主要事項(※は新規)

 □1 スタンド・オフ防衛能力(約7551億円=他分野を除くと約7339億円)

《12式地対艦誘導弾能力向上型の開発・取得など》
 ・12式地対艦誘導弾能力向上型(地発型・艦発型・空発型)などの製造態勢の拡充(474億円)
 ・12式地対艦誘導弾能力向上型(地発型)の地上装置などの取得(144億円)※
 ・12式地対艦誘導弾能力向上型(艦発型)搭載のための器材調達(6億円)※

 《島嶼(しょ)防衛用高速滑空弾などの開発》
 ・島嶼防衛用高速滑空弾(能力向上型)の開発(836億円)

 《極超音速誘導弾の開発・製造態勢の拡充など》 
 ・極超音速誘導弾の製造態勢の拡充など(85億円)※

 
 《その他のスタンド・オフ・ミサイルなど》
 ・新地対艦・地対地精密誘導弾の開発(320億円)※ 
 (長距離飛翔(しょう)性能、精密誘導性能など対艦・対地対処能力を向上した新たなスタンド・オフ・ミサイルの開発に着手。12式地対艦誘導弾能力向上型の地上装置を活用可能)  
 ・トマホーク発射機能の艦艇への付加(2億円)
 (令和8年度のトマホーク納入に向け艦艇への機能を付加)

画像: 主要事項(※は新規)

 《指揮統制》 
 ・一元的な指揮活動のための機能整備(215億円)※ 
 (スタンド・オフ・ミサイルの運用を中核として一元的な指揮活動を円滑に実施するため、統合指揮ソフトウェアを整備)

□2 統合防空ミサイル防衛能力(約1兆2713億円=他分野を除くと約1兆2420億円)

 《迎撃アセットの強化》
 ・イージス・システム搭載艦の建造など(2隻・3797億円)※
 (高度化する弾道ミサイルなどの脅威からわが国を防護することを主眼として、早期の就役を目標=令和9年度に1隻目、同10年度に2隻目=に、同6年度から建造に着手)(既計上分を含めて機械的に積算すれば、取得経費は1隻あたり約3950億円)
 ・GPIの日米共同開発(750億円)※
 (極超音速滑空兵器に対し、滑空段階において対処するための誘導弾を日米共同により開発)

□3 無人アセット防衛能力(約1184億円=他分野を除くと約1161億円)

 《情報収集・警戒監視・偵察・ターゲティング(ISRT)機能の強化》
 ・USV(供試器材)の試験的運用(160億円)※
 (USV運用の知見を早期に獲得するとともに国産USVの開発促進を図るため、各国で運用実績のあるUSVを供試器材として取得)
 ・戦闘支援型多目的USVの研究(245億円)※
 (警戒監視や対艦ミサイル発射などの機能を選択的に搭載し、有人艦艇を支援するステルス性を有したUSVを研究)

□4 領域横断作戦能力

 (1)宇宙領域における能力強化(約1654億円=他分野を除くと約1145億円)

 《宇宙領域把握(SDA)の強化》
 ・SDA衛星の整備(172億円)
 ・宇宙作戦指揮統制サービスなどの整備(96億円)
 ・SDA能力向上のためのホステッドペイロード調査研究(2億円)※
 (SDA能力向上のため、自衛隊の各種センサーなどを、ほかの主体が保有する通信衛星などの静止衛星に相乗り=ホステッドペイロード=するための技術的実現性について調査研究を実施)
 ・静止軌道間光データ中継実証(50億円)※

 (2)サイバー領域における能力強化(約2303億円=他分野を除くと約2185億円)

 《情報システムの防護》
 ・「ゼロトラスト」概念の導入(1億円)※

 《サイバー分野における教育・研究機能の強化》
 ・各学校におけるサイバー教育基盤などの拡充(1)陸上自衛隊システム通信・サイバー学校(3億円)(2)防衛大学校=情報工学科を「サイバー・情報工学科(仮称)」に改編※
 ・サイバー等安全保障研究体制の強化(2億円)※
 《防衛産業におけるサイバーセキュリティ対策》
 ・防衛装備品などの生産基盤強化のための体制整備事業(86億円)

 (3)電磁波領域における能力強化
 《通信・レーダー妨害能力の強化》
 ・対空電子戦装置の取得(2式・62億円)※
 ・低電力通信妨害技術の研究(31億円)※ 
 ・将来EMP装備技術の研究(95億円)※
 《電子戦支援能力の強化》
 ・電波情報収集機(RC2)の取得(1機・492億円)
 ・電子作戦機の開発(140億円)※

 (4)陸海空領域における能力(約1兆3787億円=他分野を除くと約1兆3787億円)
 ・機動戦闘車などと連携し、機動的に侵攻部隊対処を行うための共通戦術装輪車(歩兵戦闘車および機動迫撃砲)を取得。(1)共通戦術装輪車(歩兵戦闘車)の取得(24両・246億円)※(2)共通戦術装輪車(機動迫撃砲)の取得(8両・82億円)※
 ・水際障害処理装置(2式・10億円)※
 (水陸両用作戦において、着上陸を行う沿岸部に設置されている水際障害を処理するための水際障害処理装置を取得)
 ・新型FFMの建造(2隻・1747億円)※
 (長射程ミサイルの搭載、対潜戦機能の強化など、各種海上作戦能力が向上した新型のFFM=護衛艦=、4500トンを建造)
 ・潜水艦の建造(1隻・951億円)
 ・新型補給艦の建造(1隻・825億円)※
 (あらゆる事態において護衛艦などの任務継続のため、洋上における後方支援能力を強化した補給艦=1万4500トン=を建造)
 ・戦闘機(F35B)の取得(7機・1256億円)(新田原基地に「臨時F35B飛行隊(仮称)」を新設)※

□5 指揮統制・情報関連機能(約6862億円=他分野を除くと約4488億円)

 《情報収集・分析など機能の強化》
 ・防衛駐在官の拡充
 (エストニア、カンボジア、スリランカに各1名を新規派遣するとともに、ベトナムに1名増員(令和6年度末80名、在勤52大使館2代表)※

□6 機動展開能力・国民保護(約5951億円=他分野を除くと約5951億円)

 《輸送体制の強化》
 ・「自衛隊海上輸送群(仮称)」の新編(南西地域への機動展開能力を向上させるため、共同の部隊として新編)※
 《輸送アセットの取得の推進》
 ・機動舟艇の取得(3隻・173億円)※
 (南西島嶼部などに部隊や物資を迅速に輸送するために使用する機動舟艇を取得。「自衛隊海上輸送群=仮称=」に配備予定)
 《民間海上輸送力の活用事業》
 ・民間輸送力活用事業(325億円)※
 (令和7年12月に現PFI(Private Finance Initiative)船舶の契約が満了することから、民間船舶を活用した輸送体制に空白を生じさせないよう、新たに2隻のPFI船舶を確保)

□7 持続性・強靱(じん)性
 (1)弾薬の確保(9303億円=他分野を除くと約4068億円)
 ・新艦対空誘導弾(222億円)※
 (護衛艦部隊の防空能力を強化するため、長射程の艦対空誘導弾)
 (2)装備品などの維持整備(約2兆3515億円=他分野を除くと約1兆9041億円) 

《PBLなどの包括契約の推進》
 ・輸送船舶の維持整備(17億円)※
 (3)施設の強靭化(約8043億円=他分野を除くと約8043億円)
 ・既存施設の更新(3916億円)
 ・火薬庫の整備(221億円)
 ・部隊新編および新規装備品導入などに伴う施設整備など(3608億円)(1)陸自における佐賀駐屯地(仮称)新設に係る施設の整備(671億円)(2)海自における大型護衛艦などを係留させるための浚渫(しゅんせつ)、桟橋の改修および佐世保(崎辺東地区=仮称)などにかかる港湾の施設整備(257億円)(3)空自におけるF35AおよびF35B受け入れ施設整備(264億円)

共通基盤

□1 早期装備化のための新たな取り組み
 ・宇宙=静止軌道間光データ中継実証(50億円)※

□2 防衛生産基盤の強化(約978億円=他分野を除くと約886億円)
 (1)力強く持続可能な防衛産業の構築
 ・防衛装備品の生産基盤強化のための体制整備事業(281億円)
 ・サプライチェーン調査結果のデータベース化(11億円)※
 (2)官民一体となった防衛装備移転の取り組み
 ・防衛装備移転円滑化のための基金に充てる補助金(400億円)
 (3)その他
 ・日米オスプレイの共通整備基盤の拡充(19億円)

□3 研究開発(約8358億円=他分野を除くと約2321億円)
 (1)防衛イノベーションや画期的な装備品などを生み出す機能の抜本的強化
 ・新たな研究機関の創設
 (防衛イノベーションや画期的な装備品などを生み出す機能を抜本的に強化するため、変化の早いさまざまな技術を、将来の戦い方を大きく変える革新的な機能・装備につなげていく新たな研究機関を防衛装備庁に創設)※
 ・ブレークスルー研究(仮称)(110億円)※
 (チャレンジングな目標にリスクを取って果敢に挑戦し、将来の戦い方を大きく変える機能・技術をスピード重視で創出していくブレークスルー研究=仮称=を、新たな研究機関において実施)
 (2~4略)
 (5)無人アセット防衛能力
 ・無人水陸両用車の開発(211億円)※
 (島嶼部のあらゆる正面から着上陸可能で、海上から部隊近傍まで補給品輸送などの任務を行う無人水陸両用車の開発に着手) 
 ・無人水上飛行艇活用の検討(1億円)※
 (海上への離着水能力を備えた無人水上飛行艇の利活用、技術的課題について調査検討を実施)
 (6)次期戦闘機
 ・次期戦闘機と連携する無人機の研究など(49億円)※
 (次期戦闘機などの有人機と連携する戦闘支援無人機を実現するために必要なAI技術の研究などを実施)
 ・次期戦闘機の共同開発機関への拠出金(40億円)※
 (次期戦闘機の共同開発を効率的に推進するために日英伊で設立する予定の国際機関に対し、運営資金を拠出)
 ・次期中距離空対空誘導弾の開発(184億円)※
 (経空脅威に有効に対処するため、次期戦闘機に搭載する次期中距離空対空誘導弾を開発)
 (7)その他抑止力の強化
 ・装甲車両の近代化に関する研究(24億円)※
 ・国際標準に則った耐空性の認証のための体制整備(150億円)※

□4 防衛力を支える要素
 (1)人的基盤の強化
 (1)優秀な人材確保のための取り組み=募集業務の充実・強化
 ア 募集広報などのデジタル化・オンライン化(6億円)▽転職者向け募集広報の充実(0.6億円)▽大規模体験型広報の充実(0.5億円)▽地方協力本部の体制強化(14億円)-など
 イ 略
 ウ ハラスメント防止対策
 (1)防衛省ハラスメント防止対策有識者会議の提言を受けた各種教育機会などの充実(0.8億円)
 (2)海自艦艇乗組員の確保策
 ・艦艇の通信環境の改善(2億円)※
 (3)女性活躍、働き方改革および生活・勤務環境改善の推進など
 ア 女性活躍の推進
 ・女性自衛官の教育・生活・勤務環境の基盤整備(129億円)
 ・生理用品の整備(0.2億円)※

画像: 共通基盤

 イ 働き方改革の推進
 ・艦艇乗組員の代日休養取得を促進させるため、停泊中の一部業務を民間企業へ委託することを検討するほか、業務の効率化を図るための勤務環境の改善(4億円)
 ウ 職業生活と家庭生活の両立支援
 ・臨時託児(シッターサービスの活用)の試行(0.4億円)※
 (4)教育・研究体制の充実
 ア 防衛研究所=サイバー等安全保障研究体制の強化(2億円)
 イ 略
 ウ 防衛医科大学校=防衛医科大学校の運営改善(19億円)
 ・戦傷医療に対応し得る医官・看護官を養成するため、「外傷・熱傷・事態対処医療センター(仮称)」を新設※
 エ 陸上自衛隊高等工科学校
 ・陸上自衛隊高等工科学校の共同化・共学化(10億円)※
 (5)持続的な部隊運用を支える予備自衛官等に係る施策の推進
 ・予備自衛官等管理システムの整備(4億円)※
 ・予備自衛官等制度に関する意識調査(0.3億円)※
 (2)衛生機能の強化
 《戦傷者の後送間救護能力の強化》
 ・遠隔医療支援用器材の取得(3億円)※
 ・航空搬送用医療器材などの取得(4億円)※
□5、6、7、8略

□9 自衛隊の組織編成

・海上自衛隊地方隊の改編
(防衛および警備、災害派遣などにおいて、北方から太平洋にかけて一体的な対応を可能とし、運用の柔軟性を向上させるため、大湊地方隊を改編し、横須賀地方隊と統合※
・大湊地区において後方支援全般を担う部隊を新編※ 
・大湊地区における定員規模は維持※

図・表は全て防衛省より

<編集部より>

 本日の紙面には、「過去最大の7兆7385億円」「イージス・システム搭載艦2隻」…などの見出しが躍っています。いつもとは少し違う紙面です。令和6年度予算の概算要求・防衛関係費の特別編集です。主な事業(2面)も詳しく掲載しました。防衛省・自衛隊の活動を広く紹介するのが広報紙としての責務。きょうだけは、今後の日本の安心・安全を護(まも)るため、防衛省がどんな思いで国民から徴収したお金(税金)を使わせてもらおうとしているのか、を可能な限り紹介したかったのです。

 防衛省によると、浜田靖一防衛大臣は会見で、「防衛力抜本的強化の『2年目』。これにふさわしい額を計上した」と述べていました。国は防衛費について、令和9年度までに約43兆円を計上する方針を打ち出しています。抜本的に強化せずして、先には進めないということです。防衛費が増えることへの反論はあると思いますが、今回の概算要求は、日本をめぐる安全保障環境の厳しさを少しでも対応できる方策はほかにありますか、という強いメッセージと捉えたいと思います。周辺諸国の軍事面での開発が急速に進んでいる中、「専守防衛」の立場の中で出来得る態勢をとるのは至極、当然のことですから。

 紙面では1面で概算要求全体の内容はもちろんですが、常設の「統合司令部」の設置も取り上げました。こうした大きな組織変更や指揮系統などは、関心が高いと思ったからです。現役隊員やOBのみならず、一般の方にも分かりやすい内容です。背景の一つに東日本大震災での連絡態勢の不十分さが指摘されています。当時、仙台で取材中、現地で何度も東京とのやりとりへの不満を聞いていたことを記憶しています。責任者がほかの業務で忙殺され、「決裁」がなかなか下りず、次の行動に移ることができない、ということがありました。自衛隊は徹底した指揮・命令社会です。下の人間を動きやすくすることためには、今回の組織変更は絶大な効果につながるのではないでしょうか。いいことだと思います。本日は個人的な意見が多く、失礼しました。一般紙在籍中の昭和63年ごろ、防衛庁時代に担当記者として動き回っていました。国への思いは今も変わることがないのです。

 言うまでもないことですが、防衛日報は全国の地本や部隊などから連日、多くの報告を寄せていただいており、こうした内容を現役の隊員さんにはもちろん、デジタル版でも紹介することで広く、一般の方にも防衛省・自衛隊の活動をお伝えすることが最大の業務です。その編集方針はまったく変わることはありません。これからも、どうぞよろしくお願い申し上げます。

あわせて防衛日報PDF版もご覧ください。

→防衛日報9月6日付PDF


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