翌日に松島基地航空祭を控えた令和5年(2023年)8月26日(土)、宮城県東松島市のJR矢本駅前で東松島夏まつりが開催され、ブルーインパルスが展示飛行を実施した。

松島基地のある矢本の地名の由来

 ブルーインパルスといえば東松島市の矢本、矢本といえばブルーインパルス。松島基地にブルーインパルスを見に行くことを聖地松島詣でと言った。聖地松島の玄関口が矢本駅だ。
 矢本の地名は、源義経が岩手の平泉で自刃する際に、愛鷹八本を解き放ち、矢本の滝山公園辺りに飛来したことに由来する。鷹は本(もと)とカウントするという。八本が矢本になったのだ。
 明治の時代には鷹来村という名前だった。いまでも矢本IC北側の鷹来の森運動公園にその名前が残っている。鷹来の森運動公園には、ブルーインパルスが10年前に東日本大震災で避難していた芦屋基地から帰還した際に使っていた仮設格納庫が移築され、屋内運動場として活用されている。
 矢本とブルーインパルスの絆は強く結ばれ、東松島夏まつりの前身となる矢本夏祭りの時代から、このお祭りと松島基地航空祭はセットで開催されていた。
 矢本の地名やお祭りの経緯については、「矢本銘菓ブルーインパルス」を製造販売する松島基地正門手前にある大勇堂さんのブログに詳しい。

夏祭りと松島基地航空祭の週末

 平成16年(2004年)までは松島基地航空祭は7月開催だった。平成16年は土日二日開催だった。サクラが初披露されたのもその土曜開催日であった。矢本夏祭りは土曜日の前夜祭となっていた。
 平成17年(2005年)の航空祭は日曜日のみで、8月開催となった。
 東松島夏まつりとなって展示飛行も記録されているのは平成18年(2006年)からだ。平成17年に飛行班長となった吉田信也3空佐(当時)に8月開催の経緯を聞くと、展示飛行の有無に関わらず航空祭と夏祭りがセットで開催されてきたという。

 元々矢本夏祭りと松島基地航空祭はセットで平成16年(2004年)まで7月末の土日の開催でした。これは、8月の場合はお盆休み(夏休暇)が中旬なので、その前後だと訓練機会が限られるため技量維持を含めた安全面を配慮してのことでした。
 しかしながら7月末の開催は平成16年以前の気象統計を調べてみると、平成15年の矢本付近を震源地とする宮城県北部地震も含め、この時期特有の海霧(シーフォグ)や低雲(ロークラウド)の影響で所望の展示飛行は殆ど出来ていなかったようです。このため当時の西村弘文2空佐(飛行隊長)及び宮川範之3空佐(飛行班長)と相談し、平成17年(2005年)は8月末の航空祭開催を4空団に対して強く要望しました。但し、団としては「矢本夏祭り」との兼ね合いもあり、悩みどころだったようですね。
 ところが当の矢本町に話を持っていったところ快く受けてくれたそうで、それから現在に至っております。さすが「聖地!」ですね。その流れで東松島市誕生以降も、航空祭とセットで矢本夏祭り=東松島夏祭りになっているのです。
 また、懸念されていた隊員等の夏休暇も早めに取らせれば、十分訓練や準備に支障なしと解りました。

ブルーインパルス通りに沿って繰り広げられた展示飛行

 東日本大震災やコロナ禍など多難な道のりを越えて、制限なしの週末がやっとやってきた。ブルーインパルスは震災後の避難先から松島基地に帰還して10周年だ。平成17年(2005年)に東松島市制となってから15年、令和2年(2020年)には、矢本駅から松島基地若松門までの道が「ブルーインパルス通り」として、市制施行15周年記念事業として整備された。
 それまで海岸と平行に伸びる矢本の商店街に沿って飛んだ展示飛行は、海岸から直角に矢本駅に向かってくるブルーインパルス通りに沿って飛ぶようになった。
 「奥松島の荘厳な景観と海、青空をブルーインパルスが舞う『青の街』」を掲げる東松島市はこの日、快晴の真夏日となった。青い空の下、ブルーインパルスは全11課目の編隊連携機動飛行を披露した。

画像: ①フェニックス・ローパス 松島基地若松門方向からブルーインパルス通りに沿ってフェニックス・ローパスで展示飛行が始まった。矢本駅前のデザインマンホールは松島基地帰還後に市民が復興を感じられたことから設置されたという

①フェニックス・ローパス
松島基地若松門方向からブルーインパルス通りに沿ってフェニックス・ローパスで展示飛行が始まった。矢本駅前のデザインマンホールは松島基地帰還後に市民が復興を感じられたことから設置されたという

画像: 商工会議所前には、オリンピック聖火到着式が松島基地で開催されたことから、新しいデザインマンホールが設置された。このデザインはまだ一枚しかないという(写真・伊藤宜由)

商工会議所前には、オリンピック聖火到着式が松島基地で開催されたことから、新しいデザインマンホールが設置された。このデザインはまだ一枚しかないという(写真・伊藤宜由)

画像: ②デルタ360°ターン 仙台方向からの進入で6機の360°旋回を見せるブルーインパルス。矢本駅前にある健康増進センター「ゆぷと」前の広場もお祭り会場となった。東松島市に移住し東松島町おこし隊のメンバーとなったサンドアーティスト・保坂俊彦氏によるブルーインパルスの砂像が展示された

②デルタ360°ターン
仙台方向からの進入で6機の360°旋回を見せるブルーインパルス。矢本駅前にある健康増進センター「ゆぷと」前の広場もお祭り会場となった。東松島市に移住し東松島町おこし隊のメンバーとなったサンドアーティスト・保坂俊彦氏によるブルーインパルスの砂像が展示された

画像: ③ポイント・スター・ローパス ふたたびブルーインパルス通りに沿って飛行してきた。以前の矢本の商店街に沿った展示飛行と基準となる展示ラインが変わり、ブルーインパルス通りは新しい東松島市の顔となった。街灯には青い旗と東松島夏まつりの幟(のぼり)が立った

③ポイント・スター・ローパス
ふたたびブルーインパルス通りに沿って飛行してきた。以前の矢本の商店街に沿った展示飛行と基準となる展示ラインが変わり、ブルーインパルス通りは新しい東松島市の顔となった。街灯には青い旗と東松島夏まつりの幟(のぼり)が立った

画像: ④スワン・ローパス 石巻方向から矢本の商店街に沿って飛んでくるブルーインパルス。海岸と平行の往年の展示ラインだ。この商工会議所前の交差点では多くの人がブルーインパルスを見上げた(写真・伊藤宜由)

④スワン・ローパス
石巻方向から矢本の商店街に沿って飛んでくるブルーインパルス。海岸と平行の往年の展示ラインだ。この商工会議所前の交差点では多くの人がブルーインパルスを見上げた(写真・伊藤宜由)

画像: ⑤ナイフ・エッジ ここで6機編隊が分離され、5番機ソロとなった。ブルーインパルス通りと平行に海岸から直角に進入した(写真・伊藤宜由)

⑤ナイフ・エッジ
ここで6機編隊が分離され、5番機ソロとなった。ブルーインパルス通りと平行に海岸から直角に進入した(写真・伊藤宜由)

画像: ⑥チェンジ・オーバー・ターン ナイフ・エッジを追い掛けるように海側から進入し、ブルーインパルス通り上空で隊形変換し、石巻方向へ旋回する5機。矢本駅前交差点の角にある、やもとタクシー(写真中央)の屋上が飛行指揮所となった

⑥チェンジ・オーバー・ターン
ナイフ・エッジを追い掛けるように海側から進入し、ブルーインパルス通り上空で隊形変換し、石巻方向へ旋回する5機。矢本駅前交差点の角にある、やもとタクシー(写真中央)の屋上が飛行指揮所となった

画像: ⑦デルタ・ローパス 北東方向から矢本駅上空を通過し、ブルーインパルス通りに斜めに入ってくるブルーインパルス。斜めの進入は次のサクラへの序章だ

⑦デルタ・ローパス
北東方向から矢本駅上空を通過し、ブルーインパルス通りに斜めに入ってくるブルーインパルス。斜めの進入は次のサクラへの序章だ

画像: ⑧サクラ 矢本の商店街と平行にひとつ矢本駅側を通る国道45号線沿いのゆぷとの東隣にある清水畳店前から清水さんご家族と一緒にサクラを見上げた。清水畳店はブルーインパルス柄の畳縁と使った畳を自衛隊官舎などに収めている。その畳縁もまたブルーインパルスが帰還して、訓練の音を聞いて、日常が戻ってきたと実感され、新たにデザインされたものだ

⑧サクラ
矢本の商店街と平行にひとつ矢本駅側を通る国道45号線沿いのゆぷとの東隣にある清水畳店前から清水さんご家族と一緒にサクラを見上げた。清水畳店はブルーインパルス柄の畳縁と使った畳を自衛隊官舎などに収めている。その畳縁もまたブルーインパルスが帰還して、訓練の音を聞いて、日常が戻ってきたと実感され、新たにデザインされたものだ

画像: 清水畳店では丈夫な畳縁を使ったバッグなどのブルーインパルスグッズも手掛けている。丈夫で硬すぎず柔らかすぎず肌触りの良い素材でカメラストラップなどもある

清水畳店では丈夫な畳縁を使ったバッグなどのブルーインパルスグッズも手掛けている。丈夫で硬すぎず柔らかすぎず肌触りの良い素材でカメラストラップなどもある

画像: ⑨ビッグ・ハート 海側からブルーインパルス通りに向かって大きなハートを描いた。6機課目のサクラから5番機と6番機が分離して2機で描いた(写真・伊藤宜由)

⑨ビッグ・ハート
海側からブルーインパルス通りに向かって大きなハートを描いた。6機課目のサクラから5番機と6番機が分離して2機で描いた(写真・伊藤宜由)

画像: ⑩720°ターン ビッグ・ハートから5番機が単機分離し、ソロで8の字旋回の720°ターンを実施した。清水畳店の清水さんご夫婦も見上げている

⑩720°ターン
ビッグ・ハートから5番機が単機分離し、ソロで8の字旋回の720°ターンを実施した。清水畳店の清水さんご夫婦も見上げている

画像: ⑪レベル・サンライズ 最後は海側からの5機レベル・サンライズで締めくくった。健康増進センター「ゆぷと」前には、毎年3月11日から5月5日まで東松島市の大曲浜で掲揚される、青い鯉のぼりプロジェクトによる青い鯉のぼりの掲揚もなされた(写真・西岡幹宏)

⑪レベル・サンライズ

最後は海側からの5機レベル・サンライズで締めくくった。健康増進センター「ゆぷと」前には、毎年3月11日から5月5日まで東松島市の大曲浜で掲揚される、青い鯉のぼりプロジェクトによる青い鯉のぼりの掲揚もなされた(写真・西岡幹宏)

ブルーインパルスJr.も登場し、ブルーインパルスメンバーによる握手会やフィナーレの花火まで盛大に盛り上がった東松島夏まつり

画像: ブルーインパルスJr.の展示飛行

ブルーインパルスJr.の展示飛行

 ブルーインパルスの展示飛行に次いでは、ブルーインパルス通りの松島基地寄りとなる自衛隊エリアで、ブルーインパルスJr.が4機での展示飛行(4台での展示走行)を披露した。

画像: 写真中央手前から奥に向かって、名久井隊長、江尻2空佐、佐藤1空尉、松永1空尉

写真中央手前から奥に向かって、名久井隊長、江尻2空佐、佐藤1空尉、松永1空尉

 ブルーインパルスJr.に続いては、ブルーインパルスから名久井朋之2空佐(飛行隊長)、江尻卓2空佐、佐藤裕介1空尉、松永大誠1空尉が、自衛隊エリアでのファンとの握手会に対応した。

画像: フィナーレ花火

フィナーレ花火

 夜19:30からは横風滑走路のRWY33終端辺りを打ち上げ場所としてフィナーレ花火が20分間ほど打ち上げられた。松島基地と矢本の市街地の間を抜ける県道247号線は通行止めとなり、花火の観覧会場となった。
 ブルーインパルス通りと矢本の商店街のお祭り会場では様々なイベントが開催され、フィナーレ花火前には4年ぶりとなる「八鷹みこし」が練り歩いたほか、20時まで飲食類などの出店が開かれ、行列が出来ていた。

《東松島夏まつり2023 展示飛行実施課目》

①フェニックス・ローパス
②デルタ360°ターン
③ポイント・スター・ローパス
④スワン・ローパス
⑤ナイフ・エッジ
⑥チェンジ・オーバー・ターン
⑦デルタ・ローパス
⑧サクラ
⑨ビッグ・ハート
⑩720°ターン
⑪レベル・サンライズ

《東松島夏まつり2023 展示飛行メンバー》

1番機 川島良介3空佐(飛行班長)、後席・江尻卓2空佐
2番機 東島公佑1空尉
3番機 藏元文弥1空尉
4番機 手島孝1空尉
5番機 江口健3空佐、後席・藤井正和3空佐
6番機 加藤拓也1空尉
地上統制官 名久井朋之2空佐(飛行隊長)
ナレーター 佐藤裕介1空尉

《取材・撮影》ブルーインパルスファンネット
今村義幸(文)/伊藤宜由/Yuka Miyamoto
《写真提供》西岡幹宏


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