【2022年12月16日(金)1面】 空自のF2戦闘機の後継となる次期戦闘機について、政府は12月9日、日本と英国、イタリアの3カ国が共通機体を共同で開発するとの共同首脳声明を発表した。防衛装備品について、日本が米国以外と共同開発を行うのは初めてという。防衛省はF2戦闘機(約90機)の後継として2035年(令和17)ごろの配備を目指しており、「より優れた戦闘機をより安く、より効率的に作ることができる」と説明している。
防衛省などによると、この事業は、「グローバル戦闘航空プログラム」(GCAP)。「より広範な経済的、産業的利益をもたらし、日本、イタリアおよび英国の雇用や暮らしを支えるもの」とした上で、各国の技術力を集めて3カ国全てが将来にわたって最先端の戦闘航空能力を設計、配備、改修することができるとの考え方を示した。
また、共通の機体を開発しながらも、安全保障環境の変化に応じて各国で独自の改修ができるなど、柔軟な対応を可能にする体制づくりも目指す。
日本からは、三菱重工業、IHI、三菱電機、英国からBAEシステムズとロールス・ロイスなど、イタリアからレオナルドなどが参画する方向で、ステルス性能や高性能レーダーを装備するほか、無人機や人工衛星などと連携できる機体を目指す。
声明では、「われわれの高度な防衛力、技術的優位を加速させるとともに、われわれの防衛協力、科学技術協力、統合されたサプライチェーンを深化させ、また、われわれの防衛産業基盤を一層強化する」としている。
読売新聞によると、30年ごろに製造を開始する見通しで、計300機以上の保有が見込まれ、完成品の海外輸出も目指す方針だ。
防衛大臣「経済の革新促し、平和と安定の礎に」
次期戦闘機について日英伊の3カ国が共同開発することについて、浜田靖一防衛大臣は12月9日の閣議後会見で、「この協力がわが国の経済全般の革新を促すとともに、インド太平洋地域と欧州地域の平和と安定の礎(いしずえ)となることを期待している」と強調した。
また、英国が輸出を重視していることを踏まえ、この次期戦闘機の第三国への輸出を可能にするために「防衛装備移転三原則」の運用指針の改定について問われたが、「パートナー国を通じた将来的な第三国への輸出については、新たな『国家安全保障戦略』などの策定に向けた議論の中で検討する」にとどめた。
その上で、「3カ国の技術を結集し、コストなどを分担しつつ、将来の航空優勢を担保する優れた戦闘機を開発するもの。量産機数の増加や国際的に活躍する次世代エンジニアの育成などを通じ、わが国の防衛生産・技術基盤を維持・強化してまいります」と述べた。