第2次岸田再改造内閣が9月13日、発足した。防衛大臣として木原稔元首相補佐官(54)=衆院熊本1区=が初入閣した。木原大臣は同14日午後、防衛省(東京・市谷)で行われた着任式で「浜田(靖一)前大臣からのバトンをしっかりと引き継ぎ、全身全霊で課題に取り組む」などと訓示。昨年12月に策定した国家安全保障戦略などの「安保3文書」で掲げた防衛力の抜本的強化を推進していく考えを述べた。一方、退任する浜田前大臣は離任式で、「全国25万人の自衛官は、この国の宝である」との言葉を送り、同省を後にした。

必要な装備品の速やかな運用を

 木原大臣は14日午後、防衛省に登庁。栄誉礼を受け、メモリアルゾーンで慰霊碑に献花した後、着任式に臨んだ。

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 木原大臣は、日本国内外で任務に従事する約25万人の自衛隊員らに向け、「額に汗し、わが国の平和と独立、国民の生命と財産、安心・安全を断固として守り抜くために、防衛大臣として、任務できることを大変、光栄に感じる」と就任の抱負を語った。

 就任の際、岸田文雄首相から指示を受けたこととして、令和9年度までに防衛力の抜本的強化▽スタンド・オフ防衛と統合防空ミサイル防衛の充実▽防衛生産技術基盤の強化▽日米同盟による抑止力と耐久力の一層の強化▽「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、二国間・多国間による防衛協力の推進▽迅速な災害対応―などを伝え、着実に進めることを強調した。

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 安保3文書の策定に尽力した浜田前大臣に対しては、「バトンをしっかりと引き継いで、諸君の先頭に立ち、全身全霊で課題に取り組む。引き継ぐバトンの第一は、防衛力の抜本的強化の一日も早い実現だ」と意気込んだ。

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 また、日本を取り巻く厳しい安全保障環境に触れた上で令和6年度の概算要求に言及。「約7兆7000億円と過去最高額となった。防衛力強化の迅速化のためには、必要な装備品を取得するだけでなく、速やかに運用できるようにする必要がある」と強調。具体的には、スタンド・オフ・ミサイル防衛やイージス・システム搭載艦など新たに取得する装備品などを挙げた。

 加えて、継続的な部隊運用に必要な装備品の稼働率の向上や弾薬などの確保のほか、防衛施設の強靱化(きょうじん)を進めるとした。

 さらに、自衛隊の喫緊の課題である隊員獲得に向けては、「少子化が進む現在、人材の確保は大きな課題だ。基地、駐屯地内の老朽化した施設の更新やハラスメント防止対策、処遇改善を通じ、日本の国防を担いたいと思う全国の若者が、憂いなく防衛省・自衛隊で働くことを選択してもらえるように、私は現場に足を運び、隊員の要望を真摯(しんし)に受け止め、改革していく」と強調した。

 木原大臣は地元・熊本県に拠点を置く陸自8師団の坂本雄一師団長ら10人が亡くなった今年4月のヘリ事故にも触れた上で、「本日まで国の存立を担う崇高な職務に殉じられた自衛隊員の御霊の数は、2088柱になる」と哀悼の意をささげた。

 最後に「国内外の厳しい現場で働く隊員こそが、自衛隊の、そして日本国の宝だ。私はいかなる時も隊員とともにある。現場で働く隊員に思いをはせ、全身全霊、職務に邁進(まいしん)することを誓う」と決意を表明した。

略暦 

大臣 木原 稔氏(きはら・みのる) 昭和44年、熊本市出身。54歳。早大教育卒。日本航空勤務。平成17年の衆院選挙で初当選。首相補佐官(国家安全保障担当)、防衛大臣政務官、国土交通委員長、党安全保障調査会幹事長、「こども・若者」輝く未来創造本部事務総長、憲法改正実現本部事務総長代行など歴任。衆院熊本1区。当選5回。

全国25万人の自衛隊員は、この国の宝 |浜田前大臣

 浜田前大臣は14日午前、防衛省で離任のあいさつをし、約600人の自衛隊員を前に「25年前に防衛政務次官(当時)を拝命したときから、全国25万人の自衛隊員は、この国の宝だと思っている。その思いは今も変わらない。わが国の防衛という崇高な任務を全うされるよう心より祈っている」とエールを送った。

画像1: 全国25万人の自衛隊員は、この国の宝 |浜田前大臣

 また、就任期間を振り返り「防衛力の抜本的強化をはじめ、さまざまな課題があった。いかに高い壁が立ちはだかろうとも、果敢に挑み続けた。それは皆さんに支えられていたからだ」と感謝を述べた。

 安保3文書で掲げた防衛力の抜本的強化の実現について、「スピード感を持って実現させることが求められている。失敗を恐れず、楽しむ気持ちを持って取り組んでもらいたい」と強調した。

 今後の自衛隊の在り方にも言及し、「存在する自衛隊から行動する自衛隊へと言われて久しいが、『本当に今のままで自衛隊が動けるのか』という点にも真剣に考え続けてもらいたい」と要求した。

 また、自衛隊組織を揺るがすハラスメント問題に関しては、「自らはタフであり続け、人に優しくなければ組織の上に立つ資格はない。一人ひとりが先頭に立ち、ハラスメントを一切許容しない組織環境をつくっていけるよう、引き続き気を引き締めてもらいたい」と訴えた。

 浜田前大臣の離任式では、増田和夫防衛事務次官が防衛省・自衛隊の職員・隊員を代表し、浜田前大臣へ感謝の言葉を送った。昨年末に策定された安保3文書や防衛費の43兆円方針に触れ、「浜田大臣の強い決意と行動力があったからこそ実現した」と話した。

画像2: 全国25万人の自衛隊員は、この国の宝 |浜田前大臣

 増田氏は米国のあるシンクタンクの所長の言葉を引用し、「浜田大臣に比類するのは、国防戦略の枠組みを作った米国の初代国防長官のフォレスタル氏と戦略の現代化を成し遂げた(8代国防長官の)マクナマラ氏の2人だけだ」とのエピソードを紹介。

画像3: 全国25万人の自衛隊員は、この国の宝 |浜田前大臣

 さらに、「4幕僚と会談したときに意見が一致したことがある。それは、腹をくくり、ぶれなかった浜田大臣はまさに『武人』。防衛省・自衛隊の全隊員は浜田大臣の下で、歴史に残る仕事に携わることができてとても幸せだった」と語った。

<編集部より>

 第2次岸田再改造内閣が9月13日に発足しました。本日、1面は木原新大臣、浜田前大臣の離着任行事の模様、副大臣、政務官の人事と合わせ、日本の防衛のかじ取りを行う新たな3役の1ページ特集です。地本や部隊の報告とともに、これも広報紙として報道する大きな使命です。その中では可能な限り、それぞれの「ことば」を拾って紹介しました。

 安全保障環境は厳しくなる一方です。新大臣の責任は「重責」という言葉では計り知れないものがあります。僭越ではありますが、木原新大臣は自民党の「国防族」の一人ともいわれており、以前から安全保障問題に対する思いは強い人だと感じていました。それはそれで、とても大事なこと。役人が作った資料を読み上げるだけの大臣はよく登場しますが、浜田前大臣同様、自分のことばで国防、安全保障を語ることができる大臣ではないかと思っています。そこは、本当に期待しています。

 有事が遠くないかもしれない現状です。それこそ、いざという時の指揮官のことばがどれほど重要なものなのか。比較にならないかもしれません。長くメディアの世界にいて、指揮官の立場も経験している身から、ここだけは揺らぎがない、トップであってほしいな、と思います。そうでないと、付いて行こうとする下の人間が路頭に迷いかねないからです。反発も増幅されがちです。

 そこで、一つ。今、自衛隊を、自衛隊員を語る時、よく使われることばがあります。「自衛隊員は『国の宝』」ということです。この日、新旧両大臣が奇しくも同じこのことばを使いました。そう言えば、観閲式などで安倍元首相、新型コロナの大規模接種センター設立の際の菅前首相も同じことばを発していました。「引き継ぎ事項」なのかもしれませんが、それでもいいのです。最高指揮官からも「国の宝」と言われる自衛隊員は、それをプレッシャーに感じようが、力に変えようが構いません。新大臣の思いをしっかりと受け止めて、任務に邁進(まいしん)してほしいと心から願います。そして、防衛日報社も熱き思いを抱いて、防衛省・自衛隊の広報に全力を挙げる所存です。

他記事は防衛日報PDF版をご覧ください。

→防衛日報9月20日付PDF


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