【2022年10月25日(火)1面】
9月8日、千葉地本船橋出張所(所長・染野3空佐)は、未来を担う有望な人材の訪問に沸いていた。
薬剤科幹部候補生に合格した東邦大学薬学部6年生の女性2人に対し、染野所長と主任広報官の中満良浩海曹長によるフォロー研修が実施された。国家試験はこれからだが、入隊後に向けた心構えなどを伝える「つなぎ広報」だ。
同職種の令和3年度の採用予定者数は、陸海自で各6人。空自はわずか3人という狭き門。にもかかわらず、船橋所から陸2人、空1人の合格者を輩出できることは大変な名誉。その大仕事を成し遂げたキーマンが中満曹長だ。
「私は特に何もしていません。彼女たちが頑張った成果。でも、一緒に戦えたといううれしさはある」
先輩が後押し チャレンジ精神で志願
中満曹長はそう謙遜(けんそん)するが、2人の大学生の言葉を借りれば、「中満曹長が親身になって相談に乗ってくれたおかげです」となる。2人は、改めて感謝の気持ちを伝えた。
2人のうち、空自の23歳は父が自衛官。「自衛官と医療系の道を視野に入れる中、薬剤官を目指した」、陸自の24歳は「自衛隊への興味がある一方で薬剤師への夢もあった。薬剤官なら両方の夢を実現できると思った」と、それぞれ夢の第一歩を踏み出した。
広報官となって2年目。きっかけは、かつて自身の担当だった広報官も頼りになったことと、広報官の先輩から「(中満曹長に)向いているよ」と勧められたことから。チャレンジの精神で広報官を志願した。
それまでは、下総航空基地で、哨戒機(P3C)のレーダーやコンピューターなど電子機器の整備に従事。海自所属でも船に乗らず、日々黙々と整備に打ち込んでいた。
「それまでの業務しか知らず、知識の分野が狭かったので、広報官になってから多くの知識・業務を覚えるのに苦労した」と当時を振り返る。
入隊した平成2年と現在では、自衛官の種目なども変わっていた。種目ごとに条件・受付期間・試験期間が異なるので、スケジュール管理も必須だ。誤った認識のままでは、志願者を導く広報官は務まらない。
「このままではいけない」。不惑を過ぎて、メモを取ることに力を注いだ。まずは「翌日、出勤時に作業する項目」を書き留めることから始めた。効率的なメモの取り方に関する本も読んだ。
地道な対応の積み重ねが今後につながる
陸自高等工科学校への受験者獲得のため、中学校への説明会にも力を入れた。中満曹長が担当する中学校だけでも17校。一人でも多くの対象者に志願してもらうため、全ての担当校に高工校に関する情報提供を行い、対象者の両親にも理解を深めてもらうよう努力した。合格に至らなかった対象者には「まだまだ先がある」とフォローを忘れない。「こうした地道な対応の積み重ねが、今後につながる」と強調した。
一つひとつ、目の前の業務に対し丁寧に取り組んだ結果、昨年度は39人の入隊者という大きな成果を上げた。方面総監から優秀広報官に選ばれ、4級賞詞を受賞。それでも「私の担当する地域は習志野駐もあり、自衛隊に対する関心が高い。やっていることはほかの広報官と変わりはない」とおごらない。
染野所長は「仕事に対してとにかく真面目。基本に忠実で、分からないことがあれば面倒くさがらず、誰にでも聞いて勉強する。安心して仕事を任せられる広報官」とお墨付きを与えた。
「受験者は今後の人生を左右する大切な時期を迎えている。受験者と同じ視点に立って、合格に向けてできる限りサポートしていきたい」と中満曹長。実直で一本気な男は力強く語った。
―中満曹長からのMessage 「受験者は今後の人生を左右する大切な時期を迎えている。受験者と同じ視点に立って、合格に向けてできる限りサポートしていきたい」