過去最大6兆8219億円を計上

 【2022年12月28日(水)1面】 政府は12月23日の閣議で、令和5年度予算案を決定した。防衛関係費は過去最大となる6兆8219億円(SACO=米軍再編=関係経費などを含む)を計上。4年度は「防衛力強化加速パッケージ」の下、当初予算を3年度補正予算と一体として編成し、6兆円規模を確保したが、5年度は「防衛力抜本的強化『元年』予算」とし、当初予算のみで岸田文雄首相が掲げる「防衛費の相当な増額」を達成した。同16日に閣議決定された国家安全保障戦略などの「安保3文書」では、今後5年間の防衛費の総額を前回の計画の1.5倍以上となる約43兆円に増額し、9年度までに国内総生産(GDP)比2%を目指すことを明記。日本の安全保障政策が歴史的転換を迎え、「防衛力の抜本的強化」へ大きく踏み出した。(「防衛力強化」取材班)

 今回の予算は、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面しているとの認識の下、「国家防衛戦略」に基づき、防衛力の構築に向けた初年度で必要な経費を積み上げた。

 歳出予算は、整備計画対象経費として前年度比で1兆4213億円(27.4%)増となる6兆6001億円を計上。SACOを含めると6兆8219億円となった。

画像1: 【5年度予算案】防衛力増強に向け「相当な増額」実現

安保3文書改定受け、「反撃能力」へ装備品を確保

 安保3文書の改定で示された「反撃能力」の保有に向け、米国製巡航ミサイル「トマホーク」の取得や、長距離ミサイルを含む弾薬の確保のために所要の費用を計上し、防衛体制を抜本的に強化する方針。5月に行われた米バイデン大統領との日米首脳会談で岸田首相が表明した「防衛費の相当な増額」=メモ参照=を確保した格好だ。

【メモ】■日米首脳会談 岸田首相とバイデン大統領は、同盟の抑止力、対処力を強化することへのコミットメントを新たにした。岸田首相は、ミサイルの脅威に対抗する能力を含め、国家の防衛に必要なあらゆる選択肢を検討する決意を表明。日本の防衛力を抜本的に強化し、その裏付けとなる「防衛費の相当な増額」を確保する決意を表明し、バイデン大統領はこれを強く支持した(令和4年5月23日・防衛省発表資料から)。

 歳出予算の推移は、平成26年度中期防の平均伸び率が0.8%増、31年度が1.1%増だったのに対し、今年度は26.3%増(SACO含む)という大幅な伸び率を達成し、11年連続の増加となった。

 注目されるのは、次年度以降の支払い分を示す「新規後年度負担」。整備計画対象経費として、契約ベースで前年度比2.9倍となる7兆676億円を計上している点だ。戦闘機や装甲車などの装備品の調達には通常、複数年度を要するが、早期配備に向けて契約をなるべく前倒しするための予算を確保した。

 将来の防衛力の中核となる7つの分野として「スタンド・オフ防衛能力」と「無人アセット防衛能力」などは大幅に予算を増やすとし、「統合防空ミサイル防衛能力」「領域横断作戦能力」(宇宙・サイバー含む)「指揮統制・情報関連機能」「機動展開能力・国民保護」「持続性・強靱(きょうじん)性」などについては所要額を確保した。

 また、これまで新たな中期防を踏まえた予算配分にあたり、幕や機関ごとに「旧正面」「旧後方」の2区分の配分額を個別に指示してきたが、新たな整備計画では防衛力整備事業を15の分野に分類し、幕・機関ごとに年度予算の配分を実施する=関連表。

画像: 安保3文書改定受け、「反撃能力」へ装備品を確保

 これにより、弾薬や維持整備、施設などへ偏ることなく予算配分を行うとしている。

弾薬整備、維持など「継戦能力」を大幅強化

 さらに、部品不足を解消して保有装備品の可動数を向上するため、装備品の維持整備(物件費・契約ベース)は前年度比1.8倍となる2兆355億円を計上した。

 継続的な部隊運用に必要な各種弾薬の取得(同)は、前年度比3.3倍となる8283億円を計上し、持続性・強靭性を抜本的に強化する=グラフ。

画像: 弾薬整備、維持など「継戦能力」を大幅強化

 10月6日の衆院本会議で岸田首相は、「自衛隊の継戦能力、装備品の可動数は必ずしも十分ではない。十分な数量の弾薬の確保や装備品の可動数の増加が重要」と弾薬の不足に言及していた。

 施設整備(物件費・契約ベース)は「自衛隊が活動する基盤」とし、前年度比3.3倍となる5049億円を計上して、自衛隊施設の強靭化を加速させる方針だ。

 このほか、日用品や宿舎など隊員の生活・勤務環境では、前年度比2.5倍となる2693億円を計上。特に部隊からのニーズも高い「空調」は、前年度の62億円から424億円となり、防衛省は「最大限対応した」と強調する。

予算の基本的な考え方
 ◯「防衛力整備計画」においては、「国家防衛戦略」に従い、宇宙・サイバー・電磁波を含む全ての領域における能力を有機的に融合し、平時から有事までのあらゆる段階における柔軟かつ戦略的な活動の常時継続的な実施を可能とする多次元統合防衛力を抜本的に強化し、相手の能力と新しい戦い方に着目して、5年後の2027年度(令和9)までに、わが国への侵攻が生起する場合には、わが国が主たる責任をもって対処し、同盟国などの支援を受けつつ、これを阻止・排除できるように防衛力を強化することとしている。
 ◯このように抜本的に強化された防衛力の構築に向けた初年度において、必要な経費を積み上げたもの。

→事項要求「反撃能力」の保有などで防衛力を強化


【5年度予算案 記事】
事項要求「反撃能力」の保有などで防衛力を強化
防衛関係費 主な新規事業

画像2: 【5年度予算案】防衛力増強に向け「相当な増額」実現

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