【2022年3月10日(木)2面】 防衛省は3月4日、ロシアによるウクライナ侵略を受け、同日、国家安全保障会議(NCS)で防弾チョッキ、鉄帽(ヘルメット)、防寒服、天幕、カメラのほか、衛生資材、非常用糧食、発電機などを自衛隊機などによりウクライナへの提供の検討を発表。8日、自衛隊法や「防衛装備移転三原則」の運用指針を改定するなどして輸送を正式に決定した。これを受け、岸信夫防衛大臣が自衛隊の部隊などに対し、自衛隊機に対する派遣命令を発出。同日夜、愛知県の空自小牧基地からKC767空中給油・輸送機1機が防弾チョッキなどを積載し、隣国のポーランドに向けて出発した。

 3月8日の関係幹部会議終了後、臨時会見をした岸大臣は、自衛隊の航空機による装備品の輸送を開始するよう命じたことを明らかにし、「国際法違反の侵略を受けているウクライナへの支援であり、欧州のみならず、アジアを含む国際秩序の根幹を揺るがす行為に対し、国際社会と結束して毅然と行動することは、わが国の今後の安全保障の観点からも極めて重要」と述べた。

岸大臣「国際社会と結束し、ウクライナ国民を最大限支援」

 その上で、「志を同じくする仲間と手を携え、自由を愛し、民主主義を信望し、人権が守られないことに深く憤り、強権をもって秩序を変えようとする者があれば断固としてこれに反対していかなければならない。われわれはウクライナの皆さんとともにある。今この瞬間も、強権をもって秩序を変えようとする者に果敢に抗い続けているウクライナの皆さんに対して、今後できる限りの支援を行っていく」と強調した。

 防衛装備移転三原則が紛争当事国への輸出を禁じている防弾チョッキなどについて、防衛省などは8日、(1)海外移転の仕向け先はウクライナであり、最終需要者はロシア連邦の侵略に直面するウクライナ政府のため、適切(2)移転される防弾チョッキは、適正管理が確保される(3)防弾チョッキは、諸外国や民間の同様の装備品と同等の性能を有するものである―などを考慮し、「日本の安全保障上の問題はないと認められる」とした。

 運用にあたっては、迅速に支援する必要があるため、運用指針に自衛隊法の規定に基づき非殺傷の防衛装備品に限り、ウクライナへの提供に限定して可能とする項目を追加し、8日、持ち回りの国家安全保障会議4大臣会合で審議した結果、海外移転を認め得る案件に該当することを確認したという。

 また、海外移転は、ウクライナ政府と国際約束を締結し、日本から移転される防弾チョッキを目的外使用することを禁止し、第三国移転する場合には、日本の事前同意を義務付けることにより、防弾チョッキのウクライナへの移転後の適正な管理を確保した上で実施するとした。

 3月4日の会見で岸大臣は、「防衛装備移転三原則で移転を禁止している紛争当事国は、『武力攻撃が発生し、国際の平和および安全を維持し、または回復するため、国連安保理がとっている措置の対象国』であり、ウクライナはこれに該当しないと考えている」と述べていた。

 また、装備品の提供は、「ウクライナ人の命を守るもの。国際的な紛争の拡大を助長するものではない」と強調していた。

ウクライナ情勢受け止め、防衛力強化加速会議

画像: 写真:防衛省・自衛隊ツイッターより

写真:防衛省・自衛隊ツイッターより

 防衛省の「第5回防衛力強化加速会議」(議長・岸信夫防衛大臣)が3月3日、同省内で開催され、大臣、副大臣、政務官のほか、事務次官、防衛審議官、各幕僚長ら防衛省・自衛隊幹部が出席した。

 会議では、施策の現状と課題・今後の重点施策について議論。今回のウクライナ侵略で起こった現実を真正面から受け止め、国民の命と平和な暮らしを守り抜くため、安全保障の根幹である日本の防衛力強化を加速していくことを確認した。


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