はじめに
総合防災コミュニティ「学防 manabou」運営メンバーの生活密着型ママ防災士セイコです。主婦と子どもの視点から考える「普通の暮らしの中の防災」を担当しています。
7月に入り、地元湘南も海開き。久しぶりに海の家が並ぶ夏の景色が戻ってきました。
私はまさにこの海岸地域で育ち、内陸地域に住んでいる今もよく散歩に訪れていますが、防災を意識するようになるまで数十年もの間、津波避難の心がまえなどありませんでした。
今ハザードマップを見ると、なにも考えずにこの土地に暮らしていたことに絶句します。
海岸散歩をしながら考えるのは、いつか経験することになるかもしれない津波避難のこと。
大好きな海で悲しい思いをしたくありませんし、楽しみに来てくださる観光の方にも後悔してほしくありません。
今回は、小田急片瀬江ノ島駅から片瀬海岸西浜(神奈川県)を中心に、私の海岸散歩の防災ポイントをご紹介したいと思います。
海辺の町で育った私ですが水が苦手で、海はもっぱら眺める専門。海水浴の安全策については無知なため、ここでは触れません。ご容赦ください。
駅で確認できる防災マップ
小田急片瀬江ノ島駅に到着して、最初に確認できる防災情報があります。
切符売り場の並びに、こじんまりと掲示されています。
このポスターには、周辺の避難場所や津波避難ビル、津波警報のサイレンのパターンが記されています。
広域避難場所は片瀬山公園。駅から約1.2㎞、徒歩30分とのこと。それなりの距離があることが分かります。
また片瀬山というだけあって登り坂になります。高齢の方や小さな子ども連れで急ぐには、少し厳しい道のりになるかもしれません。
さらに付け加えると、片瀬海岸西浜側からは境川にかかる橋を渡らないといけません。つまり西浜側は東浜側に比べて少し避難が難しくなることを想像します。
ちなみに私は西浜側で育ちました。もし当時、津波が発生していたら、私は逃げ遅れていたのではないかと思います。
片瀬海岸の津波被害想定
西浜を歩いていて何度か出会う案内板「津波避難場所案内図」です。
この案内板には、海岸と江の島周辺の浸水深・津波避難ビルなどが記載されており、かなり広い範囲に浸水の恐れがあることが分かります。
津波発生時に海岸付近にいては命の危険があることは一目瞭然。直ちに避難しなくてはなりません。
藤沢市民に配布されている防災ガイドブック「ふじさわ防災ナビ」によると、片瀬海岸の津波被害想定は次の通りです。
相模トラフ沿いの海溝型地震
最大津波高 11.5m
第一波到達 約6分後
南海トラフ地震
最大津波高 7m
第一波到達 約32分後
つまり数分~数十分の間に高い場所に到着して避難を完了しなければならないわけです。
津波避難の鉄則は一刻も早く「高い場所」へ。最初の揺れが収まったら迷うことなく即座に避難行動を起こすことが重要です。
先ほど見た駅のポスターによれば、広域避難場所の片瀬山公園へは徒歩30分。短時間で駆け上がるのは難しそうです。では、どうすればよいのでしょうか。
とにかく海から遠い地点を目指す水平避難より、海の近くでも高い場所に避難をする垂直避難を優先するという方法があります。
津波避難ビルはどこ??
小田急片瀬江ノ島駅から西浜へ向かうメインルートの横断歩道前に、方向案内が建てられています。「新江ノ島水族館」の方向案内に、クラゲのマークと津波避難ビルのマークが並んでいます。
藤沢市では、津波浸水想定区域を含む地域で、「基準水位より高いところに避難スペースを確保できる」建築物と津波避難ビルの協定を結んでいるそうです。
新江ノ島水族館に行ってみると、津波避難ビルであることを示すプレートがフェンスに掲示されていました。
片瀬海岸の津波避難ビルは、新江ノ島水族館だけではありません。
先ほど駅や海岸で見てきた案内板には、多くの津波避難ビルマークがついていました。国道134号線沿いには津波避難ビルの協定が結ばれているマンションなどもあります。
離れた場所から一見して津波避難ビルとわかるような大きな目印はありませんが、そばに行くと新江ノ島水族館と同じく津波避難ビルを示すマークを見つけることができます。
緊急事態とはいえ、マンションや学校に避難する際は、本来そこは不特定多数には開放されていない生活区域であることを忘れずにおきたいものです。
緊急時にも冷静な行動がとれるよう、事前に自分の避難の方法を確認し、心構えをしておくことが大切だと思います。
鵠沼海岸には津波避難タワーがあります
片瀬海岸西浜から砂浜をさらに西へしばらく歩き、鵠沼海岸エリアに入っていくと現れるのが、この展望台です。
この展望台は「津波避難タワーステージ」。12.5メートルの標高で設置されており、日中は展望台として開放されていて、誰でも自由に上がることができます。夜間は施錠されていますが、震度5弱以上の揺れを観測すると自動開錠されるシステムです。
重要ポイントは、ここが基本の避難場所ではないこと。
近くに津波避難タワーがあるから安心、ということではなく、もっと早くもっと内陸の津波避難ビルなどへ逃げるのが原則です。
「津波避難タワー」は万一逃げ遅れてしまった場合の、まさに最後の砦なのです。
地震が起きたら、即刻避難を!
地震の規模や震源地によっては、想定ほどの津波が発生しない場合もあります。けれども、津波発生の警報を待って、それから避難を決断するのでは逃げ遅れてしまいます。
想定は、あくまでも想定。津波は発生してみないと、その規模も高さも実際はわかりません。
地震が起きたら、すぐ避難。すぐ高いところへ。
避難してみたものの津波がこなかったなら、それは幸運であった、いつかの本番への訓練になったと思えば良いのです。
助かるチャンスがあるのに、小さな判断ミスで命を落とさないでください。
観光先の災害情報などを事前に確認される方はまだ多くないと思いますが、インターネットなどで調べることもできますし、せめて現地に着いてからでも避難場所などを確認してください。
津波フラッグ
藤沢市では、令和3年6月から導入されている「津波フラッグ」
音声での警報は、波音や風、ひとの声などで聞き取れない場合があります。赤と白が並んだこの津波フラッグは、聴覚に不安がある方でも津波警報を視覚的に認知することができる伝達手段です。
この旗が掲出されたら、津波発生の警報ですので、直ちに避難しなければなりません。
ただし、津波警報発令時に必ず掲出されるわけではないので要注意!
掲出されるのは、日の出から日没まで。また、掲出する人が津波から安全確保ができない場合は、掲出されないこともあります。
津波フラッグが出ていないから津波は発生しない、と考えるのは間違いです。
繰り返しになりますが、地震=津波→すぐ高いところへ、は鉄則!です。
その他の危険も知っていて
私が海に入らないせいで我が子たちも海に入らない子に育ててしまったため、海水浴の危険性には触れられない記事になりましたが、海水浴につきものの水難事故についても理解をしておく必要があると思います。
たとえば、海に入らない私でも知っている「離岸流(リップカレント)」。
海岸に打ち寄せた波が沖に戻るときに強い流れが発生する現象で、これに巻き込まれると、気づかぬうちに沖に流されてしまうのだそう。
ちょっと膝まで水にはいってみようか、という程度でも気をつけておいた方が良さそうです。
天候に不安があるときは海水浴は控える。遊泳禁止区間では泳がない、など基本のルールを守ることが大切です。
海の生き物にも注意を!
片瀬海岸には生き物の注意案内も数ヶ所に掲示されていました。
【カツオノエボシ】
生き物好きの私としては、一度実物に出会ってみたいものですが、触ってみたいのを我慢できるか自信がないので出会わない方がよさそうです。
死んでいても毒性は残っているそう。触手に猛毒があるので、本体を触らないだけでなく、その周囲にも気をつけましょう。
"青いビニール袋(みたいななにか)"を見つけても触らない。
好奇心いっぱいのお子さんには特に注意を払ってあげてください!
【トビ】
実は、津波避難の案内板より目についたのが、トビの警告。
駅構内に津波の情報は見つけられませんでしたが、トビの警告はありました。
本当にそんなにトビが狙っているの?と思われるかもしれませんが、経験者として証言します。トビは襲ってきます!
ぼんやりしていたり、おしゃべりに夢中になったりして、手元の食べ物への意識が散漫になった隙を見定めて、一気に滑空してきます。
トビの狙いは食べ物なのですが、鋭い爪や大きな体で襲われるわけですから、状況によってはけがをすることがあります。
砂浜だけでなく通りや橋でも、食べ物を持っているときは空からの視線にご注意ください!
ルールを守って、夏の楽しみを満喫してください!
掲示されている注意を意識するだけで、危険回避につながることは多いと思います。
ぜひ、お出かけ先のハザードマップ、防災情報を確認してください。
また何度でも、この身近な自然を楽しむことができるよう、安全を意識して遊びにいらしてください。
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