米の対日防衛義務、宇宙も適用

 防衛省は1月12日、外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(日米「2プラス2」)が同日午前4時(米国時間・同11日午後2時)から米・ワシントンで開催されたと発表した。会合では、日本が「安保3文書」の改定で明記した「反撃能力(敵基地攻撃能力)」について、米国側が「同盟の抑止力を強化する重要な進化」などと強く支持。効果的な運用に向けて日米間の協力を深化させることなどを表明した。また、日米安保条約第5条による米国の対日防衛義務の適用対象を、各国が軍事的活動を強めている「宇宙領域」に拡大することも確認した。

◇日米安全保障協議委員会(2プラス2)の主なポイント◇
(防衛省発表資料などによる)
・日本の「反撃能力」の効果的な運用に向けて協力を深化
・「宇宙領域」を日米安保条約第5条による米国の対日防衛義務の適用対象に拡大する
・中国を「最大の戦略的挑戦」と認識
・台湾海峡の平和と安定は国際社会の安全と繁栄に不可欠
・南西諸島の防衛を重視し、沖縄県駐留の米海兵隊を「海兵沿岸連隊(MLR)」に改編
・米国による拡大抑止の重要性を再確認

 外務省・防衛省の発表(概要)によると、会合には、日本側から林芳正外務大臣と浜田靖一防衛大臣が、米国側からは、アントニー・ブリンケン国務長官とロイド・オースティン国防長官がそれぞれ出席した。

 「日米2プラス2」は、2022年1月にテレビ会議形式で開かれて以来の開催で、対面では東京で開かれた21年3月以来、約2年ぶり。日米両国の戦略文書発表直後ということもあり、約2時間30分にわたり、両国がそれぞれ「国家安全保障戦略」などをまとめたことを踏まえ、地域情勢などさまざまな分野について意見を交わした。

 そして、日本側が新たな戦略のもとで「反撃能力」を含めた防衛力を抜本的に強化する方針を説明し、米国側が強く支持。「反撃能力」の効果的な運用に向けて協力を深めることで一致したほか、米国の核戦力と通常戦力の抑止力によって日本を守る「拡大抑止」の重要性を再確認し、両国で実質的な議論を深めていくことで一致した。

中国を「最大の挑戦」

 会合では、日本側が「相当な増額」をした防衛予算の下で防衛力を強化していくことを改めて強調した。

 また、自らの利益のために国際秩序を作り変えようとする中国の外交政策に基づく行動に対し、「同盟および国際社会全体にとっての深刻な懸念であり、インド太平洋地域および国際社会全体における最大の戦略的挑戦」との認識を共有。東シナ海での一方的な現状変更の試みに強く反対することで一致した。

 台湾問題では、両国の基本的な立場に変更はないことを認識するとともに、国際社会の安全と繁栄に不可欠な要素である台湾海峡の平和と安定の維持の重要性を改めて表明し、両岸問題の平和的解決を促した。

 日米は昨年8月のペロシ米下院議長(当時)の台湾訪問後、中国が弾道ミサイルを日本の排他的経済水域(EEZ)に着弾させたことなどを非難。米国の拡大抑止の重要性を共有した。

 さらに、北朝鮮による弾道ミサイルの発射や中露の軍事協力などを非難し、日米韓、日米豪での協力を強化することで一致した。

 拉致問題については、米国側から引き続き全面的な支援を得た。

画像: 固く握手を交わす日米の防衛大臣(防衛省ホームページから)

固く握手を交わす日米の防衛大臣(防衛省ホームページから)

二国間調整を強化

 起こり得るあらゆる事態に適時かつ統合された形で対処するため、同盟調整メカニズムを通じた二国間調整をさらに強化する必要性を改めて強調した。

 また、宇宙・サイバー領域における協力の深化は、同盟の近代化における核となるものであり、日米双方は、宇宙関連能力に係る協力の深化にコミットした。

 その上で、宇宙への、宇宙からのまたは宇宙における攻撃が同盟の安全に対する明確な挑戦であると考え、攻撃が日米安全保障条約第5条の発動につながることがあり得ることを確認した。日本の人工衛星への攻撃など、宇宙での軍事行動などが対象となるとみられる。

「海兵沿岸連隊」に

 日本の南西諸島の防衛のためのものを含め、向上された運用構想、強化された能力に基づいて同盟の戦力態勢を最適化する必要性を確認。その上で、厳しい安全保障環境を踏まえ、在日米軍の態勢の見直しに関する再調整で一致した。

沖縄駐留の米海兵隊改編、離島有事に即応部隊を創設

 具体的には、情報収集・警戒監視・偵察能力、対艦能力、輸送力を備えた、より多面的な能力を有し、より強靱(きょうじん)性があり、より機動的な戦力を配置することで向上されるべきとし、離島有事に備え、沖縄にある第12海兵連隊を2025年までに、離島を拠点に機動的に対応する新たな部隊「第12海兵沿岸連隊」(MLR)=メモ参照=に改編する方針を確認した。

【メモ】
■海兵沿岸連隊(MLR) 米海兵隊の新たな運用構想(EABO)を実行する中核となる部隊。対艦ミサイル部隊も含む歩兵部隊である沿岸戦闘チーム、対空ミサイルを有する沿岸防空大隊、独立した持続的な活動を可能とする沿岸後方大隊で構成。より多面的な能力を有し、より強靭(きょうじん)で、より機動的な態勢を目指す(防衛省発表資料から)。

 また、日本側が普天間飛行場代替施設の建設事業や馬毛島における施設整備が着実に進捗(しんちょく)していることを紹介した。

 これに対し、米側は馬毛島における自衛隊施設の整備の進展、将来の見通しを歓迎した。

日米防衛相会談
浜田大臣、防衛力抜本強化に決意

画像: 防衛相会談では、具体的な取り組みなどを議論した(防衛省提供)

防衛相会談では、具体的な取り組みなどを議論した(防衛省提供)

 防衛省は1月13日、同12日午後4時(現地時間)から、浜田防衛大臣とオースティン米国防長官が米国防省で日米防衛相会談を行ったと発表した。

 防衛省によると、会談は約60分間にわたって行われ、両閣僚は、「日米2プラス2」を踏まえ、それぞれの新たな国家安全保障戦略、国家防衛戦略について、速やかに実行に移していくことで一致。その具体的な取り組みについて議論を行った。

米、強く支持 同盟の役割など議論加速へ

 この中で、浜田大臣は新たな戦略の下、相当な増額をする防衛予算によって、「反撃能力」を含めた防衛力の抜本的強化を早期に実現する強い決意を述べ、オースティン長官は、日本の取り組みに対して強い支持を表明。抜本的に強化される日本の防衛力の下での同盟の役割・任務の分担について集中的な議論を速やかに実施させることを確認した。

 両閣僚はまた、日米協力の下での反撃能力の効果的な運用、事態の発生を抑止するための平素からの日米共同による取り組み、あらゆる段階における迅速かつ効果的な日米間の調整などについて議論を深めていく必要があることで一致した。

 また、情報収集、警戒監視、偵察(ISR)能力強化の観点から、米空軍無人機MQ9の鹿屋航空基地への一時展開、日米共同情報分析組織(BIAC)の運用開始を歓迎した。

 さらに、同盟の抑止力・対処力にとって技術的優位性の確保が死活的に重要であるとの認識に立ち、装備・技術協力を加速させることで一致。その基盤を構成する枠組みとして、研究、開発、試験、評価プロジェクトに関する了解覚書、サプライチェーン協力の強化に向けた防衛装備品などの供給の安定化に係る取り決めに署名した。

 このほか、極超音速技術に対抗するための技術、高出力マイクロ波、自律型システムでの共同研究・開発に向けた議論の進捗(しんちょく)を歓迎。情報保全・サイバーセキュリティーが同盟の根幹であるとの認識を共有し、連携をさらに強化することも確認。浜田大臣は、その抜本的強化に向けた取り組みを徹底していく決意を表明した。

 防衛省によると、会談後、臨時会見を行った浜田大臣はオースティン長官から、日本に対する核を含めた米国の拡大抑止のコミットメントは、揺るぎないものである旨の発言があったとした上で、「非常に心強いもの。米国の拡大抑止がより信頼でき、より強靭(きょうじん)なものであり続けるための取り組みをさらに深化させていくことを確認した」と述べた。

 また、「2プラス2」で確認された米軍の態勢の取り組みを実行することで合意するとともに、在日米軍の安定的な駐留と日々の活動には、地域社会の理解と協力が重要であることで一致したことを明らかにした。

画像: 2プラス2「反撃能力」の効果的運用へ日米協力を深化

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