南西地域一連の配備計画完了

 <沖縄>沖縄県の石垣島(石垣市)に3月16日、陸上自衛隊の石垣駐屯地が開設された。陸自部隊の「空白地域」とされた沖縄本島を除く南西地域。海洋進出を強める中国を念頭に、平成28年以降、同県の与那国島(与那国町)や宮古島(宮古島市)、鹿児島県の奄美大島(奄美大島市など)などで進めてきた駐屯地開設の一連の配備計画分は完了し、防衛省は「『空白地域』は解消した」としている。さらに、石垣駐には駐屯地開設とともにミサイル部隊が配備された。「有事」が叫ばれている台湾に最も近いミサイル部隊の運用体制を整えたことで、南西地域での抑止力がさらに高まることが期待されるほか、同省・自衛隊は部隊の増強などさらなる対処力強化を図る方針だ。(「防衛力強化」取材班)

「安保3文書」改定
島嶼部防衛を具体化 台湾に最も近い「ミサイル部隊]

画像: 「安保3文書」改定 島嶼部防衛を具体化 台湾に最も近い「ミサイル部隊]

□隊員は570人□

 防衛省によると、石垣島に自衛隊施設が整備されるのは初めて。石垣駐の開設に伴い、新編される八重山警備隊、03式中距離地対空誘導弾を有する348高射中隊、12式地対艦誘導弾を有する303地対艦ミサイル中隊などで構成され、隊員約570人、車両約200台が配置された。

 また、災害など各種事態に対する迅速な初動対応も可能となる。

  陸自トップの吉田陸幕長は3月16日の会見で、「陸自の空白が解消され、抑止力が高まる」と強調。松野博一官房長官も同日の会見で、「沖縄県民や、ひいてはわが国国民の安全につながると認識している」などと述べた。

 16日には、陸自15旅団長の井土川陸将補、石垣駐司令の井上1陸佐(兼八重山警備隊長)ら幹部らが石垣市役所を訪れ、中山義隆市長に駐屯地の開設を報告した。

 また、時事通信によると、18日午前には、弾薬を積んだ車両を載せた海自輸送艦「おおすみ」が石垣港に入港。駐屯地に置かれたミサイル部隊が運用する12式地対艦誘導弾や03式中距離地対空誘導弾を含むとみられた。

□ミサイル部隊の配備□

 注目すべきは、ミサイル部隊が配備されたことだ。

 石垣島は与那国島に次いで2番目に台湾に近い場所にあるが、与那国島には現在、沿岸監視隊が配備されているだけだ。このため、石垣島がミサイル部隊の中では最も台湾に近い場所となった(今後、与那国島へのミサイル部隊の配備が検討されている)。

□「防衛大綱」で危機感□

 南西地域は九州南端から沖縄本島、台湾北東端まで連なる全長約1200キロ以上におよぶ広大な地域だが、平成28年3月に与那国駐が開設されるまで沖縄本島以外に陸自の部隊がなかった。

 その間、海洋進出を強め、一方的な現状変更を試みようとする中国の動きが活発化。平成25年12月17日に閣議決定された「平成26年度以降に係る防衛計画の大綱」の中で、「自衛隊配備の空白地域」として危機感が示され、南西地域を含む島嶼(しょ)部への部隊配備など防衛体制の充実・強化を図ることが盛り込まれた。

□平成28年から随時開設□

 防衛省は陸自部隊の配備を計画。平成28年の与那国島に続き、同31年に奄美大島と宮古島に相次いで駐屯地を開設した。また、艦艇などの動きを監視する沿岸監視隊や有事に備えるミサイル部隊などを設置してきた。

 「安保3文書」では、陸自の「保有すべき防衛力」として、15旅団を師団に改編。また、各種事態に即応し、実効的かつ機動的に抑止・対処できるよう、そのほかの8個師団、5個旅団、1個機甲師団について機動運用を基本とするなど、組織の最適化を徹底することなどが明記された。
 このほか、島嶼部の電子戦部隊の強化や持続性・強靭性きょうじん を強化するため、南西地域に補給処支処を新編するなど、南西地域を強く意識した島嶼部防衛の考え方が具体的に記された。

□地元への理解に努める□

 石垣駐開設にあたっては、地元住民らの反対が続いている。防衛省などによると、3月22日に沖縄防衛局と駐屯地側が住民説明会を行い、理解を求めたという。防衛省側からは、駐屯地の施設や自衛隊の活動概要について説明。

 また、防衛省は「反撃能力」を行使するためのミサイルの石垣島への配備については「具体的な配備先は決まっていない」とし、今後も住民の不安解消に努めることにしている。
 浜田靖一防衛大臣も3月10日の閣議後会見で、石垣駐の今後の部隊の改編などに際しては、「個々の案件に応じて、関係自治体と調整を行い、さまざまな形で情報提供していきたい」と述べている。

□地域の強化は今後も□

 浜田大臣は2月14日の閣議後会見で、石垣駐の開設について、「力による現状変更を許容しないとのわが国の意思を示し、島嶼部を含む南西地域への攻撃に対する抑止力・対処力を高めることで、わが国への攻撃の可能性を低下させるものであり、わが国国民の安全につながるもの」とその意義を強調していた。

 また、産経新聞などによると、吉田陸幕長は開設された3月16日の会見で、「南西防衛の強化についてはまだまだ途上だと認識している。今後も計画に基づき、着実に強化を図っていきたい」と述べた。

 部隊の増強や補給拠点の整備、米軍との連携強化など、南西地域では今後もさらなる防衛体制の強化が図られることが予想される。

部隊増強などさらなる対処力強化へ

画像: 石垣駐司令の井上1佐が編成完結式に臨んだ(陸自西部方面隊ツイッターから)

石垣駐司令の井上1佐が編成完結式に臨んだ(陸自西部方面隊ツイッターから)

画像: 駐屯地の隊員たち(陸自西部方面隊ツイッターから)

駐屯地の隊員たち(陸自西部方面隊ツイッターから)

<編集部より>

 リニューアル後最初の「本日の防衛日報」は、3月16日に開設された陸上自衛隊石垣駐屯地(沖縄県石垣島)の特集紙面です。

 陸自の部隊が沖縄本島にしかなく、「空白地域」といわれた南西地域は、海洋進出を強める中国を念頭に平成28年から与那国島や宮古島などに駐屯地を開設。防衛省は「(石垣駐屯地で)一連の配備計画は完了した」としている。  

 「台湾有事」が叫ばれる中、南西地域への攻撃に対する抑止力・対処力を高めることが期待され、4月3日の開設記念式典で浜田靖一防衛大臣は、「国を守り抜く決意の表れ」と強調した。  

PDFにて防衛日報をご覧ください。

 →防衛日報4月4日付PDF


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