15旅団を「師団」に

 南西地域の防衛の中核として那覇駐(那覇市)に拠点を置く陸自15旅団の増強も防衛力強化の一環だ。

 安保3文書の「防衛力整備計画」では、「師団」に格上げするほか、現在の1個連隊を2個連隊にするなどの方針が明記された。防衛省などによると、浜田大臣は昨年12月6日の閣議後会見で、台湾有事を見据え、「島嶼部への攻撃に対する抑止力、対処力を高める」との認識を示した上で、「部隊配備によって、大規模災害や国民保護における対応の迅速化につながる」と述べていた。

 これに関連し、整備計画ではスタンド・オフミサイル防衛能力を強化するため、12式地対艦誘導弾能力向上型を装備した地対艦ミサイル部隊の保持、島嶼防衛用高速滑空弾を装備した部隊、島嶼防衛用高速滑空弾(能力向上型)、極超音速誘導弾を装備した長射程誘導弾部隊を新編する方針も盛り込まれた。

補給処の拠点を配備へ

 持続性・強靭性を強化するため、陸自は南西地域に弾薬や燃料、資材などを置く補給拠点(補給処支処)を沖縄本島の沖縄訓練場(那覇市)に配備することを検討している。防衛力整備計画によると、新編する方針で、補給統制本部を改編。各補給処を一元的に運用することで後方支援体制を強化する狙いだ。

 現在、南西地域に最も近い補給拠点は九州補給処(佐賀県吉野ケ里町)。現状では、同地域での作戦を考えると、支処の設置が必要との判断からだ。台湾有事などに備え、沖縄本島が最大の拠点である上、現有の駐屯地で広大な土地を確保できるという背景があるようだ。

 浜田大臣は昨年12月23日の閣議後会見で、「自衛隊が粘り強く戦う上で補給品は不可欠。平素より備蓄しておくことが重要。事態生起時などで部隊の活動を迅速かつ継続的に支援するための計画だ」と述べている。

大規模災害や国民保護対応の迅速化にも

 また、防衛整備計画では機動展開能力・国民保護にも取り組むことが記された。

 具体的には、島嶼部への侵攻阻止に必要な部隊などを南西地域に迅速かつ確実に輸送するため、(1)輸送船舶(中型級船舶=LSV)(2)小型級船舶(LCUおよび機動舟艇)などの各種輸送アセットの取得を推進するほか、輸送車両(コンテナトレーラー)、荷役器材を取得する、政府全体として南西地域における空港、港湾などを整備・強化する施策に取り組む方針だ。

 「台湾有事は日本有事」と警鐘を鳴らすのは、元陸幕長の岩田清文氏だ。

 防衛日報社のインタビューに対し、岩田氏は「台湾有事になったらどうなるのかということを国民にきちんと知らしめることが大事」とし、その上で、「中台紛争の生起の可能性は非常に高い」と指摘する。

 背景には、習近平氏に「毛沢東超え」の強い意思があり、そのための「台湾統一」であると見る。

 改定された安保3文書の最上位文書である国家安全保障戦略の「中国の安全保障上の動向」の項目では、「台湾について武力行使の可能性を否定せず台湾周辺における軍事活動に活発化」などと記した上で、国民の協力が重要なことを強調している。

 台湾有事を見据え、政府だけでなく、国民もまた同じ意識を持ち、「いざという時」に向けた強い覚悟を持たなければならない時期に来ている。

首相年頭所感「歴史に残る重みで示す」

 岸田文雄首相は1月1日の「年頭所感」で、日本が戦後最も厳しいとも言える安全保障環境に直面しているとし、周辺国などを念頭に、「力による一方的な現状変更や核による脅しを断固として拒否するという強い意思を、歴史に残る重みをもって示していきたい」と述べた。

 首相官邸ホームページによると、首相は昨年決定した安保3文書の最上位文書である「国家安全保障戦略」を踏まえた上で、「外交的努力をさらに強化し、その裏付けとなる防衛力の強化などにも全力で取り組む」と改めて強調した。

画像: 【防衛戦略 ㊥】「台湾シフト」進む南西諸島

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