【2021年12月3日(金)1面】 将来の陸上自衛官を養成する陸上自衛隊高等工科学校(神奈川県横須賀市、学校長・岩名陸将補)。卒業生には、高機能化・システム化された装備品を駆使・運用するとともに、国際社会でも自信を持って対応できる自衛官として、大きな期待が寄せられる。今年度の応募の受け付けは11月にスタート。高工校の採用をめぐるデータなどと併せ、岩手、千葉、島根の説明会対応や旭川、兵庫の関連話題の様子を報告する。
卒業生隊員と懇談 理解を深める|岩手地本
岩手地本(本部長・武本1陸佐)は10月30日、盛岡合同庁舎5階で「高等工科学校説明会」を開催した。
事業は、高工校に興味を示す生徒、受験を考えている生徒に対し、同校の理解の促進を図るのが目的。高工校の卒業生で、方面特科連隊2大隊の岡原2陸佐(35期、当時は少年工科学校)、9高射大隊本部管理中隊の池端3陸曹(62期)の支援を受けて行い、説明会には中学3年生4人とその保護者4人、進路指導の教諭1人が参加した。
冒頭、本部長が参加者に対してあいさつと説明会の趣旨を話し、その後、岡原2佐と池端3曹による高工校の概要説明、生徒との懇談を行った。概要説明では、体験談や思い出話などを交えた説明が行われ、参加者の興味を引いていた。懇談は、質問形式で行われ、関心を持った参加者からの質問などは予定された時間を超えて行われた。
参加した生徒からは「数学が苦手だが、対策はありますか」「入校学生の上下間の関係はどうですか」など勉強面や生活面に対するさまざまな質問が寄せられた。
また、保護者からは「高工校のことが理解できました。受験に向けて本人を応援していきます」などの意見があり、教諭からは「大変参考になりました。今後の進路の選択肢の一つとして生徒に周知します」との言葉があった。
また、11月13、14の両日には、武山駐で行われた「高等工科学校受験希望者説明会」の参加を支援した。
説明会は、受験希望者らを対象としたオープンスクールを実施して高工校の魅力を周知し、自衛隊への理解を深め受験意欲の高揚させるのが目的。岩手県からは受験希望者7人、保護者4人が参加した。
学校長のあいさつで始まった説明会は、学校の概要説明、施設・授業などの見学、高工校生徒による体験談、質疑応答など充実した内容。受験希望者たちは、興味津々で聞き入っていた様子がうかがえた。在校生の説明を聞いた一人は、「在校生のすばらしいエスコ―ト、同期と助け合い切磋琢磨(せっさたくま)する精神に感動し、自分もそうなりたい」と力強く語った。
また、参加した保護者からも、「施設見学や卒業生保護者からの体験談を聞き、高工校について理解を深めることができた」とのありがたい感想があった。
岩手地本は「引き続き募集対象者のみならず、保護者や学校教諭を含めた説明会を開催し、自衛隊への理解の促進を図り、各種説明会を継続していく」としている。
施設、部活動などを見学|千葉地本
千葉地本(本部長・大山1海佐)は11月13、14の両日、高等工科学校で実施された「受験希望者説明会」に、対象者と保護者80人を引率・案内した。
はじめに、講堂で学校長の岩名陸将補のあいさつ、全般説明の後、生徒2人が同行する各グループに分かれ、施設などの見学を行った。
入校すれば実際に生活する居室では、整理整頓されたベッドや個人物品を見て「すごい」「うちの子もできるのか」などの声が聞こえた。
部活動の見学では、普段見ることがない銃剣道に興味を持つ対象者もいた。また、霊峰富士が望める野外のグラウンドでは、ドリル部の特別演技が展示され、間近で見る正確な演技や迫力に圧倒されていた。
同行した生徒の中には千葉県出身者がいて親近感が湧き、懇切丁寧な説明や整った環境に保護者からは「安心した。ぜひ、入校させたい」、また、対象者からは「先輩たちが格好いい。団体生活や部活が楽しそう」などの感想があった。
千葉地本は「これからも対象者や保護者に対し、親身の募集広報活動を関係部隊と連携しながら部員一同推進していく」としている。
卒業生は1.9万人 約8割は幹部自衛官に
「防衛白書」によると、陸自高等工科学校の応募者数は、推薦試験は増加傾向にあるものの、一般試験は令和2年度が1603人。5年前の平成28年度(2571人)以降、減少している。推薦、一般を含めて毎年300人以上の採用者があり、全体の倍率は下がってきている=表参照。
一方、高工校のホームページによると、令和2年度に同校から防衛大学校に進んだのは推薦11人、総合選抜6人。航空学生は海自に9人、空自に11人となっている。
また、同校の卒業生は約1万9000人に上り、陸曹として第一線部隊だけでなく自衛隊の司令部や機関などに勤務している。卒業生の約8割は将来的に幹部自衛官に任官し、全国各地の部隊・機関で活躍している。
所在地は神奈川県横須賀市御幸浜2-1 陸自武山駐屯地。学校長は岩名誠一陸将補。