今年も統幕長、陸海空3幕僚長の4氏による「年頭の辞」が寄せられましたので紹介します。 

3つの柱で国際情勢に対応|統合幕僚長 陸将 吉田 圭秀

画像1: 令和7年度「年頭の辞」たゆまぬ努力防衛力・抑止力を強化

 謹んで新年のお慶(よろこ)びを申し上げます。平素より自衛隊に対する深いご理解とご厚情を賜り、心より御礼申し上げます。

 本年の国際情勢の展望は、次の点から、残念ながらますます厳しさを増していきそうです。

 (1)欧州、中東では、戦火の出口がいまだ見いだせず(2)インド太平洋地域では、東シナ海を含むわが国周辺、台湾周辺、南シナ海で力による一方的な現状変更の試みが拡大・活発化(3)北朝鮮によるロシアへの派兵など、力による一方的な現状変更を試みる国家同士の結束が強化(4)大国間競争における保護主義の高まりや欧州・東アジアにおける政治混迷。

 こうした深刻な国際情勢の中、本年も引き続き統合幕僚監部は、(1)複合事態への対処(Respond)(2)統合運用態勢の抜本的強化(Deter)(3)同盟国・同志国などとの連携強化(Shape)の3つを隊務の柱として、引き続き抑止力強化に邁進(まいしん)してまいります。

 第1の柱については、複合事態が常態化する中、大局観をもって当面の作戦を完遂していきます。この役割の大部分は、新設とともに「統合作戦司令部」へ移管する予定です。

 第2の柱については、本年3月に新編される「統合作戦司令部」の戦力化が最大の焦点であり、新設と同時に機能発揮できるよう鋭意準備中です。また、7年度末から導入予定のスタンドオフ防衛能力(反撃能力)の戦力化も待ったなしです。

 第3の柱については、昨年に引き続き、日米同盟の抑止力・対処力を強化するとともに、インド太平洋地域における日米豪、日米韓、日米豪印、日米豪比などのミニラテラルな協力の進展、南シナ海における海上協同活動(MCA)などに加えて、NATO諸国との連携もさらに強固にしてまいります。

 自衛隊は、本年も動乱の時代の先に光明を見いだすべく、抑止力の強化に邁進し、時代の責任を果たすことをお誓い申し上げます。本年が、皆さまにとって心穏やかな一年になるよう心からお祈り申し上げ、年頭のごあいさつと致します。 


防衛省 統合幕僚幹部
https://www.mod.go.jp/js/about/message.html

人的基盤の抜本的強化に力|陸上幕僚長 陸将 森下 泰臣

画像2: 令和7年度「年頭の辞」たゆまぬ努力防衛力・抑止力を強化

 明けましておめでとうございます。平素より陸上自衛隊に対する深いご理解とご厚情を賜り、心より御礼申し上げます。

 国際社会は戦後最大の試練の時を迎え、新たな危機の時代に突入しています。中国による軍事活動の拡大・活発化、北朝鮮による核・ミサイルの増強、ウクライナ侵略を行う中でのロシアによる軍事活動の継続に加えて中東情勢の不安定化など、わが国は依然として戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面しています。

 昨年、陸上自衛隊は、1月1日に石川県で発生した能登半島地震における災害派遣を始めとした国内外における各種任務を遂行しつつ、防衛力の抜本的強化に係る取り組みを推進してまいりました。

 また、同盟国・同志国などとの防衛協力・交流を通じた連携強化や3年ぶりに実施した陸上自衛隊最大規模の実動演習である陸上自衛隊演習などを通じ、各種事態などへの抑止、対処の実効性を向上させ、地域の平和と安定に寄与してまいりました。

 本年、陸上自衛隊は、「防衛力整備計画」の3年目として、各種事態などに対応し得る部隊の即応性を向上させるとともに、防衛力の抜本的強化に係る取り組みを着実に推進してまいります。また、将来にわたって使命を完遂し得る陸上防衛力を実現するため、人材確保に係る分水嶺として人的基盤の抜本的強化を始めとした各種取り組みに大きく舵(かじ)を切ることが必要であると考えます。

 陸上防衛力の中核は「人」であるとの認識の下、一人ひとりが働きやすく、やりがいをもって勤務できる環境を構築し、士気高く任務に邁進できるよう、一丸となって取り組み、魅力あふれる憧れの陸上自衛隊を目指します。

 一人ひとりが厳しい状況にあっても己に打ち克(か)ち、任務や訓練に励むことが、隙(すき)のない備えとなり、現在から将来にわたる国民の安全、仲間や家族の幸せに直結するとの認識の下、「強靭(きょうじん)な陸上自衛隊の創造」に向け、職責を全うすることをお誓い申し上げますとともに、皆さまにとって心穏やかな一年になるよう心からお祈り申し上げます。

より精強・誠実な組織へ邁進|海上幕僚長 海将 齋藤 聡

画像3: 令和7年度「年頭の辞」たゆまぬ努力防衛力・抑止力を強化

 謹んで新春のお慶びを申し上げます。旧年中に賜りましたご支援、ご厚情に対し、心より御礼申し上げます。

 昨年、生起したヘリコプター墜落事故、掃海艇「うくしま」火災事象では、多大なご心配をおかけしました。また、情報保全に関する不適切な取り扱い、手当の不正受給など、国民の皆さまの期待と信頼を大きく損なう不祥事を生起させたことに対し、深くお詫わび申し上げます。

 現在、個々の事案の再発防止を含め、組織の態勢も改善すべく「海上自衛隊をより精強・誠実な組織とするための検討」(略称「よりS2検討」)を行っています。取り組みを通じ、日々誠実に勤務する隊員が、より任務に邁進できるよう努めてまいります。

 わが国を取り巻く安全保障環境は戦後最も厳しく、中国、ロシア、北朝鮮の活動活発化や連携強化は大きな懸念です。ウクライナやイスラエル情勢に見られるように、武力紛争は依然として絶えません。

 このような中、海上自衛隊は、昨年も広大な海域への部隊展開を通じ、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に貢献しつつ、わが国周辺の警戒監視活動や弾道ミサイルへの警戒を継続してきました。本年も平素からの活動を不断に継続しつつ、情勢の変化に迅速に対応いたします。

 特に対外面では、同盟国・同志国との関係をより深化してまいります。また、欧州とインド太平洋地域の安全保障は一体であるとの認識の下、各国海軍のインド太平洋地域への展開を歓迎するとともに、支援態勢の構築を推進します。国内では、大切な予算を適切に執行するとともに、必要な装備品・弾薬の調達、可動率向上、施設整備などの各種取り組みを着実に進めてまいります。

 また、防衛力の中核は「人」であり、募集、採用、就職援護および隊員の処遇改善などの施策を推進します。

 激変する環境下、海上自衛隊は改めて、私たちが国家・国民のためにあるという原点、海上防衛の奉仕者であるという原点を強く自覚し、自らの使命に誠実に向き合ってまいります。本年も変わらぬご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

同盟・同志国との連携を強化|航空幕僚長 空将 内倉 浩昭

画像4: 令和7年度「年頭の辞」たゆまぬ努力防衛力・抑止力を強化

 防衛日報社の皆さま、防衛日報をご愛続の皆さま、謹んで新春のごあいさつを申し上げます。旧年中は、航空自衛隊に対し、格別のご高配を賜り、誠にありがとうございました。

 昨年は元日に能登半島地震が発生し、過酷な試練に直面しました。改めて犠牲者の方々のご冥福をお祈りしますとともに、被害に遭あわれた方々に心からお見舞いを申し上げます。輪島分屯基地は自らも被災した中、自治体などと連携し、避難住民の一時受け入れや人命救助などの「命を救う活動」を行い、その後も給水・給食支援、巡回診療などの「命を繋つなぐ活動」に献身的に従事しました。

 わが国周辺では中国軍機による初の領空侵犯をはじめ、ロシア軍機による領空侵犯や中露共同飛行など航空活動がますます拡大・活発化する中、北朝鮮も断続的に各種弾道ミサイルを発射しましたが、部隊は冷静かつ毅然と対処しました。また、中東情勢の悪化に伴い、イスラエル、レバノン共和国から邦人らの輸送を実施するため、継続的・断続的に待機しています。

 航空自衛隊は昨年、創設70周年を迎え、秋には空軍参謀長らの招へい行事を開催し、内外に対してこの節目を周知するとともに、同盟国、同志国との間で信頼関係を強化できました。また、欧州各国の空軍を各基地に迎え、「欧州・大西洋とインド太平洋の安全保障は不可分」との共通認識の下、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に寄与できるよう共同訓練に臨みました。

 本年は、F35Bの部隊配備など、防衛力の抜本的強化を進めてまいります。また、新設される統合作戦司令部の下、任務を完遂できる部隊育成に取り組むとともに、防衛協力や共同訓練を通じて同盟国や同志国との連携の強化に努めてまいります。

 航空自衛隊は、「雲外蒼天」と「万里一空」という空に纏(まつ)わる2つの言葉を胸に刻み、心を1つに安全保障の諸課題に向き合ってまいります。

 防衛日報社におかれましても、ますますのご発展をご祈念申し上げます。本年が皆さまにとって、さらに夢と希望に満ちあふれ、幸多き年となることをお祈りしております。

→防衛日報1月7日付PDF


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