ごきげんよう、「永遠の図書室」店番でございます。さて先日お越しいただいた方とお話していた時に、こんなお話になりました。

「近代史を勉強してみたいんだけど、どこから手を付けたらいいのかわからない」

とのこと。日本史という長い目で見ると近代史はほんの少しに見えますが、その実たくさんの事件や歴史の流れが含有されております。「戦争」だけ切り取っても戦地はたくさんあるし人名も多い、丸眼鏡のおじさんが多い、「事件」も沢山ありますし、そこを見ても背景が複雑。膨大な歴史を目の当たりにしたとき、人間はまず「どうすればいいんだ……」と悩むと思います。

 しかしそんな人にこそ言いたいのが、「まずは大まかでもいいから、流れを追ってみるだけでもいいんじゃないかな」ということ。

 というわけで今回のコーナー名は「昭和史・近代史」です。

昭和史への入り口に

 「知らない」という上に情報量が多いと頭が混乱してしまいますが、まずさらっと知っておくことで知識の土台ができます。するとどうでしょう、先ほどよりも鮮明に「どれが知りたいか」が見えてくると思います。などと語っている店番ですが、私も近代史の複雑さには日々苦戦させられております。

 そもそも近代史とはどこからどこまでのことを指すのでしょう。調べてみると、「明治元年以降」とあります。明治、大正、昭和にかけて……なんて歌がありましたが、言ってしまえば平成だって令和だって近代史、すなわち私たちが生きているこの現代さえも歴史の一部なのです。矛盾した言葉ですが、「身近な途方も無さ」と言えばいいのでしょうか。

 さて、途方も無さを感じたところで話を戻します。「昭和史・近代史」コーナーにある書籍も途方もないのかと思いきや、大体が昭和史について書かれた書籍であります。それならまだ少ないかな?いいえ、「昭和」だけでもかなりの情報量です。ぎゅっと詰まっているのです。

 それでは早速見ていきましょう。このコーナーの蔵書数は56冊になります。多い!

 そのなかの16冊を占めているのが「昭和戦争文学全集」(15巻+別巻)。満州から太平洋戦争開戦、連合艦隊から原爆投下までを書いた短編集となっております。一冊一冊が函入りなので、眺めているだけでどことなく壮観です。どうして函入りってこう、本読みの心をワクワクさせてくれるのでしょうかね。

画像: 昭和史への入り口に

 それではここで(店番の基準で)気になるものを見ていきましょうか。

 まずはこちら、「昭和世相史 記録と年表でつづる世相と事件」(編:原田勝正)。

 これ、昭和史を知りたい!と言う方に特におすすめです。その年ごとに起こった出来事……細かく言えば政治から流行、エンターテイメントまでをわかりやすく紹介、下段には細かい年表が表記されており、写真も付いているというまさに親切な一冊。当時出版された本や曲名、ものの値段など、記されている内容は多岐にわたります。「昭和を舞台にした作品を書きたいけど、さすがにそういう情報まで載ってるかな……?」とリアリティを求めし創作者さんにもぜひ目を通していただきたいですね。

 昭和といえば戦争の時代、と思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、そんなことはありません。昭和という長く、広い時代では多くの人々がそれぞれの暮しを送り、それぞれの苦悩や悲しみがあり、そして喜びや楽しみがありました。決して一面だけではない、昭和という時代をご覧ください。

 ちなみに店番は1936年のコーナーを食い入るように見てました。おそらくこちらのコラムの第三回をご覧になっていただけると理由がわかるかと思います。

 しかしこの年、226の他にも「がんばれ前畑」で有名なベルリンオリンピック、そして概要を見てるだけでヒュッとしてしまう「阿部定事件」もあった年なんですよね。激動すぎる……

 これは完全に余談ですが、俳優の阿部サダヲさんの芸名の由来がこちらなのだとか。彼は出演してらした去年の大河ドラマ「いだてん」にて、朝日新聞の記者であり、のちにオリンピックを呼ぶ男である田畑政治、通称まーちゃんを熱演しました。そして劇中で226において朝日新聞社の襲撃、ヒリついた空気の中で行われたベルリンオリンピックが描写されています。1936年、色々な繋がりがありますねえ。

 この余談の力の入り具合から察していただけるとありがたいのですが、1964年のページも食い入るようにみました。

 さて二冊目が「昭和の東京 あのころの街と風俗」(著:石川光陽)

 こちらの石川さんは「警視庁カメラマン」という役職に就いており、昭和の様々な出来事をファインダー越しに撮り続けて来られたそうです。そう、この本は文庫サイズの写真集。手軽な大きさの中に貴重な歴史がじっしり詰まった贅沢な一冊となっております。

 戦前の銀座や東京駅前、浅草六区や遊郭、関東大震災に二・二六、戦中、戦後まで、まさに昭和の時代を生きた人々の、眼から見る風俗誌と言っても過言ではないでしょう。すべてモノクロ写真なのですが、読み進めているとだんだん頭の中で色づき始めてくるのが写真の魅力であり、不思議なところです。銀座のまちをカンカン帽とワンピースで歩くお嬢さん、きっと鮮やかなお洋服を着ていたのだろうなあ。そんな想像をふとしてしまいました。

 文章が苦手な方や、「文章だと逆に想像力が働いて怖い」という方にオススメな一冊です。また写真だけではなく、石川さんによる文章も読みごたえがあります。賑わいも悲惨さも、東京というまちの一瞬をどうぞご覧ください。

 まだまだ語り足りない所ですが、全部を語ってしまうと途方もない文字数になってしまいますので今回はこの二冊のみに留めさせていただきます。

 今回の二冊はいわば「昭和史への入り口にオススメ」という面で語らせていただきました。そして興味を持っていただけたのなら、ぜひ「知りたいもの」を深堀りしてみるのがいいでしょう。堀った先には、また新しく見る「歴史」があなたを待ち受けていると思うのです。それって、なんだか良いですね。

 というわけで今回はこのへんで筆を置かせていただきたいと思います。それでは!

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画像3: 永遠の図書室通信 第4話「昭和史・近代史」

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