はじめに
総合防災コミュニティ「学防 manabou」運営メンバーの生活密着型ママ防災士セイコです。主婦と子どもの視点から考える「普通の暮らしの中の防災」を担当しています。
学校に通うお子さんがいる家庭では、学年末の整理と新年度の準備で忙しいシーズンになりました。
今回は、新学期、特に新入学準備の中でも最も防災的な、子どもの防災頭巾とヘルメットについて考えてみます。
「防災頭巾」を使ったことがありますか?
神奈川県生まれ神奈川県育ちの私にとって、防災頭巾は学校生活にあって当たり前のものでした。
母校は幼小中高一貫校ということもあって高校まで途切れることなく防災頭巾と共に過ごし、防災頭巾というものは日本の学校生活には誰にとっても必須のアイテムなのだと思っていました。
そんな防災頭巾が、実は全国区の共通アイテムではないということを知ったのは数年前。そして最近、防災頭巾についての地域差をさらに実感して驚きました。
私は昨年から秋田県湯沢市のコミュニティFM局の番組内で防災談話のコーナーを毎週放送していただいているのですが、その中で、防災頭巾の話題に触れました。
番組のパーソナリティさんは秋田県在住。自転車通学時のヘルメットの規定はあっても、防災の観点からのヘルメットや防災頭巾を学校で使用した経験はないということで、お互いの県の防災頭巾に対する感覚差が大きく、ひとしきり盛り上がったのでした。
文部科学省「学校安全の推進に関する計画に係る取組状況調査[平成30年度実績]によると、「被災時に児童生徒等が学校に待機することを想定して備蓄を行っている学校」全国の調査対象校(※)49516校の調査結果について「ヘルメットや防災頭巾を備蓄」していたのは17460校、全体の半数以下の35.3%と記録されています。
(※幼稚園・幼保連携型認定こども園・小学校・中学校・義務教育学校・高等学校・中等教育学校・特別支援学校学校)
また同調査[平成27年度実績]では各県公立学校におけるヘルメット・防災頭巾の備蓄一覧を見ることができ、東京都・神奈川県の備蓄率が高めな一方、各県の状況は本当にばらばらで、思った以上に普及率は高くないということが分かります。
神奈川県内でも備えのない学校もあり、事実、我が子たちが通っている公立中学校・私立高校ではヘルメット・防災頭巾の常備はありません。
学校用品として当たり前だと思っていた私は、防災頭巾が小学校までという実態に驚かされました。
中高生は登下校時にかぶる帽子もありませんから、在校中に災害があっても頭部は無防備になるというのが現状なのですね。
そうはいっても「学校安全の推進に関する計画に係る取組状況調査」をみる限り、ヘルメット・防災頭巾の全国的な備蓄率は年々上がってきているようです。
長男の小学校入学用品をそろえた15年ほど前には、子ども用防災頭巾は新学期準備シーズンのみ店頭に並ぶ商品だったように思います。
けれども市民レベルでの自助が重要視されるようになってきた、この数年の間に、我が家の近所のスーパーでは年間を通して防災頭巾が買えるようになっています。
防災頭巾かヘルメットか
文部科学省「学校安全の推進に関する計画に係る取組状況調査」では、「ヘルメット・防災頭巾」というくくりでまとめられているため、実際に備蓄されているのがヘルメットなのか防災頭巾なのかということは明記されていません。
私の暮らす地域近隣では、どの公立小学校でも防災頭巾を選択しているようです。
けれども、同じ神奈川県内でもヘルメット・防災頭巾の備蓄に地域差があると知りました。
私は防災授業の講師として今年度も県内の小学校を数校訪れたのですが、興味深いのはヘルメットと防災頭巾どちらも常備している学校があったこと。
ある学校では、防災頭巾が座面や背もたれにつけられており、同時に、ヘルメットが椅子の座面下に布バッグでぶら下げられていました。
先生には、その理由を聞きそびれてしまったのですが、子どもたちに使い方を尋ねたところ、防災頭巾はクッションとして使うのがメインになっているとのことでした。
それなら、みんなヘルメットにしたほうがいいの?
インターネットを見ていると、学校の備蓄について「防災頭巾より、地震の被害から頭部を守る効果が高いヘルメットにするべきでは?」という意見も多く見かけます。
私としては、どちらが正解かを判断するのは難しいと思っています。
落下物や倒壊の強い衝撃から頭部を守れるのは、断然ヘルメット
地震被害による硬い・重い・角張った落下物や倒壊の衝撃から頭部を保護する目的では、耐衝撃性を計算して設計された防災用・作業用ヘルメットの方が、防災頭巾より優れていると言えるでしょう。
なお、自転車用のヘルメットを防災用に併用することはできません。逆に、防災用ヘルメットで自転車に乗るのも危険。
ヘルメットという同じジャンルの商品でも目的ごとに設計され、構造が違うのですね。
防災頭巾の良さもある
ヘルメットの安全性能を認めた上で、3人の子育てとPTA活動、防災授業での学校現場経験を通した私個人の考えとしては、学校で依然として防災頭巾の備蓄が継続されていることにも納得をしている部分があります。
防災頭巾もヘルメットも、使うのは緊急時。突然の緊急事態に不安に襲われている最中でも、身を守るために、わずかな時間で正しく装着する必要があります。
そんな時、防災頭巾は比較的、誰でも簡単に正しく被ることができるでしょう。
一方、ヘルメットは顎ベルトや頭周りのサイズなど、適切に頭が収まるように調整されていないと、うまく被れない場合があります。
長期休暇中などに保護者が調整してあげる必要がありますが、全ての子どもが確実にそのケアを受けられるとは限りません。
次の長期休暇に入るまでに、急成長する子どももいます。
子どもたちのヘルメットを常に正しく使える状態にしておけるかという点で、不安要素があるように私は感じています。
また、ヘルメットは保管が嵩張るために学校の備蓄として選ばれにくいのでは、という意見もあります。
私が訪問した小学校で備蓄されていたヘルメットはオーソドックスなヘルメット形状ですが、児童各自の椅子の下に無理なく収まっていました。収納はさほどの問題にならないように思いました。
収納面の問題解決としては、コスト増という難点はあるもののコンパクトさが魅力の"たためるタイプ"のヘルメットもあります。
学校からいったん話がそれますが、我が家の備蓄ヘルメットは収納に困らない"たためるタイプ"のヘルメット。家族それぞれの寝室に置いています。
(画像左)シルバーのヘルメットは、後頭部を布で覆える頭巾状になっていて、ヘルメットと防災頭巾の特徴を持ち合わせた商品です。とてもコンパクトで比較的サイズ調整もしやすいので、来客用に置いています。
(画像右)グリーンのヘルメットは、カラフルな商品で、3人の子どもたちそれぞれのテーマカラーで備えました。幼い子どもたちが避難中にはぐれても見つけやすいと考えたからです。
どちらのヘルメットも、大人の作業としては、たたまれた状態から頭にかぶれる状態に変形させることに難しさは感じず、こうした商品の開発に感謝するばかりです。
けれども、いざ小学生が自分でセッティングしてかぶるのには少し時間がかかり、大人の手助けが必要になりました。
特に成長期の子ども用は、こまめにサイズ調整をしておかないと、久しぶりに取り出してフィットしなかったとき、子ども自身で微調整するのは難しいようです。
学校に話をもどしますと、児童一人ひとりのヘルメットサイズを定期的にチェックする機会をもつのは難しいでしょうし、緊急時に、うまく装着出来なかった子の手助けをする余裕などはないと考えておいた方が良いでしょう。
低学年だったり、さまざまな理由で素早く確かな行動を取ることが難しい子どもも含めて、子ども全員をいち早く安全な環境へ退避させなくてはなりません。
そう考えた時に、子どもそれぞれが自分自身で頭部を守れる確率を上げることを目的とするならば、ヘルメットの装着で失敗したり焦ったりするおそれがあるより、全員が確実に防災頭巾をかぶりスムーズに次の行動へ移れる方が、全体的な安全性が上がると思うのです。
中高生になればヘルメットも扱えるようになると思いますので、現在の頭部無防備状態からヘルメットの備蓄に改善されていくことを願います。
我が家の防災頭巾カスタマイズ
ところで、学校での避難といえば、主に地震避難訓練と火災避難訓練のタイプがあると思います。
火災避難の際に教わるのが、ハンカチを鼻と口にあてて煙を吸わないようにし、身体を低くして静かに移動することですよね。
さて、お子さんのポケットには、いつも必ずハンカチ(タオル)が入っていますか?
持ち忘れて登校してしまうこともありますし、カバンの奥底に押し込まれているときもあります。
床に落としてしまったり、トイレの後にさっと流しただけの手(どんなに石鹸で丁寧に洗いなさいと教えても横着する子はいるのです)を拭いたハンカチを口にあてることになれば、清潔さに難ありと思います。
常にきれいなハンカチを携帯しておけば良いことではありますが、大人でも携帯しない人もいるのに、子どもに徹底するのはなかなか難しいものです。
そんなわけで、私は防災頭巾をほんの少しカスタマイズしていました。
防災頭巾の内側に小さなポケットを縫い付け、ビニール袋に入れたマスクとハンカチをポケットに備えておくのです。
新学期はじめから数ヶ月、防災頭巾に入れっぱなしのハンカチというのもなんとなく気持ちが良くない気もしますが、いざという時にハンカチが無いよりはまし。
実際、娘によると避難訓練の時には大いに役立ったとのこと。そしてたまにハンカチを家に忘れた時にも予備として役立ったそう。
また低学年時代には、取り付けたポケットの内側に、万が一はぐれた場合の家族の約束と災害用伝言ダイヤルで使える電話番号を書き込んでおきました。
防災頭巾の外側には、氏名と学年クラス、学校名と地区名の名札が貼ってありますが、それ以外の個人情報はポケットをのぞき込めば見える、というようにしておきました。
学校での防災は学校にお任せ?
学校内にいるときの避難行動は、基本的に学校にお任せするよりありません。
けれども家庭で事前にしておけることもあります。
・防災頭巾(ヘルメット)をカバーやケースからスムーズに取り出し、確実にかぶる練習
・名札等の記載情報の修正
・適切なサイズ調整
・状態の確認、新調。ヘルメットの耐用年数は異常が見られなくても3年程度 : 一般社団法人 日本ヘルメット工業会 JHMA
・怖くても泣いたり騒いだりしないこと、大人の声や周りの音をよく聞くこと、周りをよく見ることなど、心がまえを伝えておく
先生は一人でで数十人もの子どもたちを誘導しなければなりません。中にはパニックに陥ってしまう子、怪我をしている子など、特別なケアが必要になる場合もあります。
まずはできるだけ、子どもひとりひとりが自分の力で自分の身を守る方法を知っておくこと。それが全体の安全につながると思います。
そして学校を落下倒壊の恐れのない環境にしておくことも重要な対策のひとつだと思います。
防災頭巾の選び方
ヘルメットは学校指定で配布されることが多いようですが、防災頭巾は個人調達になりやすいかも知れません。
防災頭巾は、中綿を詰めて手作りすることもできますが、市販品はやはり安全面で工夫をされているものも多いのがメリット。
特に防炎性能は、手作りではなかなか得にくいポイントです。
公益財団法人日本防炎協会の認定を受けた製品には「防炎製品」マークがついていて、安心な製品の判断材料になります。
ただし(財)日本防炎協会のホームページによると、インターネット上の通販サイトでは、協会の試験・認定を受けずに偽造ラベルを貼付し、認定品と称して販売されている偽防炎製品も確認されているそう。
正しい防炎製品を購入するには、日本防炎協会ホームページの「防炎品取扱店検索」で確認したり、製造メーカーの直販を利用すると安心です。
登下校中に地震が発生したら、ヘルメットも防災頭巾もありません。
ランドセルやカバンで身を守る方法、できるだけ安全な通学路を選ぶなど、子どもが自分で自分の身を守れるよう教えてあげておいてください!
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