<東京>アフリカ東部ソマリア沖アデン湾での海賊対策にあたる派遣海賊対処行動支援隊(DGPE)の第21次要員に派遣されていた陸自1師団の隊員76人の帰国行事が7月31日(師団長・兒玉陸将)に大宮駐(第1派)で、8月3日(師団長・鳥海陸将)に練馬駐(第2派)でそれぞれ行われた。
 
家族全員で任務を完遂

 帰国した派遣隊員は、家族や駐屯地の隊員ら多くが出迎えを受け、笑顔で駐屯地内を行進した。帰国行事では師団長よりねぎらいの言葉がかけられ、隊員一人ひとりが派遣先での思い出などをスピーチした。会場は笑いに包まれ、無事に任務を完遂し、帰国したことを喜び合った。

画像: 出迎えを受ける隊員(大宮駐)

出迎えを受ける隊員(大宮駐)

画像: 帰国行事を見守る家族

帰国行事を見守る家族

画像: 家族ら出迎え 派遣海賊対処行動支援隊第21次要員が帰国|陸自1師団

 1施設大隊の大家2陸曹は奥様、娘さんに下は2歳からの3人の息子さんを日本に残し、派遣行動支援業務隊施設班の先任陸曹として任務を完遂し、家族のもとに戻ってきた。

 中学1年生の娘さんの凛桜(りお)さんはお父さんが不在の間、学業と部活の陸上を頑張りつつ、お母さんのお手伝いに下の兄弟3人の世話と、お父さん不在の家をお母さんと一緒に守ってきた。

 「パパが無事に帰って来てうれしい。また、自慢のパパと一緒にランニングをしたい。何よりもたくさん甘えたい」と笑顔で話してくれた。それに笑顔で答える大家2曹の目じりには輝くものがあった。

 家族全員で任務を完遂した2人の真っ黒に焼けた笑顔に輝く白い歯が印象的だった。

画像: 愛娘の凛桜(りお)さんと満面の笑みで2ショット

愛娘の凛桜(りお)さんと満面の笑みで2ショット


◆関連リンク
陸上自衛隊 第1師団
https://www.mod.go.jp/gsdf/eae/1d/

<編集部より>

 2009年3月、ソマリア沖・アデン湾で日本の関係船舶を海賊行為から防護するため、海上警備行動が発令されたことを受け、以降、自衛隊は全国の部隊から精鋭たちを結集。現在、派遣海賊対処行動水上部隊、派遣海賊対処行動航空隊、派遣海賊対処行動支援隊として派遣され、現地における活動を実施しています。

 中でも海賊行為は、海上における公共の安全と秩序の維持に対する重大な脅威。特に、海洋国家として国家の生存と繁栄の基盤である資源や食料の多くを海上輸送に依存している日本にとっては、看過できない問題となっていることは言うまでもありません。

 本日(9月19日付)の防衛日報は、2面で派遣海賊対処行動支援隊第21次要員の帰国行事を紹介しました。陸上自衛隊1師団の報告です。真っ黒に日焼けした隊員76人は大宮駐屯地、練馬駐屯地に分かれ、任務の完遂を報告しました。

 今回の1師団の報告には、さらに感慨深いエピソードが盛り込まれていました。1施設大隊で施設班の先任陸曹として活動した大家2陸曹の「家族の肖像」です。

 帰国行事には、妻と中学1年の愛娘、凜桜(りお)さんらが駆け付けていました。一家の大黒柱が異国の地、それも気温50度に達することもあるといわれる国への「出張」は、家族に一つの大きな試練を与えました。下に3人の兄弟もいる凜桜さんは学校で、部活で、そして母の手伝い、弟たちの面倒…と一人で何役もこなしていたそうです。

 何かあっても、頼れる父がいない。寂しかったことでしょうが、「父親役」もこなした母とともに、一家をしっかりと支えたようです。添えられた写真には、父と再会を果たした凜桜さんと大家2曹とのツーショットがありました。凜桜さんの満面の笑みには、喜びだけでなく、安堵感も見てとれました。

 自衛隊員の異動の多さは家族にもまた、少なからず影響を与えます。転校、友達づくり、地域とのコミュニケーション…などなど。新たに形成しなければならないものがその都度、必要となるからです。もちろん、一般社会でも当たり前の光景です。そこには、「単身赴任」の父と残された家族との物語が生まれてくるものですが、自衛隊の場合は海外、それも紛争地域への派遣の可能性もあるわけで、健康面も含め家族の心配は計り知れないものがあったことでしょう。今は、SNSなどさまざまな連絡方法はありますが、短いやりとりになってしまい、十分とはいえません。異国の地で、日本で、お互いが心配し合う。それが家族の一つの姿です。

 私事で恐縮ですが、旧社在籍中、3度の単身生活を経験しました。今、思えば何か家族の「絆」みたいなものが一つずつ、強くなっていったように思います。

 ソマリア沖・アデン湾における海賊事案の発生件数は現在、低い水準で推移していますが、海賊を生み出す根本的な原因とされているソマリア国内の不安定な治安や貧困などはいまだ解決されていません。こうした現状に立ち向かい、日本のため、国際社会のために派遣される隊員一人ひとりにも家族がいて、防衛省・自衛隊の国際貢献を陰で支えているのです。

他記事は防衛日報PDF版をご覧ください。

→防衛日報9月19日付PDF


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