すでに前年度の1年間の回数を上回る
【2022年2月1日(火)1面】 領空侵犯の恐れなどがある外国機に対し、空自の戦闘機などが令和3年度3四半期まで(4~12月)に緊急発進(スクランブル)した回数が785回で、すでに前年度の1年間の回数を上回ったことが、統幕が1月25日に発表した実施状況で明らかになった。特に、中国機は前年1年間の合計を100回以上も上回った。ロシアとともに爆撃機による長時間の共同飛行も確認されており、防衛省・自衛隊は引き続き、対領空侵犯措置に万全を期すことにしている。
統幕によると、令和3年度3四半期までのスクランブルは、785回。前年度の年間全体の725回を上回った。
中でも、推定を含め中国機に対するスクランブルは571回で、前年度1年間の458回を3四半期までの時点ですでに113回も上回っていた。対象国・地域別で見ても、対中国機は全体の約73%に上っている。
一方、ロシア機に対するスクランブルは199回だった(全体の約25%)。ロシア機は昨年9月12日、Au26機が北海道・知床岬の領空内を飛行。今回、「領空侵犯」事例として公表された。
また、昨年11月19日には、特異飛行として、中国H6爆撃機とロシアTu95爆撃機が日本海から対馬海峡を通過し、東シナ海、太平洋を長時間、共同飛行した事例を含め、計18件が公表された。
艦艇から発艦される事例も相次いだ。昨年10月21日に中ロがそれぞれの艦艇からヘリコプターを、12月19、20の両日には、中国が太平洋を航行中の艦艇からヘリコプターや戦闘機を発艦させた。
方面隊別では、最多の南西空の525回が前年度合計の404回を上回り、北空の163回が続いた。
こうした状況について、岸信夫防衛大臣は1月25日の閣議後会見で言及。昨年11月の中ロ爆撃機による共同飛行も含め、「わが国に対する示威行動を意図したもの」とした上で、「近年、中国機の飛行形態は変化し、活動範囲は東シナ海にとどまらず、太平洋や日本海にも拡大し、長期間・長距離にわたる飛行も確認している。台湾周辺における活動も昨年以降、活発化しており、わが国周辺の空域などで中国機は活発な活動を継続している」と述べた。
大臣はさらに、「防衛省・自衛隊としては、わが国の領土・領空を断固として守り抜くとの方針の下、引き続き国際法、自衛隊法に従って、対領空侵犯措置に万全を期す」と強調した。
12月は142回 昨年4月以降最多に
統幕は1月25日、昨年12月の緊急発進(スクランブル)の実施状況を発表した。
発表によると、スクランブルは142回。昨年11月の127回を上回り、同4月以降で最多となった。国・地域別(推定含む)では、中国の85回、ロシアの53回など。
方面隊別では、南西空が72回で最も多く、北空の42回が続いた。