令和5年(2023年)10月15日(日)、福岡県遠賀郡にある空自芦屋基地で芦屋基地航空祭が開催された。ブルーインパルスも参加し、展示飛行の最後を務めた。
 ブルーインパルスにとっては第2の故郷ともいえる芦屋基地。平成23年(2011年)3月11日の東日本大震災当日に、九州新幹線開通記念行事のために芦屋基地に展開していたブルーインパルスは、松島基地に帰ることがかなわず、その後2年間を芦屋基地で過ごした。今年令和5年は芦屋基地から松島基地に帰還し10周年となり、機体にその印をつけてツアーをしている。

画像: 機体の左舷に付けられた松島基地帰還10周年のマークは、トートバッグやTシャツにもなって販売され、人気となっている

機体の左舷に付けられた松島基地帰還10周年のマークは、トートバッグやTシャツにもなって販売され、人気となっている

 昨年の芦屋基地航空祭では、コロナ禍後初の第1区分を披露した。6機のパイロット全員が福岡県出身者で、6人全員が練成訓練期間中に航空祭を経験したことのないメンバーだった。通常であれば練成中にツアーについて回り、その空気を感じ取ってデビューに向かっていくところを、手探りで航空祭が再開された年だった。
 リードソロ(第1単独機)の5番機・江口健3空佐(福岡県久留米市出身)もその中の一人だ。あれから1年、松島基地帰還10周年の節目となる芦屋基地航空祭で、江口3空佐がラスト展示を迎えた。昨年に続き第1区分の曲技飛行を展示し、江口3空佐は有終の美を飾った。

画像: 展示飛行前のプリタクシーチェックをする5番機。後席に乗る次期5番機の藤井正和3空佐のヘルメットに逆さになった「5」の字が見える。背面飛行を多用する5番機のパイロットはOR(任務待機)になると『逆さ5』を付ける。藤井3空佐がORになり交代が近づいた証しだ

展示飛行前のプリタクシーチェックをする5番機。後席に乗る次期5番機の藤井正和3空佐のヘルメットに逆さになった「5」の字が見える。背面飛行を多用する5番機のパイロットはOR(任務待機)になると『逆さ5』を付ける。藤井3空佐がORになり交代が近づいた証しだ

ブルーインパルスが第1区分の曲技飛行を実施

 芦屋基地航空祭当日の天気予報は晴れであったが、早朝には通り雨が降って、オープニングフライトの8:40頃は曇り空でのスタートだった。ブルーインパルスが始まる11:00頃には点在する雲が残ったものの晴天となった。当日同刻の飛行場実況気象通報式(METAR)にはSCT(スキャター、全天の3/8~4/8)の雲が4000ftに残っていた。
 ブルーインパルスは雲を避けるために課目構成を変更し、第1区分の展示飛行を実施した。4000ftから5500ftに達するループやバレルロールを使った課目が水平系の課目に置き換えられたほか、バーティカル・キューバン8やスター・クロスはスキップされたが、5番機ソロ課目のバーティカル・クライム・ロールや6機編隊課目のフェニックス・ループなど代表的課目が実施された。
 

令和5年度芦屋基地航空祭 第1区分課目構成

①インディビジュアル・テイクオフ・ダーティーターン
②ローアングル・キューバン・テイクオフ、ロールオン・テイクオフ【同時】
③ファン・ブレイク
④4ポイント・ロール
⑤チェンジ・オーバー・ターン
⑥インバーテッド&コンティニュアス・ロール
⑦レベル・サンライズ(●サンライズ)
⑧バーティカル・クライム・ロール
⑨シングル・クローバー・リーフ・ターン(●チェンジ・オーバー・ループ)
⑩カリプソ
⑪レター8
⑫オポジット・コンティニュアス・ロール
⑬4シップ・インバート
⑭バーティカル・キューピッド
⑮ロール・バック・トゥ・デルタ(●ライン・アブレスト・ロール)
⑯360°&ループ
⑰ワイド・トゥ・デルタ・ループ
⑱デルタ360°ターン【レフト】(●デルタ・ロール)
⑲フェニックス・ループ
⑳デルタ・ローパス★
㉑ボントン・ロール
(バーティカル・キューバン8)
(スター・クロス)
㉒タック・クロスⅡ(●タック・クロスⅠ)
㉓ローリング・コンバット・ピッチ
㉔コーク・スクリュー
 
()は標準的な第1区分構成からスキップされた課目
(●)は第1区分から第3区分または第4区分に置き換えられた課目
★は標準的な第1区分課目構成に追加された課目

ブルーインパルス第1区分ハイライト

画像: エンジンスタートを終えランディングライトを点灯したブルーインパルス。芦屋基地航空祭といえば一昔前は穴場的航空祭で最前列も余裕で取ることができたが、ぎっしりと人で埋まって隙間もない

エンジンスタートを終えランディングライトを点灯したブルーインパルス。芦屋基地航空祭といえば一昔前は穴場的航空祭で最前列も余裕で取ることができたが、ぎっしりと人で埋まって隙間もない

画像: 5番機のローアングル・キューバンと6番機のロールオン・テイクオフは編隊離陸で同時に実施された

5番機のローアングル・キューバンと6番機のロールオン・テイクオフは編隊離陸で同時に実施された

画像: 5番機の4ポイント・ロール。離陸後に天候偵察していた5番機が最初に会場に入ってくるソロ課目だ

5番機の4ポイント・ロール。離陸後に天候偵察していた5番機が最初に会場に入ってくるソロ課目だ

画像: 5番機のインバーテッド&コンティニュアス・ロール。背面飛行で会場正面を通過した5番機が急上昇して、半宙返りで折り返し、3回横転するコンティニュアス・ロールで進入方向へ戻っていく

5番機のインバーテッド&コンティニュアス・ロール。背面飛行で会場正面を通過した5番機が急上昇して、半宙返りで折り返し、3回横転するコンティニュアス・ロールで進入方向へ戻っていく

画像: 5番機のバーティカル・クライム・ロール。高度9000ftまで4.25回横転して垂直上昇する、この日はスキップされたが同じく5番機によるバーティカル・キューバン8とともに、ブルーインパルスの第1区分で最も高高度に達するソロ課目だ

5番機のバーティカル・クライム・ロール。高度9000ftまで4.25回横転して垂直上昇する、この日はスキップされたが同じく5番機によるバーティカル・キューバン8とともに、ブルーインパルスの第1区分で最も高高度に達するソロ課目だ

画像: 5番機と6番機が垂直にハートを描き、4番機が矢を射抜くバーティカル・キューピッド(写真・伊藤宜由)

5番機と6番機が垂直にハートを描き、4番機が矢を射抜くバーティカル・キューピッド(写真・伊藤宜由)

画像: 360°ターンと360°ループを立て続けに見せる5番機の360°&ループ

360°ターンと360°ループを立て続けに見せる5番機の360°&ループ

画像: デルタ・ロールを置き換えて実施された左旋回のデルタ360°ターン。福島で実施した右旋回のデルタ360°ターンとは逆のレア課目だ(写真・伊藤宜由)

デルタ・ロールを置き換えて実施された左旋回のデルタ360°ターン。福島で実施した右旋回のデルタ360°ターンとは逆のレア課目だ(写真・伊藤宜由)

画像: フェニックス・ループは展示基準点をやや過ぎて開始された。5500ftに達するフェニックス・ループは4000ftの雲を避けて実施された(写真・伊藤宜由)

フェニックス・ループは展示基準点をやや過ぎて開始された。5500ftに達するフェニックス・ループは4000ftの雲を避けて実施された(写真・伊藤宜由)

画像: 今年のブルーインパルスの特長ともいえるハイスピードで低高度のデルタ・ローパスがフェニックス・ループに続き実施された(写真・伊藤宜由)

今年のブルーインパルスの特長ともいえるハイスピードで低高度のデルタ・ローパスがフェニックス・ループに続き実施された(写真・伊藤宜由)

画像: 24課目の最後を飾った5番機と6番機によるコーク・スクリュー。中心を飛ぶ5番機はここでも背面飛行だ。ヘルメットのポジション番号が『逆さ5』になっているのもうなずける

24課目の最後を飾った5番機と6番機によるコーク・スクリュー。中心を飛ぶ5番機はここでも背面飛行だ。ヘルメットのポジション番号が『逆さ5』になっているのもうなずける

画像: T-4から降機する江口3空佐。ラスト展示を迎えT-4に何か語りかけているようにも見えた

T-4から降機する江口3空佐。ラスト展示を迎えT-4に何か語りかけているようにも見えた

画像: 降機後にウォークバックする江口3空佐(奥)と6番機の加藤拓也1空尉

降機後にウォークバックする江口3空佐(奥)と6番機の加藤拓也1空尉

画像: 令和5年度芦屋基地航空祭でラスト展示を迎えた江口3空佐。 着隊した頃はコロナ禍で航空祭がのきなみ中止の中、東京五輪も延期になり、T-4のエンジン改修で訓練に使える機数も減った時期だった。そこからブルーインパルスを東京五輪や再び航空祭で飛ばした功労者の一人だ。 3年間、本当にお疲れ様でした!! 江口健/TACネーム“GUCCI”/3等空佐/5番機 航空学生59期/福岡県久留米市出身/伝習館高校卒 在隊期間/令和2年(2020年)10月1日~ 令和5年10月15日現在(1109日)

令和5年度芦屋基地航空祭でラスト展示を迎えた江口3空佐。
着隊した頃はコロナ禍で航空祭がのきなみ中止の中、東京五輪も延期になり、T-4のエンジン改修で訓練に使える機数も減った時期だった。そこからブルーインパルスを東京五輪や再び航空祭で飛ばした功労者の一人だ。
3年間、本当にお疲れ様でした!!

江口健/TACネーム“GUCCI”/3等空佐/5番機
航空学生59期/福岡県久留米市出身/伝習館高校卒
在隊期間/令和2年(2020年)10月1日~
令和5年10月15日現在(1109日)

令和5年度芦屋基地航空祭 ブルーインパルス展示飛行メンバー

1番機 川島良介3空佐(飛行班長)、後席・江尻卓2空佐
2番機 東島公佑1空尉
3番機 藏元文弥1空尉、後席・林幸一郎3空佐(総括班長)
4番機 手島孝1空尉、後席・佐藤裕介1空尉
5番機 江口健3空佐、後席・藤井正和3空佐
6番機 加藤拓也1空尉
ナレーター 松永大誠1空尉

展示飛行、地上展示、ファンシードリル展示ハイライト

 芦屋基地所属の第13飛行教育団、通称“レッドドルフィン”によるT-4大編隊や芦屋救難隊による救難展示飛行をはじめ、芦屋基地近隣の防府北基地からT-7、新田原基地からF-15、築城基地からF-2がリモートで展示飛行を行い、ブルーインパルスが最後に曲技飛行を展示した。
 飛行教育で使われる初等練習機から戦闘機やブルーインパルスまで幅広く、またバランス良く航空自衛隊の主要装備品が見られる航空祭だった。
 ブルーインパルスの展示飛行に続いては、航空学生78期によるファンシードリル展示が実施された。
 地上展示機としては陸自AH-64D、海自T-5も参加し、空自からはC-1、CH-47J、T-400、T-7等が参加した。

8:40 オープニングフライト T-4x2機、U-125Ax1機(芦屋基地所属機)
9:30~9:45 救難展示飛行 U-125Ax1機、UH-60Jx1機(芦屋救難隊)
9:50~10:00 T-7x2機(防府北基地・第12飛行教育団)
10:05~10:30 T-4x8機 レッドドルフィン(芦屋基地・第13飛行教育団)
10:35~10:45 F-15DJx2機(新田原基地・第23飛行隊)
10:50~11:00 F-2Ax1機(築城基地・第8飛行隊)
11:00~12:25 T-4x6機 ブルーインパルス(松島基地・第11飛行隊)

芦屋基地関係者の尽力に感謝

画像: 芦屋基地関係者の尽力に感謝

 航空祭へと向かう羽田-福岡便の飛行機から遠賀川河口沿いにある芦屋基地が見えた。芦屋基地から15km(8海里)圏内を10000ftから8000ftへ降下しながら福岡空港へのアプローチで通過した。ブルーインパルスが曲技飛行で使用する空域の一角だ。
 12年前の東日本大震災以後、10年前まで、ブルーインパルスはここ芦屋基地にいた。その間の移動訓練では、飛行場訓練は築城基地までリモートで飛んで行っていた。福岡空港に降り立って感じるのはそのトラフィックの過密さだ。そのアプローチルートが通る芦屋基地の上空では頻繁に飛行場訓練をすることができなかった。
 航空祭の週末だけでもその調整は大変な尽力を伴うものだろう。そのご尽力に感謝申し上げるとともに関係者とファンの期待に応えたブルーインパルスを称賛したい。

 なお、ご自身もかつてブルーインパルスの1番機(飛行班長)として芦屋基地航空祭で飛び、ブルーインパルスが12年前に芦屋基地で移動訓練を開始した際には築城基地勤務で飛行場アクロバット訓練の推奨にも関わった吉田信也元2空佐が、ブルーインパルスファンネットFacebookで今年の第1区分の難しさについて説明してくれた。こちらも是非参考にしていただきたい。

《取材・撮影》ブルーインパルスファンネット
今村義幸(文)/伊藤宜由/Yuka Miyamoto


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