中国機は全体の72%
【2022年4月21日(木)1面】 2021年度(令和3年度)の航空自衛隊戦闘機による緊急発進(スクランブル)が1004回となり、16年度の1168回に次いで過去2番目に多かったことが、統合幕僚監部が4月15日に発表した「緊急発進実施状況」で分かった。前年度比でも300回近い大幅増。推定を含め、トップは依然として中国機が多く、全体の約72%を占めた。防衛省・自衛隊は、沖縄本島と宮古島間、東シナ海など、南西海空域で相変わらず活発な動きを見せる中国機への警戒をさらに強め、動向を注視する。
今回の対象期間は、2021年4月1日~22年3月31日。発表によると、緊急発進回数は過去最高だった16年度の1168回に次ぐ多さで、20年度(725回)からも大幅な増加。17年度から5年間では最も多かった。
中でも、国・地域別では推定を含めて中国機が722回とトップで全体の約72%。過去5年間で見ても最多となった。これにロシア機の266回(全体の約26%)が続いた。
方面隊別の状況では、北部航空方面隊が217回(前年同期比11回増)、中空が31回(同5回減)、西空が104回(同25回増)のほか、南西空は652回(同248回増)を数えた。南西空は過去5年で最多。
統幕によると、21年度は(1)中国機による相次ぐ沖縄本島と宮古島の間の通過(2)昨年11月の東シナ海、太平洋および日本海における中国「F6」爆撃機とロシア「Tu95」爆撃機の共同飛行(3)同12月の太平洋航行中の中国空母からの艦載戦闘機の発艦(4)2回にわたる新型の無人機の飛行-など計24回の事案を公表した。
中国機の主な特異飛行の具体例としては、昨年4月4日=「Y9」哨戒機1機が東シナ海から太平洋を往復飛行▽同月27日=「Z18」早期警戒ヘリコプター1機が大正島領空の北東約50キロの空域を飛行▽8月24日=「TB001」偵察/攻撃型無人機(推定)1機が東シナ海を飛行(対領空侵犯措置で初確認)-などがあった。
また、ロシア機は昨年9月12日に「An26」1機が北海道知床岬沖の領海上空を飛行したほか、今年3月2日にはヘリコプター1機が北海道根室半島沖の領海上空を飛行した領空侵犯の2回の公表をしたほか、推定を含め、中国機、ロシア機の中では情報収集機に対して多く緊急発進を実施したとしている。
さらに、昨年12月15日には、推定ロシア機8機が長距離にわたって随伴機などを含む形で日本海などを飛行したケースもあった。
岸信夫防衛大臣は4月15日の会見で、中国機の飛行について「多様化、高度化し、情報収集とみられる活動が活発だ。無人機の自国開発を急速に進める動きが見られる」と述べ、ロシア機に関しては「活発な活動を継続し、国際社会がウクライナ侵略に対応する中でも、傾向は変わりない」と指摘した。
3月の発進は54回
統合幕僚監部が4月15日に発表した「2021年度(令和3年度)緊急発進実施状況」によると、3月の発進回数は54回で2月の116回から大幅に減少した。
国・地域別(推定含む)では、やはり中国機が34回で最も多かった。
領空侵犯2件増え累計45件に
統幕は4月15日に発表した「2021年度(令和3年度)緊急発進実施状況」の中で、過去の外国機(推定含む)による領空侵犯の公表事例をまとめて紹介した。
発表によると、1967年8月19日にソ連(現ロシア)機1機が北海道礼文島上空を飛行したケース以降、2021年度の2件を含め計45件あった。
内訳はロシア(ソ連含む)が42件で最も多く、中国が2件、台湾が1件となっている。飛行は北海道北東、北西部、九州北西部、南西地域などが多かった。