立」から「ゲリラ豪雨」に
天気予報で日本列島が真っ赤に染まり酷暑が続く日々。連日のようにゲリラ豪雨が報道され、各地で異常な降雨量を目にする事が多いのではないだろうか?
昔から「夏」をイメージしたイラストには青空に入道雲、そして大きな向日葵の花が施される事が多い。
しかし、近年の夏はこんな穏やかなものではない。日中は災害級の暑さで「熱中症警戒アラート」が発令され、午後から夜にかけて局地的豪雨が起こり、洪水や土砂災害被害といった大きな被害をもたらす事もある。
私が子どもの頃は今のゲリラ豪雨と同じような気象状況を「夕立」と呼んでいて、夏の風物詩のひとつでもあり、日中乾いた土や草木を潤して気温を下げる、時には気持ち良くさえ感じるものであった。
しかし今は、「夕立」という言葉は耳にせず「ゲリラ豪雨(雷雨)」という言葉に変わってしまった。この2つのメカニズムは同じで、地上の温度と上空の温度差により、大気が不安定になる事から起こる現象である。
急な豪雨による冠水被害は、連日ニュースで報道されている。
特に夏は地上や海上の温度が上がる。温かい空気は軽く、日中温められた空気は上へとあがっていく(上昇気流)ため、背の高い雲(積乱雲など)が発生し、水分と結合する。そして、重くなって落ちてくるのが雨や雹である。午後に風が強くかんじるのも、上昇気流が巻き起こす現象である。
世界的にみても高い日本の落雷死亡率
そしてそれらに伴い増えているのが「雷」である。発雷確率も年々増加傾向にあり、世界的には被害推計で過去10年間と比較して 160%、日本の落雷被害平均は年間約20件、うち約7割の被害者が命を落としていて、日本の落雷死亡率は世界的に見てもかなり高い。
雷は光と音で「怖い」という認識はあるものの、実際に私たちが受ける被害についてはあまり知られていないため、対策も避雷針以外知る者は少ないのではないか?
雷が一番多いのは7月と8月の夏の時期で、前記のような積乱雲などが発生した際、内部にある氷の粒同士のこすれで静電気が発生、そこで帯電した電気の偏りが起こり、地上に放電されることによって落雷が起こる。
感電だけではない雷による死亡理由
実は落雷直撃の被害はたった1%程度で、残り99%は「雷サージ」によるものだ。雷サージとは、落雷によって瞬間的に発生する過剰な電流と電圧のことで、雷が発生すると家電などが壊れるケースは、この過剰な電流と電圧がケーブルや電線を伝うことで起こるが、それは物だけでなく、人にも感電する。
雷は瞬間最大電流100~500kAの巨大な電気を流し、雷サージは半径2キロと広域にわたって広がる。雷サージには、ダイレクトに当たる「直撃雷」と電線や地面などを通して間接的な被害が発生する「誘導雷」、一旦地面などに流れても消化出来ずに戻って被害を受ける「逆流雷」と3種類あり、よく聞く避雷針で防げるのは直撃雷のみで、誘導雷・逆流雷は防げない。この誘導雷・逆流雷は通信機器や電化製品に影響を及ぼすだけでなく、火災まで引き起こす危険性がある。
雷は皆さんがイメージする停電や感電だけでなく、過電流により発火して火災を起こし、その火災によって命が奪われるのである。感電死だけが雷の恐ろしさではないということを伝えたい。
防げる被害
「雷対策」に対し明確な安全基準や工業規格、検証研究、法規制が存在しない日本は、対策が欧米諸国と比べ30年は遅れていると言われ、国内に流通する対策製品は、海外では「違法」とされるものが殆どであるのはご存じだろうか?そう、海外では「落雷被害は防げるもの」なのである。
中でも自然雷の直撃を抑制する規格(UL1449)認証を受けている SPD(避雷器)は、近年国防上の観点から世界的に注目されている電磁パルス(EMP)にも有効で、先進国では全ての建物に取り付けることが法律で義務化されているところも多いが、日本はまだ義務付けられていないだけでなく、国内導入率は1%にも満たないと言われ、海外に比べてかなりの遅れをとっている。
電磁パルスは大規模な太陽フレアにより発生するだけでなく、電磁パルス爆弾や、 上空30km~400km の高高度での核爆発による発生が現実的な脅威となっており、人体に直接の影響はなくとも、電子機器を損傷・破壊、通信や電力、ガス、上下水道、交通などのインフラに障害を生じさせるため、もし被害や攻撃を受けた場合は壊滅的な打撃を受け、復旧までに数か月~数年かかるともいわれている。
将来の自分を助ける「備えあれば憂いなし」
以前より申し上げている通り、日本は自然災害だけでなくCBRNE災害(人災)も加えたら世界トップの災害大国であるにもかかわらず、対策はワーストクラスの後進国だというのはこの雷の事例だけでも証明しているのだが、国際情勢が悪化している今、オールハザードに向けた対策にいい加減本腰を入れるべきではないか?
そして、私たちひとりひとりも「平和な日々」「幸せな毎日」を送るためにも、避けられない有事(自然・人為的災害の両面)に自らできる範囲で備える必要がある。
便利になりすぎ、そして人任せに頼る今の私たちの生活だが、その生活が奪われる確率は年々増えているのだから。
「転ばぬ先の杖」「備えあれば憂いなし」という先人の言葉は、皆さんの命を守る言葉でもあるかもしれない。
SPDについては防衛日報「日本を護る」vol.4でミリオンズの小山さんが伝えています。
「Re防災project」発足
時代の変化と共に災害対策をアップデートし続ける災害対策の日常化、「災害対策のシートベルト化」を実現させるためには、『強い地域づくり』が必要である。それには産官学民連携での意識改革と継続的な取組みが必須で、このどこが欠けても強い地域づくりは出来ず、災害弱者は増え続ける一方である。「産官学」が連携し「学民」の強化に繋げ、それが本当の意味での「国土強靭化」となる。
アスプラウト株式会社代表取締役である喜多村建代さんは、これらの取組みを「Re防災project」とし、2024.3.15より社団法人を立ち上げた。
プロフィール
喜多村 建代
アスプラウト株式会社 代表取締役
一般社団法人Re防災project 代表理事
一般社団法人住環境創造研究所 企画広報部長
日本防災スキーム株式会社 パートナー
15年間専業主婦の経験から、主婦目線、母親目線、民間目線と、プロ目線だけでは見落としがちな部分に焦点を置き、同じ志を持つそれぞれのプロフェッショナルとタッグ組んで、あらゆる対策に対しての柔軟で的確なサポートを行う。
感震ブレーカー開発者との出会いから災害対策に関わる事業に加わり、その後会社設立。
震災時火災、停電対策、防災教育などを中心に活動を拡げる。
「防災~明日を考える~」は、日頃からの防災意識を高めてもらい、いざという時のための役立つ情報発信の場として立ち上げた防災コンテンツです。
防災には、「自助・共助・公助」があり、みなさんも耳にしたことがあると思います。自助は自分自身、共助は地域で、公助は国(公的機関)が行うものです。防衛日報社では特に“自助”に焦点をあて、防災アイテムや防災に携わる企業を紹介するとともに、実際に防災に取り組まれている個人、団体のみなさまのご意見をコラムとして配信していきます。バックナンバーは下記からご覧ください。