令和5年(2023年)12月3日(日)、宮崎県の航空自衛隊新田原基地(にゅうたばるきち)において新田原基地エアフェスタ2023が開催された。毎年恒例の航空祭シーズンの大詰めだ。
 今年は入間航空祭が年明け1月20日開催になることや翌週の那覇が初の曲技飛行展示になることで変則的だが、ブルーインパルスにとって新田原基地航空祭が曲技飛行展示の集大成的航空祭であることは変わりないだろう。
 新田原基地はNYUTA(ニュウタ)の愛称で呼ばれている。そのNYUTAでブルーインパルスが第1区分の曲技飛行を披露した。

画像: ブルーインパルス第1区分のループ課目「チェンジ・オーバー・ループ」

ブルーインパルス第1区分のループ課目「チェンジ・オーバー・ループ」

 西部航空方面隊隷下の第5航空団第305飛行隊と航空教育集団隷下の飛行教育航空隊第23飛行隊が配置されており、共にF-15J/DJの部隊となっている。その他、新田原救難隊などが配置されている。
 第305飛行隊は梅の花を部隊マークとしている。平成28年(2016年)に梅を県の木とする茨城県の百里基地から移転してきた。日本三名園のひとつ「偕楽園」の梅に由来するとされているが、百里基地周辺にも梅の木が多く見られる。新田原基地に移転後は基地と同じ宮崎県児湯郡新富町にある天然記念物「湯ノ宮の座論梅」を拠り所にしているという。

画像: 第305飛行隊の3機編隊でのオープニング飛行

第305飛行隊の3機編隊でのオープニング飛行

 百里基地時代、往年の航空総隊戦技競技会「戦競」ではダブル編隊長の戦術を編み出し、二刀流の武蔵を掲げた常勝の飛行隊だった。西部航空方面隊隷下の部隊として築城基地の第8航空団とともに西日本防空を担う。
 オープニングでは増槽3本の形態でF-15J3機がデルタ隊形とエシュロン隊形の航過飛行を見せた。対領空侵犯措置のホットスクランブルではより長距離をカバーできる増槽2本の形態が標準的形態となっている。増槽3本はレッドフラッグアラスカなどの遠距離海外遠征時を思わせる。

画像: オープニング飛行で3番機に搭乗した伊藤美紗1空尉。空自初の女性戦闘機パイロットだ

オープニング飛行で3番機に搭乗した伊藤美紗1空尉。空自初の女性戦闘機パイロットだ

画像: ブルーインパルス元4番機の村上綾3空佐も戦闘機部隊に戻り、元気に活躍中だ

ブルーインパルス元4番機の村上綾3空佐も戦闘機部隊に戻り、元気に活躍中だ

 オープニング飛行では日本初の女性戦闘機パイロット、伊藤美紗1空尉も3番機パイロットとして飛んだ。
 ブルーインパルスの元4番機、村上綾3空佐も第305飛行隊で活躍中で、元気な姿を見せてくれた。
 機動飛行では屈強な第305飛行隊らしく迫力のある展示飛行を見せた。

画像: 大編隊での航過飛行へと離陸する第23飛行隊のF-15JとF-15DJ

大編隊での航過飛行へと離陸する第23飛行隊のF-15JとF-15DJ

 飛行教育航空隊の第23飛行隊はF-15の戦闘機操縦課程を担う。その部隊マークは黒駒をモチーフにしており、宮崎県串間市都井岬に生息する天然記念物「御崎馬」とも言われている。
 第23飛行隊はF-15x10機(複座F-15DJx6機、単座F-15Jx4機)で大編隊飛行を見せた。

画像: 築城基地よりのリモートで機動飛行を展示した第6飛行隊のF-2A

築城基地よりのリモートで機動飛行を展示した第6飛行隊のF-2A

 築城基地からは第6飛行隊よりF-2Aがリモート展示で機動飛行を見せた。
 新田原救難隊の救難展示は、任務上の都合で中止となった。新田原救難隊については、11月29日に屋久島付近で起きた米軍オスプレイの墜落を受けて捜索救難活動にあることが、統合幕僚監部より発表されている。

画像: F-15のエンジン搭載卸下展示に多くの来場者が関心を寄せた

F-15のエンジン搭載卸下展示に多くの来場者が関心を寄せた

 地上展示機は空自からT-7、T-4、T-400、E-2D、U-680A、U-4、C-2、CH-47Jなどが、海自からP-1、SH-60Jなどが参加した。F-15のコクピット展示やエンジン搭載卸下展示には多くの人が集まっていた。

画像: 傘型隊形で編隊離陸したブルーインパルスの1番機、2番機、3番機

傘型隊形で編隊離陸したブルーインパルスの1番機、2番機、3番機

 ブルーインパルスは築城に続き晴れ空の下、第1区分の曲技飛行を展示した。新田原では、1番機から3番機が傘型隊形で編隊離陸し、続いて4番機がインディビジュアル・テイクオフで単機離陸し、3機に空中集合することでダイヤモンド・ダーティー・ターンを実施した新しい離陸形態だった。フィンガーチップ隊形から離陸し、4番機がエアボーン直後、素早く1番機の後方に付くダイヤモンド・テイクオフが実施されなくなって久しいが、この新しい離陸形態がダイヤモンド・テイクオフ復活への軌跡になることを切望する。

画像: 後方からの進入で見せたフェニックス・ループ

後方からの進入で見せたフェニックス・ループ

画像: 12月に入りクリスマス・ツリー・ローパスが今年のNYUTAにも展示された

12月に入りクリスマス・ツリー・ローパスが今年のNYUTAにも展示された

 その他、フェニックス・ループも築城に続き後方からの進入で見せていた。12月の航空祭でクリスマス・ツリー・ローパスも実施された。
 NYUTAは今年も曲技飛行展示の集大成となる航空祭となった。

画像: ブルーインパルスの3番機、宮崎県に地元凱旋を果たした藏元文弥1空尉

ブルーインパルスの3番機、宮崎県に地元凱旋を果たした藏元文弥1空尉

 3番機の藏元文弥1空尉は宮崎県出身で地元凱旋飛行となった。藏元1尉は宮崎県の都城高専で3年までの課程(高卒相当)を終了し航空学生67期に入隊した。高専は5年制で卒業すれば短大卒相当となり、就職する者や理工系大学の3年に編入する者が多いが、3年の就学の後、一発で航空学生に合格し戦闘機パイロットになった経歴は、稀有で優秀な人材であるといえよう。筆者は都立高専を5年で卒業し一般企業に就職した。

新田原基地エアフェスタ2023 ブルーインパルス第1区分課目構成

①3機編隊離陸(1,2,3番機)&4番機インディビジュアル・テイクオフ、ダイヤモンド・ダーティー・ターン
②ローアングル・キューバン・テイクオフ、ロールオン・テイクオフ【同時】
③ファン・ブレイク
④4ポイント・ロール
⑤チェンジ・オーバー・ターン
⑥インバーテッド&コンティニュアス・ロール
⑦レベル・サンライズ
⑧バーティカル・クライム・ロール
⑨スロー・ロール
⑩チェンジ・オーバー・ループ
⑪ハーフ・スロー・ロール
⑫レター8
⑬オポジット・コンティニュアス・ロール
⑭4シップ・インバート
⑮バーティカル・キューピッド
⑯ライン・アブレスト・ロール
⑰360°&ループ
⑱ワイド・トゥ・デルタ・ループ
⑲デルタ360°ターン(左旋回)
⑳フェニックス・ループ
㉑クリスマス・ツリー・ローパス
㉒ボントン・ロール
㉓バーティカル・キューバン8
㉔スター・クロス
㉕タック・クロスⅠ
㉖ローリング・コンバット・ピッチ
㉗コーク・スクリュー

新田原基地エアフェスタ2023 ブルーインパルス展示飛行メンバー

1番機 川島良介3空佐(飛行班長)、後席・江尻卓2空佐
2番機 東島公佑1空尉
3番機 藏元文弥1空尉
4番機 手島孝1空尉
5番機 藤井正和3空佐、後席・佐藤裕介1空尉
6番機 加藤拓也1空尉
地上指揮官 名久井朋之2空佐(飛行隊長)
ナレーター 松永大誠1空尉

《取材協力》新田原基地広報班

《取材・撮影》ブルーインパルスファンネット
伊藤宜由(写真)/今村義幸(文)


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