【2022年12月2日(金)1面】 

画像1: 【国防 日本を護るために】日本の防衛政策に大きな影響を与える12月

防衛力抜本強化、「安保3文書」改定、5年度予算・・・

 防衛力の強化が待ったなしの状況にある。中国や北朝鮮、ロシアなど周辺国の動きは強まる一方だ。11月22日の政府の有識者会議の提言をはじめ、12月は「安保3文書」の改定、防衛費が絡む5年度予算など、日本の防衛政策の大きな転換期ともなり得るさまざまな行事が続く。ワッペン企画「国防―日本を護(まも)るために」で随時、報告する。

日本の進路は―まず政府の有識者会議の報告書から
「反撃能力」の保有は不可欠

 防衛力の抜本的な強化を検討してきた政府の有識者会議(座長・佐々江賢一郎元駐米大使)は11月22日、報告書をまとめ、岸田文雄首相に提出した。日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中、5年以内に抜本的に強化しなければならないとし、焦点の一つとなっていた「反撃能力」の保有と増強は不可欠と提言。国産の「スタンド・オフ」ミサイルの改良や外国製のミサイルの購入により、早期の装備を求めた。政府・与党は報告書を受け、12月末までにまとめる国家安全保障戦略などの「安保3文書」の改定を進める方針だ。

 会議の名称は、「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」。今年9月30日から計4回にわたり、(1)防衛体制の強化(2)総合的な防衛体制の強化と経済財政の在り方―について議論した。報告書の主な論点をまとめた。

■防衛力強化に関する政府の有識者会議の報告書ポイント

◎5年以内に防衛力を抜本的に強化する
◎反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有
◎継戦能力の強化が不可欠
◎防衛費増額の財源は国民全体で分かち合うべき
◎歳出改革で財源ねん出を優先的に検討
◎先端科学技術や公共インフラの安全保障分野での利用
◎防衛装備品の移転拡大

《防衛力の抜本的強化》

 報告書では、防衛力の強化の目的を、国民に「わが事」として受け止め、理解してもらえるよう、政府が国民に対して丁寧に説明する必要性を強調した。

《抜本的強化の必要性》

 戦闘領域が宇宙、サイバー、電磁波などの分野に広がり、「ハイブリッド戦」の展開となるなど、戦い方が大きく変容しているとし、そのためにも「5年以内に防衛力を抜本的に強化しなければならない」とした。

《反撃能力・継戦能力》

 インド太平洋におけるパワーバランスの変化や周辺国などが核ミサイル能力を増強する中、相手のミサイル発射基地などをたたく「反撃能力(敵基地攻撃能力)」の保有と増強が抑止力の維持・向上のために不可欠とし、発動には政治レベルの関与の在り方についての議論が必要とした上で、「今後5年を念頭に、できる限り早期に十分な数のミサイルを装備すべき」と提言した。

 継戦能力(組織的戦闘継続能力)の向上にも言及。抑止力と対処力の向上につながるとし、そのために弾薬や抗たん性の高い施設などの着実な整備を求めた。

 また、組織的な戦いを継続する継戦能力を高めるため、弾薬などを着実に確保していくほか、部隊指揮に専念するポストとして、自衛隊に新たに常設統合司令部と常設統合司令官の設置を早急に検討する必要があるとした。

《防衛産業・人的基盤》

 防衛装備品の研究開発から製造、修理、補給まで実際に担っているのは民間の防衛産業と位置づけ、より積極的に育成・強化を図っていく必要があり、とくに、「これから強化しなければならないサイバー部門に、国内企業が人や資金を投入しやすい環境をつくるのは政府の責務だ」とまとめた。

 また、防衛装備品の移転拡大を、日本の安全保障の理念と整合的に進めていくべきであることを強調した。

 さらに、自衛官・事務官の人材確保を「重要な課題」とし、危険を顧みず職務に従事することが求められている自衛隊員の処遇改善、退職自衛官の活用などを積極的に検討していくよう求めた。

《防衛費増額の財源》

 防衛費増額の財源については、歳出改革を優先的に検討し、国債の発行が前提となってはならないとした上で、「幅広い税目による負担が必要なことを明確にして理解を得る努力を行うべきだ」として、幅広い税目による国民負担が必要だとしている。

《縦割りの打破》

 外交力・経済力といった防衛力以外の国力の活用も不可欠。国全体で総合的に取り組むことを求めた。その上で、海上保安庁による法執行活動が死活的に重要とし、有事における防衛大臣による海保に対する統制、海保と自衛隊の連携も重要な課題だと指摘した。

 また、宇宙、サイバー、AI(人工知能)、量子コンピューティング、半導体など最先端の科学技術が経済発展の基盤と同時に防衛力の基盤にもなっており、総合的な防衛体制の強化にあたっては、安全保障分野の研究者だけでなく、広くアカデミアや民間の最先端の研究者の協力が必須。府省間の縦割りを打破して、政府と大学、民間が一体となって防衛力の強化にもつながる研究開発を進めるための仕組みづくりに早急に取り組むべきだとしている。

《公共インフラ》

 有事に備えて、自衛隊が沖縄県の先島諸島など南西諸島にある港湾や空港を普段から活用できるよう、地元の協力を得ながらルールづくりに取り組むことを求めた。

 報告書では最後に、国を守るのは国民全体の課題であり、国民全体の協力が不可欠とし、「国民各層の負担能力や現下の経済情勢へ配慮しつつ、財源確保の具体的な道筋をつける必要がある」と提言した。

報告受け首相、「よく整理された内容」

画像: 報告書を受け取る岸田首相(右)=首相官邸ホームページから

報告書を受け取る岸田首相(右)=首相官邸ホームページから

 首相官邸ホームページによると、岸田文雄首相は11月21日の第4回有識者会議で佐々江座長から取りまとめ案の報告があったとし、終了後、「よく整理された内容。これから、与党ともしっかり調整しながら検討を進めていく」と述べ、今後も防衛力の内容の検討、そのための予算規模の把握や財源の確保について一体的かつ強力に検討を進めることを強調した。

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