自衛官の大半が若年定年制で50歳代半ば、任期制自衛官の多くが20~30歳代半ばで退職します。 防衛日報デジタルでは「募集と援護」を「入口と出口」と称し、地本・部隊の日々の活動を伝えてまいりました。
「出口」、つまり退職後の援護業務に着目し、防衛日報社としても自衛官の再就職を「援護」していきたいと考え、石塚氏とともに『援護を援護する』という企画を立ちあげました。みなさまに少しでも「援護」を知っていただけたら幸いです。
「援護を援護する」を読まれる方へ
未来のために、今日できることがあります。実は人間が持って生まれた才能や能力なんてそれほど大きな違いはありません。
違うのは日常の小さな気づきと自分の意識です。言い方を変えますと、小さな気づきと自分の意識が集まってできたもの、それがあなた自身です。
気づきの多い人は生まれもっての才能を逆転します。自分の意識が変わればばそれほど苦労は感じません。良い習慣を身につけることができます。だから無意識にしている行動や考え方にちょっと気をつけてみましょう。今日からあなたの運命が180度変わるはずです。
私は株式会社求人という会社で人材採用という出会いを創造する仕事をしています。
みなさまの「これから」に少しでもお役に立てればこれ以上の喜びはありません。
株式会社求人
代表取締役 石塚 毅
第1回 人生時計を見てみよう
自衛隊員のみなさまの定年は55歳*です。
55歳ってどう捉えたらいいのか?そんな時は「人生時計」を見てください。
ご自分の年齢を3で割るのです。
55÷3=18.3333
それを24時間表記で表すと、18時18分過ぎ、ですよね。例えば、52歳なら人生時計は17時18分です。54歳なら人生時計は18時ちょうど。
人生の18時18分をどうとらえるか?ここが一番大事なんです。もうこれで1日をおしまいにするにはあまりにも早過ぎますよね。18時からもうちょっと楽しい時間を過ごしたい。でも朝とも午前とも午後とも違う時間ですよね。
ポイントは自分にとっての「青い鳥」を早く見つけることです。チルチルミチルの「青い鳥」の童話を覚えていますか?青い鳥を探して探して・・・そして実は自宅に青い鳥はいた、というストーリー。人生時計18時以降で楽しい時間を過ごすための1番大事なことって「自分の中にいる青い鳥」を早く見つけること、です。では、どうやって見つけるのか?
*階級により定年年齢は異なります
第2回 自分の中に青い鳥をみつけよう
仮に人生時計80歳で眠りにつくとしてその時刻は人生時計26.6時。
つまり真夜中の2時39分過ぎです。いまの時代、80歳ってもう普通ですよね。
こんな夜ふかしの時代=長寿の時代夕方6時過ぎってかなり時間があるのだ、ということがわかります。じゃあ残り時間で何をするのか?ポイントは自分にとっての「青い鳥」を早く見つけること、に尽きるんです。
「自分の中にいる青い鳥」とは次の3つに当てはまることです。
「自分に経験があること」「自分が好きで得意なこと」「自分が他者から必要とされること」
人生のネクストステージを考える場合ずこの3つが当てはまることって自分は具体的に何かな?を明確にすることから始まります。言い換えますと再就職ってこの3つが明確になっていれば、必ず決まります。成功します。単なるスキル・資格・技術だけで考えては青い鳥は見つからないのです。意外に思われるかもしれませんが、経験とスキルだけでマッチングすると再就職後の満足度が上がりません。自分に問いかけてみてください。
「その仕事って自分に経験があることかな?」
「その仕事って自分が好きで得意なことかな?」
「その仕事って自分が他者から必要とされることかな?」
さてご自分の答えは何でしたか?
第3回 家族や職域の人とは違う人と会話をしてみよう
自分のことを自分で考えるというのは、実はとても難しいことなのです。自分の頭で考えるだけではおそらく見つけることはできません。こういうときに求められるのは、他者との会話です。ご自分のネクストステージを考え始めるとき、まず他者と話す機会をつくってください。他者との会話の中でしか、ご自身の強みや役割期待は見つけられません。ではどんな人と会話したら良いのか。意外に思われるかもしれませんが、家族・職域の方と話すことはおすすめしません。
できれば労働市場で需要と供給、つまりどんな業界のどんな会社がどんな仕事・どんな役割期待をしているか、そしてそのかたちとしての求人をよくわかっているキャリアコンサルタント、相談員と呼ばれる方とお話することをまずおすすめします。
キャリアコンサルタント、相談員の方は「あなたの青い鳥はここにいますよ」と見つけるプロです。表面的なキーワードではなくあなたの可能性を引き出すのが仕事です。またあなたとは面識がないはずです。だから先入観や偏見を持たずにフラットに接することができます。しがらみもないからお世辞もいいません。キャリアコンサルタントの方とできれば1度だけでなく2度くらいお話されてみてはどうでしょうか?では何を話せばいいのだろうか。
第4回 自分の自慢の仕事を話してみよう
キャリアコンサルタントの方と話せといってもじゃあ、何を話せばいいのだろうか。と思われる方も多いかもしれませんよね。ぜひこれまでの自分の「自慢の仕事」を話してみてください。「自慢の仕事」です。謙遜や遠慮は要りません。恥ずかしい、なんてあなたの人生に失礼です。
思い起こせば、「あの仕事は本当によく頑張った」「本当にしんどい仕事だったけれど、自分なりにこういうふうな努力をして、こんなことに汗をかいて、成し遂げたんだやり切ったんだ」それがあなたの自慢の仕事です。これまでの自衛隊人生の中で、これだけは聞いてほしいという自慢の仕事があるはずです。うまく話そう、なんて考えなくていいのです。うまく話すより一生懸命話してみてください。
本当に優秀なキャリアコンサルタントならあなたの自慢の仕事からあなたのこれからの可能性、労働市場の需給を考えた上での会社や仕事とのマッチングを考え始めているはずです。あなたの自慢の仕事はなんでしたか?ぜひ教えてください。
第5回 自分の意外な強みを発見しよう
自分の自慢の仕事を話せといっても「話せるような自慢の仕事なんかないよ」という方も多いかもしれませんよね。自分の強みってほとんどの場合、実は意外なところにあるものです。言い換えれば、企業の社長が評価するところはまったく別のところにあることが多いと考えてください。
意外に思われるかもしれませんが再就職をする人材に求められるのは「雑用力」です。私は「雑用の先には必ずいいことがありますよ」と言っています。普通、民間企業の社員で雑用を率先して行う人はいません。もしあなたが率先して雑用を行える人だということが社長さんに伝わったとしたらすぐに高評価されるでしょう。おそらく社長はこう考えるのです。「他の社員は雑用なんかしない。でもこういうタイプの社員が1人加わってくれたら次第に他の社員もそういった雑用を進んでやるようになるだろうな。これは大きいな」これは他の社員にとっても驚きです。率先して雑用をやる社員など普通はいません。
しかし組織とは不思議なもので、それをやり始める人がいると他の社員もやるようになるものです。ここで重要なのは人が右と言ったら、「何があっても右をやる」ことができる人材だということ。逆らわず、文句も言わず、ひたすらにやる。不思議なことに実は、これは誰もやりません。ほとんどの人は必ず反抗します。「なぜ私がそんなことをしなければならないのですか!」と。雑用のように人が最もやりたくないと思うことを頼んでくるということは、相手はこの人は頼んだことは必ずやってくれると考えているということなのです。
逆に、人は断りそうな人には頼まない。頼みごとをされたらそれだけ信頼される、と考えるべきなのです。みなさんはそういう訓練や教育を圧倒的に受けて来られました。つまり再就職先の社長から高く評価される可能性が極めて高い「自慢の仕事」を、たくさんお持ちである、ということなのです。だから雑用の先に必ずいいことがある。ここをわかっていないから人間関係がうまく築けないことが多いのです。自分の評価は他者が決める、のです。あなたには自分では気づいていない高い能力や経験がたくさんあるはずなのです。
第6回 ものごとを頼みたくなる人になろう
再就職で成功される人の共通点をさらにお話させてください。成功される人はものごとを頼みたくなる人、です。あなたの周りにみんなからお願いごとをされる人はいませんか。悩みや問題があるときに何とかしてくれる人ですね。
みなさんそれぞれに強みや特技を持っていて、自分にはこんなことができると思っているでしょうが、それは結果を見てわかることで初めからはわかりません。言い換えると、どんな強みを持っている人でもチャンスをもらわないことには、できることを証明するのは不可能です。だからこそ、ものごとを頼みたくなる人になることは、結果を出すためのチャンスをつかみやすくなるというわけです。では、ものごとを頼みやすい人はどんな人でしょうか。他社評価で表現すると、
・頼んでもイヤな顔をされなさそうだ
・一度仕事を頼んで、着実にこなしてくれた
・普段から笑顔で穏やかな人だ
また、できないことは正直にできませんと言ってくれることも重要です。納期的に難しい時には「申し訳ありません。少しお時間を頂きそうです。お急ぎでしょうか?」と相手に確認することができる人はかえって信頼度がアップしますよね。実力のある人のところに必ずチャンスがやってくるとは限りません。チャンスをつかむためにはものごとをいろいろと頼まれていくうちに「仕事ができる」「さすが違うな」いう高評価を得ることで、見事に花開く、ということが実に多いのです。
第7回 基準があいまいなものにこそチャンスがあると考えよう
ただただと日々を過ごしているだけでは、自分の強みを発揮することやそれを他人に見つけてもらうことは難しいです。やはり新しいことにチャレンジしなければなりません。そのときに世の中的に脚光を浴びているキャリアや資格や肩書など(プログラミング・社会人大学・大学院・中小企業診断士など)で明確にランキングがつけられてしまうものにチャレンジするのはあまり意味がないと思います。例えば、いくらAIやChatGPTがもてはやされていたり、学び直しだ、リスキリングだ、といっても新たにプログラミングやシステムの勉強を始めるのは、よほど才能がない限り他人と比較して武器になることは残念ながらありえないからです。
しかしその一方で、基準が曖昧なジャンルならどうでしょうか?レストランを例に考えてみましょう。店の格付けを決める基準の1つに、ミシュランの星というものがあります。一つ星でも十分すごいし、三つ星ともなれば世界でも屈指の名店だと誰もが思います。でも、よくよく考えてください。三つ星をもらうということは、たしかに素晴らしいけれど、グルメと呼ばれる人がこれだけいる中で一握りの調査員が決める「星」という判断基準は実は極めてあいまいなものではないでしょうか?
実際、お客様の立場からすると、三つ星より二つ星のレストランの方がおいしいと感じることもあるだろうし、星がついているレストランより、サイゼリヤや吉野家の方が絶対にうまいと思う人もいるはずです。シェフだってみんながみんな最初から星を目指しているわけではないです。他の店にはない味を生み出した結果、星がつけられて、改めて自分の店の価値に気づかされるわけです。
極論、たとえ素人が店を出しても、星がつけばたちまち人気店となるでしょう。基準があいまいなものには実はチャンスが隠されています。再就職・人生のネクストステージを考えるとき、自分が持っている強みがちょっとあいまいだったとしても、それはむしろチャンスだ、と考えればなんだかやれそうな気がしませんか?
第8回 組織の成長が速くなるキーパーソンになろう
再就職する、ということは経験を何年も積んでいる人材、ということになります。人生経験、職業経験が長くなるときまってあるキーワードが口について出るようになります。それが、
「背中を見て学べ」
「上司の背中から学んだものだ」
というものです。これで通用した時代は幸せな時代でした。言い換えれば時代のスピードが遅かった時代なのです。「私の時代は」という表現は、ハッキリと申し上げますが、時代遅れです。スピードもテンポもリズムも違いすぎます。昔は確かに上司や先輩の背中を見て育ちました。でも、そんな悠長なことをやっていられないのが今の時代です。環境やお客様の進化の方がはるかに速いのです。人に何かものを教えるときに背中で教えていたのでは遅いのです。
嫌われても、言うべきところは言う。叱るべきところは、しっかり言わなければいけない。時にはきついことを言わねばならないのです。ひょっとしたら、言われた方は泣いてしまうことがあっても、絶対に言わなければいけないことは言わないと取り返しがつきません。
安全・コンプラなどなどは待ったなし!ですよね。つまり背中で教えるのんびりした時代ではもうないということです。再就職は常に現実論で生きるのです。
僕の若い頃は、新入社員の頃は、20代の頃は、という言い方は今の時代に合ってません。不思議なことに現場の管理職・リーダーがこれを言い始めるとなぜか入社3年目の社員あたりが「僕らの新入社員のときは」と言い始めるのです。こんな組織は一気に下り坂です。時代から取り残されて、時計が止まっているような組織になるでしょう。背中で教えるものだという言葉にもう惑わされる必要はありません。あなたはきっと組織の成長を、まわりのいろんな人の成長を加速させるキーパーソンになれるはずです。
第9回 聖域をつくらない人になろう
「聖域」ということばがあります。会社の中にはよく聖域があります。聖域とは社長や責任者でも入れない場所のことです。聖域がある会社や組織はダメです。社長や責任者が入ってはいけない場所なんてありえません。ところが、こんなところに自分が行ったら、現場の空気が悪くなるからと社長や責任者は気をつかってしまうのです。まちがった気づかいをし始めると聖域ができてしまいます。聖域になったところは孤立化します。
運輸会社を例にしましょうか。運輸会社には運行管理者でも入っていけない場所があります。バスやトラックの運転席です。バスやトラックの運転席は聖域化しやすいのです。運輸会社でダメになるところは、社長や運行管理責任者は、ドライバーが普段運転しているところに入れてもらえません。
大昔の国鉄もそうでした。運転手が組合をつくって大暴れした時代がありました。技術職のところは聖域化しやすいのです。汚れますから来ないでくださいとなっていくと、そこへは入れない空気が出来上がります。その聖域は必ず大きくなります。これが聖域の特徴です。
社長や責任者が入れないところは、やがて下の人間も入れない場所になります。誰も口を出さない部署が必ず会社・組織の中で生まれます。
再就職先ではあなたは新人です。新人の特権はものごとをすべて新鮮に自然に見ることができること。どうぞ全ての聖域を叩き潰してください。まっすぐな目で質問したらいいのです。「なぜ僕は入れないのですか?」と。聖域という言葉を使うことがタテ割りを生むのです。部署外の人間が口出さないで全てのところが聖域になります。
少人数の会社・組織でも聖域はできます。両者がコミュニケーションを取らないのです。お客様1人に対して、あらゆる部署がコミュニケーションを取り、協働してサービスしなければいけないのに、その風通しが一切なくなってしまっているのは、聖域が生まれてしまったからです。あなたが再就職した職場では、ぜひ入れない場所をなくしてください。そんなあなたを社長や責任者、他の社員はまったく違うまなざしで見るようになるでしょう。
第10回 右腕、ナンバー2大事にする人になろう
再就職先ではあなたは組織のトップの右腕的存在、ナンバー2がだれなのか、すぐに気がつくと思います。ぜひ再就職先ではこのトップの右腕、ナンバー2の方を大事にしてください。ちょっと上から的な表現ですが、ナンバー2を育てられる人はみんながついていきたくなる人です。
これが実は難しいのです。ナンバー 2という存在は組織にとって必要なので、必ず生まれます。ナンバー2と仲が悪い人は、みんなから認めてもらえません。トップとナンバー2は仲が悪いこともあります。それぞれの派閥に分かれていたりします。
トップは自分がいつナンバー2に取って代わられるか、心配していたりするケースもあります。これは大きな組織だけの話ではありません。10人以下の小規模企業でだって起こります。40代50代だけで起こる問題ではなく、20代ばかりの会社でも同じことが起こります。
信頼を集める人は上の悪口を言いません。そしてナンバー2を一生懸命盛り立てています。ナンバー2の人を意識的に応援しなければなりません。再就職したあなたから見て、ひょっとしたら「彼はまだこういうことができないな。」「あんなやつの言うことを聞いていてはダメだ。」と思うかもしれません。でもナンバー2を叩き潰しにかかる人はみんなが信頼しません。ナンバー2を自分のライバルだなんて思っちゃダメなのです。ナンバー2はライバルではなく自分の分身、と考えてください。だからナンバー2を育てよう、くらいの気持ちが欲しいのです。再就職先のナンバー2を大切にしてください。これができる人は必ずだれもが認めるリーダーになれます。
第11回 リスクを取って変化を創り出せる人になろう
何かをやるときには常にリスクがつきまといます。リスクがあるからリターンがあります。リスクがなくリターンだけがあることなんてありません。
ところが実際には何かトラブルがあると、誰が責任取るの?誰が悪いの?という話になります。僕は聞いてないよというのは、逃げです。聞いていない、というのは聞いていなかった人の責任なんです。
リスクには「やるリスク」と「やらないリスク」の2つがあります。ついついやるリスクばかり考えがちです。それで万が一失敗したり、損が出たり、お客様からクレームが来たらどうしよう、となります。やらないリスクは、万が一これをやらなかったときに、大きなチャンスを逃したり、お客様になってもらえたのに、そうならなかった、ということです。
みんなから尊敬を集められる人は、やるリスクを取れる人です。やらないリスクを選ぶよりは、やるリスクを選ぶ人が尊敬されます。でもふつうはやるリスクよりもやらないリスクを選びます。なぜなら、その方が目立ちにくいからです。やるリスクは目に見えて大きいので、自分が責任を取らなければなりません。やらないリスクを取る人ばかりですとその組織は「やらないもの勝ち」の組織になってしまいます。
時代も環境もどんどん変化する中で、そういう組織や会社は時代からもお客様からも取り残されます。変化することができないからです。ぜひ変化をリードするする人になってください。やるリスクを取れない人は変化を作り出すことができません。
会社は今を継続させようとするので放っておいたらどんどん同じやり方で固まっていきます。今まで通りのやり方と新しいやり方との2つがあったときに結果がわからないから、今まで通りにしておこうよ、となってしまうのです。同じ結果なら新しい方をやろうとする人は、再就職で必ず成功します。思わずみんながついていきたくなる人はとても強いのです。
第12回 相手の欠点を包み込む人になろう
仕事をしているとどうしても、上司や部下の短所・欠点が気になるものですよね。他人のみならず、自分にしても。でもこれはしかたがないんです。人間は満ちたものより、欠けている部分についつい目がいくものです。そんなときは簡単です。この人はそう考えたんだ、とその事実を認めてあげればいいのです。包み込めば良いのです。
海外では、Aという考え方とBという考え方が出てくると、A or Bで、結論を出そうとします。一方、わたくしたち日本人の発想は違うのです。AにBの考え方を融合できないか、Bを融合、一体化して新たにCという答えがありえないか、を考えるのです。
対立的な発想では1つの結論を出した後、組織や仲間が一体となって目標として応援する、ということはなかなか難しいのです。また対立するような答えの融合が新たな答えのきっかけを創ることにもなります。
対立意見が出てくると否定しようとせず、まず認めてあげる、それが日本的な発想です。「そうか、あなたはそう思うのですね。」と言ってみてください。一度認めてみる。しかも声に出して、相手を見つめて笑顔で。確かにいきなり何を考えているんだ、と返されるよりも、相手もはるかに気分が良いはずです。そしてその発言に至ったプロセスを聴いてみるとさらに良いです。1人1人の発想のプロセスは違うのです。そのプロセスを知れば、次の予想もつきやすいのです。こういうことを続けていると、あら不思議。相手の欠点なんかいつのまにか気にならなくなってくるのです。
第13回 役職や年齢では人はついていかないことを知ろう
民間企業ではいま、年功序列はあまり関係なくなりました。自衛隊では階級が絶対でした。上長の命令は絶対でしたよね。でもそれは民間企業の考え方とは違うのです。民間企業では年齢に関係なくリーダー、リーダーシップのある人間の言うことは聞くのです。
「俺は役職上位だから」と役職を振りかざしても、いうことを聞かせることはできないのです。「はい。わかりました。」と表面上言っても、面従腹背です。
また、自分より年齢が上の人が自分の下に来ることも増えてきました。このときも年齢に遠慮したり、それを役職上位で言うこと聞かせよう、ではなく、リーダーシップがある、とわかるようにしなければなりません。
実は年齢が上の人や仕事ができる人であればあるほどリーダーの要素を持っている人を正しく判断します。仕事が一番できることはリーダーの条件ではありません。リーダーシップがあるかないか、なのです。ですからみなさんが、民間企業に途中入社されても、最初から役職はなくとも、周りの方が言うことをきいてくれることが珍しくない、と思われます。これまで自衛隊で培ったリーダーシップを活かして欲しいのです。
第14回 勉強量で負けない人になろう
仕事で達成感を感じるためには自分に成果・成長を見つけなければなりません。
小さい成果・成長を、「これって大きいな」と言えるかどうか。それは日頃の勉強量によります。勉強していないと、成果・成長はわかりません。だから誰よりも圧倒的に勉強しなければなりません。
勉強量で他の社員さんに負けていたら、成果・成長を感じることができないのです。他の人が1勉強したら、あなたは100勉強します。だからこそ自分の成果・成長が小さくても仕事に喜びやりがいを見つけることができるのです。
ところが、再就職して忙しくなる人がいます。いつもみんなでワイワイやっている人は1人になる時間がありません。勉強する時間もなくなります。たとえば金曜日の夜7時からのセミナーなんか行くわけないのです。
ここに来ることができる人は何歳からでも成功できる素質があります。普通に考えると、参加は無理です。会議やお付き合い、懇親会や社内行事。得意先のお客様にも会わなければなりません。でも、そんなことではしょせん先が見えてしまいます。上には立てないのです。ちょこっと勉強したくらいではダメです。圧倒的な勉強量があれば、おのずとみんなに認められます。それがかっこいい。話題が豊富な人だ。一緒にいて楽しい人だ。視野の広い人だ。圧倒的な勉強量はあなたの好評価に繋がるのです。
第15回 まず1人から組織を変える人になろう
自分の所属部署に10人いる時全員から一気に信用を得るのは大変です。でも10人いたらその中に1人はやる気のある人がいます。その人にまず寄りそい、育てるくらいの気持ちで接します。自衛隊の時には10人に注いでいたエネルギーを、この1人に徹底的に注ぐのです。
こんなことをやりませんか?と10人の社員に言います。「おもしろそうですね!やってみましょう。」賛同してくれる人が所属の中に必ず1人はいます。この賛同してくれる1人とまず始めることです。そこから次の何かが生まれます。全員と一気に始める必要はないのです。
やる気のある1人を選ぶにはこれまで自衛隊で培った観察力が必要です。積極的ということだけでなく、あいつはおとなしいけど実はやる気がある。というところまで見るのです。エネルギーを注いだ1人が成長してあなたを信用するようになれば成功です。
1本目を倒すとバタバタ倒れるボーリングのセンターピンと同じです。この1人が信用したら、今度はこの人が次の人を連れて来ます。イチ抜けすると、不思議とその抜けた穴に次の人が出てくる。こういう流れになります。
このやり方は、全員から一気に信用を得るのに比べてエネルギーが10分の1に減ります。9人は今まで通り、放っておいていいのです。1人の人に対して、本気で徹底的にやるのです。たった1人に信用を得られたらその1人がまた大勢の信用を拡げていくのです。ぜひ、まず1人から組織を変えられる人になってください。
第16回 運動量の多い人になろう
仕事にミスはつきものかもしれません。ささいなミスや小さなミスは無限に起こっている可能性があります。でもその小さなミスが大きな失敗や事故につながります。それに気づくか気づかないかが、大きなポイントなのです。
社内の人たちは毎日同じ景色を見ているので、なかなかそのミスに気づきません。小さなミスをより多く発見するためには、その現場、状況を見逃さないこと。そのためにはサッカーと同じように、まずは運動量を増やすのです。
あなたは他のだれよりも社内を歩く歩数が多くなければなりません。もしも万歩計をつけて測ったら、どの社員にも負けない。最も歩き、運動量があり、体を動かしている人をみんなが信用して信頼するようになります。
歩く歩数が少ないと、小さなミスには気づけません。一例をあげると外資系ホテルの総支配人はホテルの中を1日10キロ歩きます。常に歩いている人が総支配人なのです。だれよりも運動量の多いあなたが社内のいろいろなことに気づき、ミスが減り始める。あなたにみんなが信頼を寄せるようになる。信用信頼を得るためには、いつもどれぐらい歩いているか、運動量の勝負なのです。
第17回 担当じゃありませんという言葉を禁句にしよう
自分の守備範囲から動かない人の口グセは「担当者に言っておきます」です。これを言ってたらダメなのです。こんな残念な表現はありません。まるで役所に相談して「管轄違い」と却下されるようなものです。
たとえばある運送会社で「トラックのメンテナンスをするときはリース会社任せにするな、トラックをただ並べておくだけでは故障やトラブルは減らないぞ!」と社長が全体会議で話したとします。これを「ああ担当者は大変だな。がんばって。」と自分は担当が違うから、という気持ちで聞いたらいけません。というか、とってもマズイです。自分の部署でも似たような同じことが起こってないかとドキドキしなければなりません。
「担当者」「担当部署」という言葉を使うと、自分は傍観者になってしまいます。その人がしっかりしてないからダメじゃないかという考え方をしてしまいます。他の社員がやったことの責任はゆくゆく全員に降りかかってきます。自分が気づいていなかったことを反省することです。担当者が勝手にやったことで、自分は知らない、関係ないことなんです、と言ったら、失格です。
ほう・れん・そう(報告・連絡・相談)ということばがあります。野球で言い換えると、センターとレフトに上がったフライボールを声を出し合いながら2人で追いかけてどちらか1人がうまく捕球することです。これがうまくいかないと全部センターとレフトの間にフライが落ちてしまいます。
担当者でないから、知らない、関係ない。そういう空気を自分が作っていないか、と反省することです。声を出し合いながら2人で追いかけて、結果どちらか1人がうまく取る「空気」を作っていくことが大切なのです。
第18回 マニュアルよりも熱が伝わる人になろう
仕事のできない人はマニュアルの内容を一生懸命伝えようとします。でもマニュアルを完璧に伝えても、お客様は満足してくれません。マニュアルを伝えることにエネルギーを注がなくていいのです。
そもそもマニュアルはわからない時に立ち戻って、カンペ代わりをするもの、再確認するためのものだからです。
上手くやろう、失敗しないようにやろう、ではダメなのです。上手くやるよりも、一生懸命にやる人が周りに認められる人、お客様に選ばれる人なのです。
マニュアル通りの細かな説明をしても人の心は動きません。人間が何か感じるとき、それはロジックや論破テクニックではありません。熱を感じ、その熱に動かされるのです。
仕事をしている時には「絶対10年後も選ばれる人になってやってやる!」と熱を伝えればいいのです。ただ話しているだけでは熱は伝わりません。少し感情が出てもいいから、もっとお客様に感動を伝える何かをやっていこうよ!と本気で熱を伝えるのです。その熱は必ず職場に伝染します。職場のみなさんに伝染したら、今度はお客様にさらに熱が伝わるものなのです。人の心が動くのは技術やテクニック、設備なんかではありません。何か一生懸命やってくれているなぁ、という熱を感じてくださっているのです。
第19回 見えないSOSがわかる人になろう
人はいきなり辞めたりしません。上司や同僚とコミュニケーションが取れなくなったら、社員は「やっぱりやめようかな」と思うのものなのです。
ここではじめて「なんで辞めるの?」と気づきます。「退職意思」を伝えられてからコミュニケーションを取ろうとします。普段コミュニケーションをとっていないから、「なんで辞めるんだ?」と上司の人が訊いても部下は本当の理由なんか言いません。「一身上の都合です」とわかりやすい理由をつけます。本当はやめる必要のない社員を辞めさせてしまうのは職場にいいコミュニケーションがなかったからです。
コミュニケーションはサッカーに喩えるならパスです。パスはどんどん回していかなければなりません。ボールを持ちすぎていてはボールを取られます。1人でサッカーはできません。1人で離れたところからやみくもにロングシュートを打ってもダメ。パスをいかに多く回せるか、これがコミュニケーション力です。受け取ったら素早くパスして、パス回しを多くしていきます。もちろん会議を多くすることがコミュニケーションを増やすことではありません。サッカーの試合でいうならば勝っている試合で時間稼ぎに自陣でパスを回している状態。これがよくある会議です。時間稼ぎのためのパスまわしの会議をやってはいけません。報告・連絡・相談を思わずしたくなるようなコミュニケーションを普段からやることです。
もしもあなたが相談に乗るのが好きで、アドバイスもしたいと考えているとします。ところが、誰も何も言ってこない。なんだか寂しいな、やりがいがないなと思うかもしれません。でも実はこれ、自分に相談する力がないからです。相談する側は必ず相手を選びます。相談しても仕方がないと思う人、相談しにくい人には部下は相談しないです。一流の人になるためには、相談される力が必要です。これがコミュニケーション力です。普段どれぐらい相手の話が聞けているかということでもあります。熱を伝えるということは一方的に喋るのでありません。相手のことを聞いて、共感というベースがあって初めて伝える・伝わるルートが生まれてくるのです。
第20回 相談されやすい人になろう
よく誤解されていることですが、コミュニケーション=相談ではありません。
いろんなコミュニケーションの中で、実はあれは相談だったんだなぁということがあります。相談に乗ろうと身構えるのではなく、何でもないときに雑談しておくことです。
「ちょっと相談があるんです」とあなたが言われた、とします。その時、相手が話し始めるまで絶対に「相談って何だよ?」と言わないことです。そうではなくて、雑談を待ちましょう。ほぼこれで解決します。
上司自身のコミュニケーション力が足りないと「相談があるんです」と部下や後輩に言われしまうのです。そういう言い方をすれば、上司とコミュニケーションがしやすいからです。相手が自分から話し始めたら聞いてあげることです。
「Aにしようか迷っているんです。」と言われて「そんなのじゃなくてBだろう。」と答えるのは相談の乗り方として最低です。決めるのは本人なのです。ただ聞いてきているのです。それを決めるのは君だから私はよくわからないよ、これでも、相談に乗っていることにはなりません。では何と言えば良いのか。「私だったらこっちにするな。」というのです。そしてそれ以上は言わないことです。
第21回 辞めます、と言われても慌てない人になろう
仲間や後輩から急に「辞めます」と言われるとあたふたしてしまうものです。
本来はそこに至るまでに何かをやっておかなければならなかったのです。もっとコミュニケーションを取っていれば、辞めるところまではいかなかったのです。
この時に「そんなこと言わないでよ」と言っても、何の解決にもなりません。給料をアップするとか、休みを増やす、では条件交渉・取引になってしまいます。また物理的な問題で辞めたいと思っている人間は止めても仕方がありません。たとえばお父さんが亡くなって家を継がないといけないという人は引きとめようがありません。
精神的な原因で辞めようとしている人間は精神的に引き止めないといけません。こんな時は一緒に働いている仲間のコミュニケーションが物を言うのです。そのチームの中で一番やる気のあるあなたが「一緒にやっていこうぜ!」と投げかけることが必要です。利害関係がないからあなたの説得力の方がはるかに大きいのです。
人が辞めない組織は上司ではなくナンバー2格の信頼されているリーダー的な社員が、辞めたいと言っている人間としっかり話をしています。たった1人、部門で一番やる気があり信頼されている「あなた」と話すから「〇〇さんと一緒に仕事したいな」と思い直し、辞めないのです。
第22回 前向きでプラスの空気をつくる人になろう
会社にとって何が大切なことなのか、を考えてみてください。それは前向きか、後ろ向きか、ということです。後ろ向きな空気が感じられるところは危ない会社です。
業績・技術・ビジネスモデルなどそんなことが大切なのではありません。採用面接でも一番大切なことは、「この人は前向きだなぁ」という印象を与えることです。
会社で一番大切な資産、企業価値って何だろうって考えてみてください。社員の仕事は、企業価値を上げることです。企業価値は技術でも業績でもビジネスモデルでもありませんし時価総額でもありません。企業価値は社員の前向きな気持ちの総量です。
会社の企業価値をいちいち調べなくてもわかります。それは社員の前向きさ、そこから生まれるまずやってみよう!というプラスの空気に関係があります。社員は前向きでプラス思考なのに上司は後ろ向きでマイナス思考ということはありません。その逆に、上司はイキイキ、活発なのに部下はどんよりして、消極的、ということもあり得ません。まったく鏡の関係なのです。
後ろ向きで、マイナス思考で元気のない社員と接触すると風邪をひいたときの悪寒のようなだるい感じをもらう可能性があります。それは人からもらうこともあるし、自分が人にうつすこともあるのです。
第23回 当たり前のこともニコニコして伝えられる人になろう
人の口癖はまわりの人の運気を上げることも下げることもあります。
「そんなこともできないのか」「そんなことまでいちいち言わなきゃいけないのか。」「そんなの常識だろう。」「普通に考えたら違うだろう。」「そんなのわかるだろう。」以上はまわりの運気を下げる人の口癖です。
みなさんは同じことでも平気で何百回でも言うことのできる人になってください。それを面倒くさがる人は残念な人です。
ちょっとたとえが悪いのですが、「切取屋さん」という職業があります。債権の回収、つまり借金の取り立て屋さんの仕事です。優秀な切取屋さんは少しゆるいんです。カッとするタイプは切取屋さんには絶対向かない人です。切取屋さんは一見怒っているような感じがします。でも怒りっぽい切取屋さんが来たら安心です。向こうの根気が続かないからです。「すみませんね。ないものは払えないんで。」と笑っていられます。超一流の切取屋さんは全然怒っていません。淡々とニコニコ笑いながら、ピンポンピンポンと押し続けます。仕事で目指すべきははこれです。
仕事でまわりの運気を上げる人は、メールに頼らないで、電話や口頭で言うし同じことを100回でも200回でも平気で言うという2つの共通点が実はあるのです。
第24回 どんどんメモする人になろう
一流のビジネスマンもエンジニアも料理人もお客様のところへ挨拶に行きます。そのときに「よかったですか?」とか「おいしかったですか?」なんて聞く人はいません。この質問自体がおかしいのです。「何か問題はなかったですか」「アイディアがあったら教えてください」「ぜひ率直な感想を聞かせてください」「厳しいことでも辛口でも何でも言ってください」と質問します。
できる人はメするまでの時間が3秒以内です。いつでもどこでもメモできるように常に準備しています。料理人でも一流の人はシェフコートの斜めに切り込みが入っているところにペンがさしてあります。何か思いついたらすぐにメモするのが一流の人の職業病です。こういう人が伸びていきます。トップクラスはひたすら何かを書いています。ペンを何本もさしていたりします。指示するメモもあれば、何か気づいたことを書くメモもあります。
いい大学を出ていれば一流になれると思いがちですが、実はふだんから勉強しているかしていないかで大きな差が生まれるのです。
会社組織の中に勉強する姿勢があるかないかは、社員にメモを取る習慣があるかどうかですぐにわかります。社員にメモを取る習慣があるかどうかは上長・役職者がメモを取る習慣があるかないかで決まります。あらゆるノウハウを蓄積していく、みんなでそのデータと情報の蓄積と共有をする習慣がないのです。だからあなたは率先して、自らメモを取って欲しいのです。
第25回 孤立を恐れない人になろう
人はだれしも孤立するのは嫌ですが、実は孤立の先に尊敬があります。
例えば、仕事の上で「叱る」ことが避けられないとします。信用や品質など譲れないことがあるからです。でも叱ると嫌われます。嫌われることで、孤立します。意外かもしれませんが孤立の先にあるものは尊敬です。尊敬は孤立から生まれます。孤立していても、偉いなぁこの人は。この人についていこう、という気持ちが生まれます。平常時はみんなと一緒でいいのです。ところが、いざ緊急事態になったときは人って不思議なことに孤立している人についていきます。調子が悪くなった時、真に頼りにされるのは離れたところにいて引っ張ってくれる人です。中に埋もれて内部のフォローをしていると外の世界が見えなくなるので、どこに行けば助かるかわからないのです。孤立を恐れない人は常にその集団から少し離れたところにいて、全体を見回しているのです。
第26回 叱ることを恐れない人になろう
叱ることは勇気がいります。できれば面と向かってではなくメールで送りたいくらいです。でもこれは現場の人間からすると逆に何か冷たい感じがします。1回叱って嫌われる関係ができた方が仲良くなれます。1回この体験をすると、関係が一皮むけるのです。
好感度をいかに上げるか、言い方を気にされている方も多いかと思います。でも、ズバッという人が誰かいなければならないのです。厳しく言うと嫌われるリスクは当然あります。
でも実は一番嫌われる人って「叱ってくれない」人です。あの人は感じはいいけれどいざとなったら、優柔不断でついていけないよね、と言われます。実はこれが一番マイナスなのです。
今の時代はコンプライアンスの時代です。特別に難しいです。子どもだって、親も先生も叱らないので、叱られた経験はないのです。不思議なことに今の子供たちは誰か叱ってくれる人を待っています。新卒の就職面接でも決まっ「自分を成長させたいので厳しく叱って欲しいです」なんて言うのです。新卒入社して、仕事で叱られてめちゃくちゃへこんでいます。あすは休みたい、何か病気にならないかな、と言っているんです。でもがんばって翌日も出社してくる。こんな新人はぐんぐん伸びていきます。嫌われないように気ばかり遣っていると人は伸びないのです。
第27回 しゃべり過ぎる人は尊敬されないことを知ろう
お客様や外部の人の話を1つも聞かないで話し続ける社長の会社は伸びません。
話している側は気づきません。トップも管理職もがしゃべり過ぎているのです。しゃべり過ぎる人は、社長でも管理職でも、本質的なこと、肝心なことを1つ訊くと、答えられません。質問されることに慣れていないのです。
ある会社の社長に「この会社の10年後にどんなイメージをお持ちですか?」と1つだけ質問をしたことがあります。そのしゃべりすぎる社長は、またバーっと話し始めましたが、質問に対する答えはとうとう1つも返ってきませんでした。そんなことを聞かれたことがないので焦ったのです。その会社の管理職も社員も同じように社長の「この会社の10年後のイメージ」を聞いたことがありません。これが弱い会社、伸びない会社の特徴です。
人材育成って人の問題なのですが、人と考えると抽象的です。その会社のミーティング風景を見るだけで、どういうふうに人を育てているか、その会社の社長や管理職の人となりが一目でわかります。
第28回 会議は必要な人数だけで中身濃くやろう
会議の人数が増えると、社長も管理職も演説を始める会社をよく見かけます。人数が多くなると演説をしたくなる。これは社長や管理職の悲しい性です。1対1の2人のミーティングでは演説にはなりません。ところが10人を超えるあたりから、演説しないと自分が仕事をしている気がしないという空気ができるのです。
ミーティング自体が悪いのではありません。4人で会議をしていればもっと中身があって、短く密度の濃いミーティングができたはずです。必要以上の人間を呼ぶことによって、社長や管理職の演説が始まるのです。
その時、社長や管理職は未来の話をしているのか、それとも過去の話をしているのか、どちらなのかをよく見ていてください。社長や管理職の演説が、世の中はこうなっていく、これは何とかしなければ、という未来の話ならまだ救いがあります。しかし、売上が達成できていない、ノルマが達成できていない、お客様からこんなクレームが来た、など現状を話してばかりならとても危ないです。現在の話をしていると、いつの間にか必ず過去の話になります。常に未来の話をしているつもりでちょうど現在の話になるのです。昔話に花を咲かせているのと変わりがないのです。こういう会社や組織は伸びないのです。
第29回 会議やミーティングで関係のない雑談はやめよう
大人数で会議やミーティングをすると、今日の議題・テーマから離れた雑談になることが多くなります。もちろん、アイデア出しの会議では、雑談も重要です。今日はアイデア出しなのだから雑談をどんどんしようというブレーンストーミングはいいのです。けれど、この問題をどうやって解決するかというテーマの話をしているときは、話を逸らさないことです。
ところがこの話をまずそらしていくのは経営者・上司です。下の人間が話をそらすことはできません。目上の人間がいる前で今日のテーマとは関係のない話はしません。
ゆるい会議になってしまうのは、経営者や上司が「これ関係ない話だけれど、昔な」と言い出すことが多いのです。「関係ないけれど、前にしたかな、この話」なんて言いながら、たくさんしています。社員は前に聞いたことがあるのに、「いや、聞いていません。」なんて言います。内容を聞く前に聞いていないというのは明らかにウソです。こうやって会議やミーティングは議題やテーマからそれていくのです。
こういう組織は弱体化していきます。部下・メンバーが主要なことと関係ないことに話をそらしたら、「そういう話は面白いけれど、今するな」というのは、経営者・上司の仕事なのです。
第30回 環境の悪口を言わない人になろう
社風は人を育てます。社風とは上から下まで全員の意識でつくっていくものです。
特に影響力のある社長や管理職はふだんその人と一緒にいて、その人の仕事ぶりだけでなく言葉づかいや考え方も社風に影響を与えます。
OJTとは、テクニックのトレーニングです。しかしテクニックのトレーニングだけでは人材育成とは言いません。マニュアルの徹底でしかないからです。本当に大切なのは、常に新たなものを生み出し、ビジネスモデルを継承して、新しい変化に対応していける人間を育成していくことです。
どんなに過酷な環境になっても環境のせいにしないで生き延びていける人材が必要です。これが人材育成というものです。人を育てる立場の人は、環境の悪口を決して言わないことです。環境の悪口を言った瞬間に、育てられる側も言い訳を見つけます。育てている側が環境の悪口を言っていると、そのままマネをします。
できない理由を環境のせいにしたら、「100人のうち99人は環境を言い訳にする0だろう。しかし、生き延びて成功している1人が必ずいる。その人は他の99人と、どこが違うのか?それを考えてみろ。」と言うのが、育成・教育なのです。
第31回 アイデアを語る人になろう
夢や幻のようなことでも、「みんなでこんなことできたらおもしろいと思いませんか」とか「こういうことをやりませんか」と語ってください。その根拠は?と聞かれても、「根拠はないけれど、こんなことができたらいいじゃないですか。」と言える人に、人はついていきます。
経営者でも管理職でもピンチに追い込まれた時に、「いいアイデアを思いついた!」という一言をみんな待っています。経営者でも管理職でも、「しょうがないよ」「しかたがない」と言い始めると、アウトなのです。
よくよく聞いてみると、大したアイデアでないこともあります。それでも、いいアイデアを思いついた。ということが、その場の空気変え、意識が変わり始めるきっかけをつくるのです。だからいつもアイデアを考えていて欲しいのです。そして思いついたアイデアをぜひことばにして発してみてください。ことばは「言霊(ことだま)」ともいわれます。言葉にしたとたん、実現するために動き始めるのです。
第32回 部下や後輩を先に帰す人になろう
上司より部下が、先輩より後輩が先に帰る会社は伸びていきます。
ふつう部下や後輩は先に帰れません。先に帰ると、最近の若いヤツはひどい、なってない、上司が仕事しているのに先に帰るなんてやる気がなさすぎると文句を言ったりします。年齢が上の順に帰る会社は、後輩が変に気を遣って、やる仕事もないのに会社に残っているのです。
「お先に失礼します!」と、自分の仕事が終わった部下や後輩が帰れる会社は、役割分担をきっちりできている会社です。こういう会社には仕事が速い若手社員が多いです。先に帰れると風通しがいいのです。
帰る順番なんて、その日によって違います。いつも上司や先輩の仕事が早く終わって、下に行くほど必ず仕事が長くかかる、なんてことはあり得ません。いつも上司や先輩が先に帰って、一番若い部下が最後まで残っているのは、帰りにくいから残っているに過ぎないのです。そういう先に帰りにくい会社の若手社員は急いでも帰れないからゆっくりやるか、上司、先輩がいつも20時に帰るから20時半に帰るよ、すぐ出たら見つかるし、少し遅らせて帰ろう、となります。本当は17時までに終わる仕事を20時半まで平気で伸ばすのです。仕事なんて伸ばそうと思えばいくらでも伸ばせるものです。
お客様が夕方17時までにして欲しかった仕事もその会社では、社員が早く帰れないという社風のせいで20時半になってしまうと、今日で解決することが明日になってしまいます。「お先に失礼します!」と言えないことからこの繰り返しをやってしまうのです。これではお客様に対してリアルタイムでスピーディーな対応はできない会社になってしまいます。マイナスはすべてお客様に行くのです。これは一見すると、人事労務の問題と思われます。しかし最終的にはお客様満足度の問題になるのです。命取りのリスクが生じていることを肝に銘じてください。
第33回 社内掲示物が水平でなかったらすぐに直す人になろう
会社の廊下や会議室にはその会社の社内掲示物が貼ってあることがあります。業績の悪い会社の掲示物はなぜか傾いています。その会社の傾きをそのまま象徴しています。驚くくらい、全部傾いています。それはその会社がバランスを崩しているということなのです。
スピリチュアルではなく、リアルにそういうことが起こるのです。明らかに傾いているとわかる掲示物が社外のお客様が来る部屋にずっと貼られているのです。お客様は当然気づきます。社員も実は気づいています。あそこに貼ってある掲示物はもうアガリだよな、あれ誰か替えないの?と言う人がいます。この発言は「自分には関係ない」という意味です。石塚さんが社内掲示物が傾いてますって言っていたから担当の人は直しておいて、となってしまうのです。
明らかに問題があったとしても、これは自分がやった仕事じゃないからといってバックアップをしない社風から社内掲示物が傾くという現象が起こるのです。これはポスターだけでなく、社内が全てこうなっているということを意味しています。社内掲示物の傾き1つから、その会社のリスクがこんなにも伝わってしまうものなのです。
――次回第34回は、1/8(月)の配信となりますのでお待ちくださいませ。
<デジタル編集部 コラム担当より>
5月から始まりました「援護を援護する」、お楽しみいただけてますでしょうか。再就職を目指す自衛官の皆様へと初めたコラムですが、執筆されている石塚氏より送られてくるコラムには私自身毎回ドキッとさせられています。
さて、届いた原稿を1番に見ることができる(自称ファン1号の)私ですが、ここからはあくまで個人的な主観で、ドキッ、グサッときた回をご紹介させてください。
ずばり「第9回 聖域をつくらない人になろう」です。
「聖域」はどこにでもあると思っています。その聖域は、目には見えない強固なシールドに覆われていて、そこに暮らす住人は自分たちこそが優れていると信じ、外の世界を知ろうとしない。まるでRPGで良くある設定かのようですが、実際に存在しています。
そして、最初は聖域を嫌っていた人たちもいざ聖域に入ると住人化してしまう。この繰り返しで聖域は長く保たれてしまうのです。
聖域は、コミュニケーションを不足させ視野を狭くし秘密主義になってしまう。聖域住人とそうでない人たちとの信頼関係は崩れチームは破綻...そんな経験をしてきた私としては『全ての聖域を叩き潰してください』とういセリフが稲妻のごとく胸にささりました。
でも実際は、なかなか出来ることではないと思います。そんな時は、
「第15回 まず1人から組織を変える人になろう」=一緒に戦ってくれる同志を見つける。
「第18回 マニュアルよりも熱が伝わる人になろう」=そのマニュアルを超える。聖域住人はマニュアル人間が多い(印象)。
「第22回 前向きでプラスの空気をつくる人になろう」=同志を増やす。
以上を実践できたら、何かが変わるのでは⁈と考えています。
幸いなことに、私の周りには現在「聖域」は存在していないので「第12回 相手の欠点を包み込む人になろう」=包容力、を身に着けたいと考える日々であります。
再就職に向けて、はたまた今の環境に照らし合わせて、などぜひご自分に置き換えて読み進めてみてください。「あ!」と気づいたその瞬間こそ、あなたとって何かが変わる合図です。
※あくまで経験からくる個人の主観的な意見です。職種によっては「守られるべき聖域」もあることをご理解いただいた上でお読みいただけると幸いです。