「北東北の盾 玖師団」。青森、岩手、秋田に所在する陸自9師団隷下部隊がさまざまな案を出し合い、このほど完成した師団の新たな通称だ。このアイデアの一部を提案し、採用されたのは、秋田駐21普連の広報担当、仲村真3陸曹。数々の文献などを読み、提案までたどりついた経緯をまとめ、投稿してくれましたので紹介します。
最先任上級曹長からの提案
師団最先任上級曹長の綿引准陸尉から6月2日、一つの提案を受けた。
「この意味を広報陸曹である君が考えたというなら、投稿文・読み物として公表してみないか。9師団の新たな通称を全国に周知するためにも、通達だけでは表現しきれない細かな意味を記すためにも、やってみる気はないか」
それは、新たな師団通称が発表されてわずか2日後のことだった。
「北東北の盾 玖師団」。ありがたくも私の提案したアイデアの一部が採用され、それを知った綿引准尉より激励とともに師団最先任上級曹長メダルをいただいた。歓談した際、文字に込めた意味について語ると冒頭の提案をされたのだ。
北東北3県を一言で語れる言葉とは?
始まりは3月半ば頃の師団通称新設に伴う募集。早速考え始めたが、早々につまずいた。「北東北3県」を形容する適切な言葉が見当たらなかったからだ。北東北という地域を一言で語れる言葉が欲しかったのだが、どれだけ古い文献を探しても見つけられない。
むしろ古いほど、東北の地は奥羽山脈を隔てて東西に異なる地域とされており、畿内(京都)から見て、奥州は日本の東端、羽州は日本の北端と考えられていた。北東北という区分は比較的に新しい概念だったのだ。
結局、北東北の区分でくくられるものの中で知名度や歴史があり一番伝えやすい表現というのが、他ならぬ自衛隊の「師団」という区分名だったのだ。そう考えれば「師団」を含んだ通称の方が、一般の方にもそれが自衛隊のどこかの部隊の通称であることが伝わりやすいという考えに至った。
伝統と誇りを継承する決意
次はナンバリングネームである「9」をどのようにして表現するか。どの時代で名乗っても9師団を連想させるものであって、歴史と未来を内包した言葉はないかといろいろ読みあさった。そこで見つけたのが「九」の大字である「玖」だった。
文字単体では「美しい黒い石」という意味があり、この場合の「石」とは、古代史的な玉(宝石)を意味し、転じて宝物としての意味合いも持つ。また、文字の作りは玉(宝石)を表す「王」と時間の経過を表す「久」により成り立つことから、これらは9師団の前身である旧軍の8師団が、その精強さから「国宝師団」と呼ばれたことに対する尊敬とその伝統と誇りを継承する決意の思いを込めた。
さらに、黒はすべての色を混ぜることで誕生する色なので、さまざまな色(諸職種)が混ざり、美しい完全な黒色となる意味もしのばせた。
このような道のりを経て、郷土に根差す、古きを継承し未来へ託すというさまざまな思いを詰め込んで「玖師団」という言葉に至った。
これから9師団が続く限り、残り続けるものとして、その一翼を担えたことはこの上ない幸せである。これを機に多くの人が9師団と言えば「北東北の盾 玖師団」と知ってもらえたらうれしく思う。