令和5年(2023年)11月12日(日)、航空自衛隊岐阜基地で岐阜基地航空祭2023が開催された。4年ぶりの開催で岐阜基地発表によれば13万8千人の来場者があったという。

 ブルーインパルスも5年ぶりに参加した。6番機の加藤拓也1空尉(航空学生65期)は岐阜県加茂郡川辺町出身で地元凱旋飛行となった。
 曇天ながら、冬の風物詩「クリスマス・ツリー・ローパス(正式名はツリー・ダーティー・ローパス)」を含む第3区分の曲技飛行を展示した。

画像: ブルーインパルスの冬の風物詩「クリスマス・ツリー・ローパス」(写真・今村義幸)

ブルーインパルスの冬の風物詩「クリスマス・ツリー・ローパス」(写真・今村義幸)

画像: 展示飛行後にファンに取り囲まれサインを求められる加藤1尉(写真・今村義幸)

展示飛行後にファンに取り囲まれサインを求められる加藤1尉(写真・今村義幸)

 岐阜基地に所在する岐阜飛行場は歴史のある飛行場で、日本で現有する飛行場としては最古の飛行場となる。先人達の知恵で選ばれた場所だからか、東西に伸びる滑走路RWY10/28は年間を通じてほぼほぼRWY28で運用されており、風向きが安定した飛行場にふさわしい土地といえる。
 南側には木曽川が平行して横たわり、その南側は愛知県となる。十二試艦上戦闘機(零戦試作機)は愛知県港区の三菱重工大江工場から牛車でここまで引かれて初飛行を行ったという。

 岐阜基地の横には川崎重工岐阜工場が軒を連ねており、航空祭の際には川重エプロンも駐機スペースとして提供され、今年もC-2初号機は展示飛行前には見当たらなかったが、川重エプロンから出てきたようだ。ブルーインパルスも以前の航空祭では展示飛行後のウォークバックを行わずに会場前をタクシーバックして川重エプロンに帰っていくこともあった。

 ブルーインパルスが運用しているT-4の“生家”でもある川重岐阜であるが、航空祭では名鉄三柿野駅から普段は歩道橋を渡って岐阜基地に入るところを、川重岐阜の構内を臨時通路として通り、狭い歩道橋を渡ることなく航空祭に入場できる。その入場の際には川重のショールームに保存された726号機に会うことができ、岐阜基地航空祭の時のみのお楽しみだ。

画像: 川重岐阜のショールームに保存されている726号機(写真・今村義幸)

川重岐阜のショールームに保存されている726号機(写真・今村義幸)

 飛行開発実験団が配置される岐阜基地は、航空自衛隊保有機やミサイル等装備品の開発から試験、評価を行い、テストパイロットを育成するTPC(テスト・パイロット・コース)も担っている。歴史的に試作機や初号機の初飛行が行われ、運用期間中、様々な試験、評価をし続ける。そうした初号機を見られることも岐阜基地航空祭の醍醐味だ。

画像: F-2初号機の501号機(写真・伊藤宜由)

F-2初号機の501号機(写真・伊藤宜由)

 操縦するテストパイロットは機体の特性や限界を知り尽くしており、その展示飛行は性能試験などを取り込んだ独特のもので、また見ていて無理がなくうまい。控室前に掲示された解説には物理計算式が書かれたものがあり、理論を根拠に操舵していることが垣間見られる。
 これからの時代、コンピュータ制御の機体が大前提となり、その制御則はパラメータのキャリブレーションひとつで大きく飛行特性を変えることになる。これからの時代に益々重要性を増すのがテストパイロットの任務といえよう。
 JAXAの油井亀美也宇宙飛行士も元航空自衛官で飛行開発実験団のテストパイロットだったことで知られている。

 テストパイロットの展示飛行は、例えばF-15がよちよち歩きするような特異な性能評価試験を模擬したり、特性の異なるプロペラ機のT-7と戦闘機が編隊飛行を見せたり、お家芸の輸送機を含む異機種大編隊が披露された。テストパイロットはこれらのどの機種も操縦できる資格を持つ。

画像: 飛行特性の違う航空機たちを操るテストパイロットによる展示飛行(写真・伊藤宜由)

飛行特性の違う航空機たちを操るテストパイロットによる展示飛行(写真・伊藤宜由)

 小牧基地からはKC-767空中給油輸送機が飛来し空中給油デモを見せたほか、救難教育隊のU-125AとUH-60Jが飛来し救難展示を披露した。救難教育隊はこれも飛行特性の違うU-125AとUH-60Jが編隊を組んで登場し、飛行技術の高さを示していた。航空救難隊の映画「空へ - 救いの翼 RESCUE WINGS -」では旋回するUH-60Jの外側をU-125Aが飛行することによってこの編隊飛行を見せていた。

画像: 小牧基地から飛来した救難教育隊の展示飛行(写真・伊藤宜由)

小牧基地から飛来した救難教育隊の展示飛行(写真・伊藤宜由)

 民間からはウィスキーパパ競技曲技飛行チームの内海昌彦氏がエクストラEA-300L型機で参加し曲技飛行を展示した。

画像: ウィスキーパパ競技曲技飛行チーム・内海昌彦氏のエクストラEA-300L型機(写真・伊藤宜由)

ウィスキーパパ競技曲技飛行チーム・内海昌彦氏のエクストラEA-300L型機(写真・伊藤宜由)

 岐阜基地航空祭の会場は名鉄三柿野駅最寄りの北門から入る滑走路中央北側のエプロン地区北会場と、滑走路西側の正門から入る南会場の2ヵ所が設けられ、2会場はシャトルバスで行き来ができ、南側は展示基準点から逸れるものの順光で撮影できることや、今年は保存されている退役したF-4EJ初号機の地上展示が南会場で公開された。

画像: 南会場で公開されたF-4EJ初号機(写真・塚田圭一)

南会場で公開されたF-4EJ初号機(写真・塚田圭一)

 北会場では陸自からUH-1、AS-1が地上展示で参加し、空自からはC-130HやU-680Aも参加した。
 格納庫ではエンジン専用格納庫でエンジンが公開され整備員らが来客からの質問に答えていた。更に隣りの格納庫ではF-2戦闘機のミサイル等装備品が展示されていた。

画像: エンジン専用格納庫でF-2戦闘機のF110-IHI-129エンジンの説明をする整備員(写真・今村義幸)

エンジン専用格納庫でF-2戦闘機のF110-IHI-129エンジンの説明をする整備員(写真・今村義幸)

 その他、タレントのKAZARIさんらが一日基地司令に就任し航空祭を盛り上げ、ブルーインパルスのメンバーとの交流の様子も同氏のXなどで発信されていた。KAZARIさんは防衛省の広報アドバイザーに就任し、先のブルーインパルスが飛んだF1日本グランプリでも自衛隊ブースに応援に来ていた。

画像: 一日基地司令を務めたタレントで防衛省広報アドバイザーのKAZARIさん(写真・伊藤宜由)

一日基地司令を務めたタレントで防衛省広報アドバイザーのKAZARIさん(写真・伊藤宜由)

北会場ハイライト

南会場ハイライト

岐阜基地航空祭2023 ブルーインパルス第3区分課目構成

①インディビジュアル・テイクオフ&ダーティーターン
②ローアングル・キューバン・テイクオフ、ロールオン・テイクオフ【同時】
③ファン・ブレイク
④4ポイント・ロール
⑤チェンジ・オーバー・ターン
⑥インバーテッド&コンティニュアス・ロール
⑦サンライズ
⑧インバーテッド・ロール
⑨スロー・ロール
⑩レター・エイト
⑪ダブル・ナイフ・エッジ
⑫トレイル・トゥ・ダイヤモンド・ロール
⑬オポジット・コンティニュアス・ロール
⑭4シップ・インバート
⑮ビッグ・ハート(スラント)
⑯シングル・クローバー・リーフ・ターン
⑰オポジット・トライアングル
⑱ツリー・ダーティー・ローパス(クリスマス・ツリー・ローパス)
⑲ボントン・ロール
⑳グランド・クロス・ローパス
㉑フェニックス・ローパス
㉒タック・クロスⅡ
㉓ローリング・コンバット・ピッチ
㉔コーク・スクリュー

岐阜基地航空祭2023 ブルーインパルス展示飛行メンバー

1番機 川島良介3空佐(飛行班長)、後席・江尻卓2空佐
2番機 東島公佑1空尉、後席・松永大誠1空尉
3番機 藏元文弥1空尉
4番機 手島孝1空尉、後席・佐藤裕介1空尉
5番機 藤井正和3空佐、後席・林幸一郎3空佐
6番機 加藤拓也1空尉
地上指揮官 名久井朋之2空佐(飛行隊長)
ナレーター 江口健3空佐

《取材・撮影》ブルーインパルスファンネット
今村義幸(文)/伊藤宜由/塚田圭一/Yuka Miyamoto


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