【2022年4月22日(金)1面】 企業や個人などによる動画配信による広報戦略が盛んだ。静止画と比べて受動的な人にも届きやすく、インターネットの普及で視聴者にはより身近になってきた。その傾向は防衛省・自衛隊も同じ。とくに、積極的な展開を見せるのが海上自衛隊。令和2年10月、公式YouTubeチャンネル内に動画シリーズ「艦Tube(かんつべ)」を立ち上げた。コロナ禍で広報機会が激減したことの影響を補うためのアイデアで、国民からの理解を得て、親しみやすさをアピールするのが狙いだという。

海上自衛隊 公式チャンネル内の「艦Tube」が好評

視野と聴覚両方に

 動画のメリットは、短時間で多くの情報をアピールでき、文字や画像などでは伝えきれないような細かいニュアンスまでも伝えられる。

 もちろん、視覚と聴覚両方に訴えかけることができる。企業などにとっては、その商品に合わせたBGMを使うことで、音を通して印象付け、購買意欲にもつなげることができる。すべてにおいて、記憶に残りやすく、情報量も多い。ユーザーに対して、より理解してもらいやすい「材料」を提供できるのだ。

 こうしたさまざまな利点があり、日々、国民向けにPRに努めている自衛隊側も取り入れた。

 チャンネル登録者数が防衛省・自衛隊では最多の28万3000人(今年4月21日現在)いるのが海自だ。動画による広報は「海自の特色を生かし、国民の理解を得るとともに、親しみやすさをアピールすることで、高い広報効果が期待できる」(海幕広報室)という。

「潜入もの」は大人気に

 中でも、「艦Tube」は隊員自らが出演、撮影を担当。「護衛艦でカレーを作ってみた!」「潜水艦の訓練に潜入してみた!」「護衛艦のエンジンを起動してみた!」「護衛艦『まや』で出港してみた!」などのほか、「護衛艦のお風呂に潜入してみた!」では、普段寝ているベッドや風呂などを紹介。さまざまな「自作映像」を制作し、配信してきた。

画像: 【艦Tube】「護衛艦『まや』で出港してみた!」

【艦Tube】「護衛艦『まや』で出港してみた!」

画像: 【艦Tube】護衛艦のお風呂に潜入してみた!

【艦Tube】護衛艦のお風呂に潜入してみた!

 また、「輸送艦『おおすみ』に潜入してみた!」では、車両甲板や巨大クレーン、医務室など、輸送艦ならではの設備を紹介するなどしたほか、潜水艦では「乗組員が一体となって魅せる回避行動中の動作」など、普段なかなかお目にかかれない動作も。公式チャンネルには、緊迫感あふれる発令所の雰囲気に、「秘密が多い潜水艦。ここまで見せていただけただけでも感謝です」など多くの書き込みが寄せられた。

 新しいところでは、今年4月、「潜水艦『しょうりゅう』の隊員に聞いてみた!」を公開した。海自公式ツイッターでは、「潜水艦の経理員の仕事とは!? そして陸自出身の隊員が、海自を選んだ理由とは!?」などと書き込み、関心を集める工夫もしている。

 動画の中で、隊員たちは自称「日本初の制服系公務員ユーチューバー」としてPR。若者を中心に人気となっている「ユーチューバー」という言葉の響きが注目度をアップさせてい

狙いは「Z世代」

 その若者といえば、艦Tubeでは「Z世代に聞いてみた!」も特集した。

画像: 【艦Tube】Z世代に聞いてみた!

【艦Tube】Z世代に聞いてみた!

 主に1990年半ばから2000年までに生まれ、「Z世代」と呼ばれる入隊間もない若い世代にスポットを当て、(1)海自を選んだ理由(2)入ってよかったこと(3)一番楽しいこと―などについてインタビュー。その答えから、「国を護る」という気持ちがあふれた生の声を届け、注目を集めた。

 海自のYouTubeでは、このほか各種訓練の動画や音楽隊の演奏動画など幅広い世代に関心を持ってもらえる動画も発信。さらに、公式ツイッターやインスタグラムで、「発射シリーズ」などの工夫を凝らした動画もアップした。海幕広報室では「特に、Z世代の10~20代を含めた募集対象者が海自に興味を持ってもらいたい」とする。

 一方で、頭を悩ませていることもある。内容や演出がやりすぎてしまうと品位を損なうからだ。海幕では「堅くなりすぎず、ふざけた内容にならないという高いレベルのバランス感覚を持って取り組む」とした上で、「海自の『品位』と『精強さ』を損なわないようなギリギリを狙った動画を公開していく」と話している。

もちろん海自以外も積極配信中「陸自の歌姫」「強靭な自衛官」など

 自衛隊では、海自のほかにもさまざまなアイデアあふれる動画が登場している。

 【陸自】中部方面隊は、男女3人の隊員(ひょっとこ曹長、ギリー2曹、おかめ3曹)が仮面などを使い、「ユーチューバー」としてさまざまな企画に挑戦している。たとえば、「現役自衛官が障害走をやってみた」など。コメント返しの動画=写真=も投稿し、親しみやすさを重視した広報チャンネルとなっている。

画像: 【公式】コメント返し2【陸上自衛隊 中部方面隊】

【公式】コメント返し2【陸上自衛隊 中部方面隊】

 また、「陸上自衛隊の歌姫」として注目を集める中方音楽隊の鶫(つぐみ)3曹(現在は中央音楽隊)の歌唱動画=写真=が195万回再生を突破するなど、話題になった動画は多い。

画像: 【コロナに負けるな!】第6弾 中部方面音楽隊「長崎の鐘(鶫真衣)」いまこそ音楽の力で心をひとつに『終戦75年追悼』 www.youtube.com

【コロナに負けるな!】第6弾 中部方面音楽隊「長崎の鐘(鶫真衣)」いまこそ音楽の力で心をひとつに『終戦75年追悼』

www.youtube.com

 福知山駐7普連の広報チャンネルは、参加者に迫力ある訓練の様子を見学させる「ドライブ・イン・コンバット」を手がけたYouTubeチャンネルだ。

 ここの自慢は編集クオリティーの高さ。動画1本あたりの視聴回数が高く、軒並み10万回を超えている。自衛隊公式関連では、陸海空自の本家を除いて、チャンネル登録者数1位を誇っている。

 【地本】地本の中で1位の登録者数なのが静岡地本。令和2年8月に公開した「防人達のめし」シリーズが話題となり、多くの視聴を集めた。一時、動画公開数は減少傾向にあったが、今年1月末に「自衛隊員に聞いてみた!」のインタビュー動画がまとめて7本公開されるなど、再び力を入れている様子がうかがえる。

 東京地本は、年間を通して計画的に動画を公開し続けている。幹部自衛官へのインタビュー動画など、人物を対象とした動画が多く、自衛官を目指している学生など、募集広報の面で力を入れているようだ。

 「強靭(きょうじん)な自衛官」をキャッチフレーズに、「自衛官のたくましさ」と「山形の地域性」をコンセプトに、2年前、募集広報用の動画を公開したのは山形地本

 モデルは神町駐に勤務する陸自隊員5人(うち女性1人)と地本の海自部員2人(同1人)。自衛隊車両をバックに、戦闘服を脱いでパンプアップした強靭な上半身の筋肉美を披露し、「常に有事に備える、たくましい自衛官」をアピールした。写真は募集ポスターにも使用し、JRの車内や駅の構内に展示された。


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