防衛装備庁は11月14日、ホテルグランドヒル市ヶ谷(東京都新宿区)で防衛装備の研究開発の成果を紹介する「技術シンポジウム2023」を開催した。シンポジウムは15日まで。安保3文書で初めて明記された敵部隊・艦艇の射程外から攻撃する「スタンド・オフ防衛能力」を支えるミサイルなどの開発状況や宇宙、サイバーといった新領域の現状を同庁の担当者や有識者が解説した。会場には最新技術の現状を知ろうと、防衛装備関連企業などの関係者が多数来場した。
14日のシンポジウムでは、特別講演として東京大学の中須賀真一教授が「宇宙開発利用と衛星技術の新しい潮流」をテーマに講演。
中須賀氏は安全保障に関する海外の観測衛星の利活用について「ミサイル探知に加え、敵地動の動静把握などの戦術・作戦の活用、海洋監視などに活用されている」と具体例を挙げた。
こうした中で日本の宇宙開発の現状に触れ、「日本は周回遅れだ。どういう国を目指すのか『意思』が見えてこない」と指摘する。その上で「失敗を恐れず、新しい技術にチャレンジし、人材育成できる環境づくりに注力するべきだ」と強調。さらに「日本の得意技である『迅速まずは試して、その後のカイゼンの繰り返し』が必要だ」と訴えた。
シンポジウムではこのほか、防衛装備庁の取り組みや防衛技術指針2023などの講演が行われた。
会場には、極超音速レールガン最新研究▽島しょ環境を模擬した水陸両用車シミュレーターによる研究開発のDX▽長期運用型UUV(自律型無人潜水機)技術研究――などの内容が展示されている。
政府は安保3文書の一つである「防衛力整備計画」で、令和9年までの5年間で防衛力を抜本的に強化するために必要な防衛費を約43兆円と決めた。防衛装備品の需要が高まっているのが現状だ。さらに政府・与党が防衛装備の輸出ルール「装備移転三原則」の運用指針の改定を検討。防衛産業も防衛装備品の海外輸出に期待を寄せている。
撮影はすべて防衛日報社