自衛隊に大きな信頼と勇気を与えた

 【2022年7月14日(木)1面】 遊説中に銃撃され、死亡した安倍晋三元首相は、常に日本のあるべき道を提示してきた。首相時代は自衛隊の最高指揮官として、憲法改正や自衛隊の憲法への明記など、防衛省・自衛隊の士気にも大きな影響を与えた。「真に国民のための自衛隊たれ」「私と日本国民は常に、自衛隊とともにある」「自衛隊員の姿は国民の誇り」…。観閲式や防衛大学校卒業式などの行事でも安倍氏は自衛隊に大きな信頼を寄せながら、勇気を与え、鼓舞し続けてきた。首相官邸、防衛大学校ホームページなどから、そのさまざまな言葉を振り返った。

「自衛隊最高指揮官」の言葉を振り返る

 安倍氏は2度にわたって首相を務め、その期間は通算8年8カ月に上り、日本政治史上、異例の長期政権を実現した。

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 平成26年3月22日に行われた防衛大学校の卒業式では、大雪災害や豪雨被害で活動を続けた自衛隊員の姿が「国民に大きな勇気を与えてくれた。今ほど、自衛隊が国民から信頼され、頼りにされている時代はかつてなかった。国民に安心を与える存在であってほしいと願う」と述べ、幹部自衛官の道を歩む学生たちにエールを送っていた。

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「被災者にとって『希望の光』だ」

 同28年10月23日に執り行われた「平成28年度自衛隊記念日観閲式」では、この年に発生した熊本地震や相次ぐ大雨などを取り上げ、「自然災害の現場には、必ず、諸君たちの姿があった。不安な時を過ごす被災者にとって、まさに『希望の光』だったと思う」と述べた。

 また、3年前、同じ場所で行われた観閲式で訓示した「真に国民のための自衛隊たれ」という自衛隊創設以来の理念を改めて示すとともに、「その身を持って、実践してくれる隊員諸君を大いに頼もしく感じる」とたたえた。

 その上で、「24時間、365日、自衛隊は眠りません。私と日本国民は、常に諸君をはじめ全国25万人の自衛隊とともにある。その誇りと自信を胸に、自衛隊の果たすべき役割を全うしてください」などと訓示した。

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 「安全保障政策の根幹となるのは、わが国自身の努力にほかならない。わが国の平和の最終的な支えが自衛隊

 日本を取り巻く安全保障環境が格段に速いスピードで厳しさを増していた平成30年3月18日の防大卒業式では、将来の幹部たちにこんな言葉を強調した。そして、国民を守るために真に必要な防衛力のあるべき姿を見定めることを誓った。

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 同じ平成30年の観閲式では、国民のそれまでの自衛隊に対する思いに触れ、「60年を超える歩みの中で自衛隊の存在は、かつては厳しい目で見られた時もあった」とし、「それでも、歯を食いしばり、ただひたすらにその職務を全うし、今や国民の9割は敬意を持って自衛隊を認めている。まさに、諸君自身の手で信頼を勝ち取った」と述べ、果たすべき役割を全うすることを求めていた。

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 新型コロナウイルス感染症の波が日本にも押し寄せ始めていたころだった。

 令和2年3月22日に行われた防大卒業式に出席した安倍氏は訓示で、「延べ8500人を超える自衛隊員が任務にあたり、活動を完了したクルーズ船『ダイヤモンド・プリンセス号』では、PCR検査で医官がわずか10日あまりで2200人を超える検体採取を完了した」とし、従事した隊員からは一人の陽性者を出さなかったことをたたえていた。

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 報道などによると、今年6月30日、安倍氏は愛媛県新居浜市で行った街頭演説で、「日本を守るために命をかけるのは、自衛隊だ」「自衛隊の違憲論争に終止符を打ちたい」などと、憲法改正の実現を改めて訴えていた。

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 安倍氏は、首相退任後も保守派の論客としてさまざまな場で持論を展開していた。防衛費の増額、反撃能力の導入、何よりも年末にも予定されている「安保3文書」の改定など、さまざまな政策の推進にあたり、安倍氏の存在は、防衛省・自衛隊にとって大きな〝後ろ盾〟となっていたともいえる。

画像: 最高指揮官として部隊を観閲、隊員の士気を高めた(平成30年の観閲式で)

最高指揮官として部隊を観閲、隊員の士気を高めた(平成30年の観閲式で)

米国防長官から岸大臣に哀悼の意 安倍氏の功績たたえる
 
 防衛省は7月9日、安倍元首相の死去で、同日、オースティン米国防長官から岸信夫防衛大臣に対し、哀悼の意を表する電話があったことを明らかにした。

 防衛省によると、長官自身、国防省職員全員が、同盟国として、また、友人として、岸大臣、日本国民とともにある旨の発言があり、安倍元首相の日米同盟における日本の役割の拡大などを通じた同盟の深化、また、インド太平洋地域における同盟とパートナーシップの強化に対する功績をたたえたという。

 これに対し、岸大臣から、オースティン長官に謝意を表するとともに、民主主義に対する冒涜(ぼうとく)であるこのような卑劣な蛮行は断じて許されないこと、また、元首相の遺志を受け継ぎ、オースティン長官と連携し、引き続き日米同盟の強化に取り組んでいく決意を表明した。


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