世界はなんだかんだで広いものです。
 その広さの全部を見ることって、多分世界一周した人でも難しいのだと思います。今があり過去があり、この地球にある世界という概念の中には人の歴史があり、文化があり、生活があります。更に生物全般にも目を向ければ、それはもう途方もない事でしょう。
 私たちが地球の裏側のことについてあんまり詳しくないように、地球の裏側の人達も私たちのことをあんまり知らないのかもしれません。

 とはいえそんな広い世界で、すべてを見れないからといって嘆くことはありません。
 このコラムでも何度も言っているように、「知る」ことで広がる視野もあります。百聞は一見に如かずなんて言いますが、それでもやっぱり百を聞き、百を知ることだって重要なのです。

世界に目を向けてみることで分かること

 ということで今回はそんな「世界の戦争・歴史」棚をご紹介。
 この棚、最初は本当に数冊しかなかったのですが、ここ半年で一気にその数を増やしました。増えたジャンルは主にユダヤ関連図書とフリーメーソン関連の本。
 ユダヤ関連は日本とも無関係ではないしユダヤ問題も目を向けるべき話なのですが、フリーメーソンはどちらかというとオカルト寄りなのでは……?などと思ってしまう私はまだまだ視野が狭いのかもしれません。フリーメイソンもまた歴史のひとつ……なのだと思います。おそらく。

 ユダヤといえば、以前少しだけ紹介した「日本人とユダヤ人」(著:イザヤ・ベンダサン)もこの棚にあります。神戸市で生まれたユダヤ人である著者が、ユダヤと日本を比較して日本の姿を明らかにする、といった内容のベストセラー本ですね。イザヤ・ベンダサン……一体どこの山本七平なんだ………?

 それでは今回はそのあたりも含めて、世界のすがたが見られる本を紹介していきましょう。

画像: 世界に目を向けてみることで分かること

「特派員メモ 世界41ヵ所からのミニ・エッセイ」(編・朝日新聞外報部)

 海外にいる朝日新聞特派員が自由に筆を走らせた、報道とは少しだけ離れた身辺雑記。
 しかしただのエッセイと侮ってはいけません。よく書いているように、生の体験を書き記した記録というのはかなり貴重なもの。1970年代を生きた記者たちから見た世界の姿は鮮やかで細やかで、まさに「神は細部に宿る」を体現しています。
 場所はアジア・南太平洋・中東・アフリカ・アメリカ・ヨーロッパ。己で見た社会情勢とそれについての考察が多めですが、「ミニ・エッセイ」と銘打っているだけあって一口サイズで読むことができるのが魅力ですね。
 1ページで終わる気軽さと、なかなか読みづらい難しい話題。これらふたつが組み合わされることによって、ここでしか味わえない情報・思考をじっくりたっぷり読むことができます。さながらちょっとずつ色々なものを楽しめるバイキング。
 約50年前、世界はどんな広がりをしていたのか・現代との違いも楽しむことができる一冊です。

「世界の歴史がわかる本」(著:綿引弘)
【帝国主義時代~現代】篇

 表紙に「歴史を探れば『現代』が見えてくる!」とありますが、まさにその通り。過去と現代が地続きなように、現代もまたいつか歴史となるもの。同じ並行線上に歴史があるのなら、それは学ばなければ損というものです。

 突然ですが、学校で習った歴史の授業ってどう思いました?
 あれ、短いんですよね。一年かけて日本の歴史をやるけれど、近代史をやるのは三学期やら終盤になってから。それもだいぶ詰め詰めで、結果細部まで印象に残ることがありません。聞いてみたら今の学生さんもそうらしく、図書室に来てくれている学生さんも「自分がやりたいのはもう少し突っこんだ内容なのに……!」と歯噛みしていました。いつの時代でもそうみたいです。

 しかし、近代史が詰め詰めになってしまうのもわからなくはありません。だって本当にぎゅうぎゅうに物事が詰まっていて、今までは日本国内で済んでいたことが世界と交流するようになり争いが起き、あの出来事の発端はこの出来事、これの指揮官はこっちの戦いでも偉い立場にいて……など、木の枝のように繋がりが多く譜雑なの近代史というもの。(それ以前の歴史も深掘りすれば繋がりが多いのですがそれは置いといて)あっちこっち寄り道をしていいのなら、丸一年近代史に費やしたっていいくらいです。

 そんな複雑な近代史をわかりやすくまとめた本、それがこの「世界の歴史がわかる本」。「どうして世界大戦は起こったのか?」「アジアの植民地化はどう進められたか?」「イギリスとドイツの統一国家はどう作られたのか?」等々、まさに近代史特化型歴史の教科書(文庫のすがた)と言っても過言ではない作りとなっています。

 問いの多くが「なんとなく理解していたけど説明しにくい」「聞いたことあるけどそこまで詳しくないかも……」といった良い意味でのポピュラーさなのもいいですね。しかもわかりやすいので、歴史の隙間を埋めたい人にも、歴史をこれから新規で詰めていきたい人にもお薦めしたい本です。

「ユダヤ問題と裏返して見た日本歴史」(著:三村三郎)

 ユダヤ問題とはなにか。一言で言えばユダヤ人に対する差別や偏見に関連する問題の事です。あまり歴史に詳しくない人でも、このあたりの話はご存じの方が多いのではないでしょうか。
 しかし、ユダヤ関連の話題はそれだけではありません。それが前述した「ユダヤ関連は日本とも無関係ではない」に込められたお話………そう、「日ユ同祖論」というやつです。

 日ユ同祖論とは、日本人の祖先が、アッシリア人に追放されたイスラエルの十支族のひとつなのではないか?という説。このあたりについて説明し始めると本題からズレ始めるので割愛します。一言で言えば、行方が分からないままの民族の一部は日本に渡ったんじゃないの?日本人のルーツって、ユダヤ人と一緒なんじゃないの?というお話。

 そんな日ユ同祖論を考察し、神の時代から人の時代まで、日本の歴史をさまざまな角度から見つめ直す今書。いやもう、面白いです。純粋に「こういう考え方と見方があるの!?」という新たな着眼点に驚き、発見に心を躍らせてしまいます。
 しかしこういった類の本、人によっては「そんな眉唾な……」と思うかもしれません。しかしこの場において、この本と向き合う時には「信じて読む」というよりは「こういう見方もあるのか!」という純粋な未開の地への興味や好奇心。店番、普通に日本の神話や古代の話も好きなので読んでいて大変面白かったです。

 ちなみに著者である三村氏はこの本を「研究著書でもないが随筆でもない」と言い、「日本歴史に注目し興味を持つに至らしめれば目的を達する」「ことの正否や結論は、みんなで歴史を勉強してご随意に決定したらよいと思っている」と、こういった歴史書にありがちな「これが正しい!」と押しつけがましいものではなく、「こう思うんだけど皆どう思う!?」の、「この」の部分を全力で読者に投げてくるようなパワーと、「こんな杜撰な随筆歴史くらいで動揺したりグラつくような国体だったらむしろ根底から覆してやり変えた方がましである」と言ってしまう思い切り、そして思考の余地や「こういう意見も面白いよね」といった受け取り手の余裕も残してくれる、そんな不思議な本です。難しそう……と肩ひじを張らずに、ぜひ読んで欲しい一冊です。

 さて最後に、せっかく数があるのでフリーメーソン関連の本からも一冊紹介しましょうか。ちょっと脇道に逸れてしまいますが、たまには寄り道も大事というものです。

「フリーメーソン」(著:リュック・ヌフォンテーヌ 監修:吉村正和)「吉」は正しくは士の下が長い「吉」

 シリーズ「知の再発見 絵で読む世界文化史」の中の一冊。ちなみにこのシリーズ、他にも色彩、天文学、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ゴッホなどといった豊富なジャンルを取り扱っているので、気になる人はラインナップを探してみたら刺さるものが見つかるかもしれません。

 そんな知的好奇心を擽られる面々の中で怪しい光を放つ「フリーメーソン」。秘密結社と呼ばれているように、なんとなく未知のものというイメージの強い組織ですが、そもそもどんな主義思想で活動しているの?起源はいつ?どう広がっていたの?等々、フリーメーソンに関する謎を徹底解説。「絵で読む」と言っているだけあって、写真や絵が豊富に記載されており、イメージしやすく理解が早くなるのもポイント。そして一番うれしいのは、組織について持ち上げるでもなく下げるでもなく、あくまで資料としてのスタンスを崩さない点。元フリーメーソンの人への1958年のインタビューなどもあり、見どころ満載の一冊です。

 そういえばお台場にあるヴィーナスフォートにフリーメーソン専門店がありますね。雑貨屋さんの奥に専門店スペースがあり、そこは会員しか入れないのだとか。案外近くに秘密の一端は息づいているものです。(なお店番は入る勇気が出し切れず、しばらく入口付近でうろうろ……まごまご……していました……)

 こうして見ると「世界の戦争・歴史」の棚、多種多様なジャンルや出来事を扱った本があって、幅広く色々なものが見られる稀有なタイプの棚です。
 とはいえ、まだまだ「世界」という名前の大きさにはほど遠い冊数。これからこの棚がどんどん国際色豊かになっていく日が楽しみでたまらない店番なのでした。

アクセス

画像4: 永遠の図書室通信 第46話「世界の戦争・歴史」

永遠の図書室
住所:千葉県館山市北条1057 CIRCUS1階
電話番号:0470-29-7982
営業時間:13時~16時(土日祝のみ17時まで) 月火定休日
システム:開館30分までの滞在は無料、それ以降は一時間ごとに500円かかります。
駐車場:建物左側にあります、元館山中央外科内科跡地にお停めできます。
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