【2021年11月12日(金)1面】 令和3年度の陸上自衛隊一般幹部候補生試験を突破した学生たちに対し、防衛省・自衛隊はさまざまなフォロー活動に努めている。防衛大学校や防衛医科大学校などの卒業生とともに、一般大学や大学院などを経た学生たちへの期待もまた大きい。陸上自衛隊では、東京・市ヶ谷駐で陸幕長が初めて合格者を激励。各地本でも、東京のイベントに引率したり、地元で説明会を開催。今後、入校する幹部候補生学校への研修・見学を実施する地本も。そこには、明日の日本を支える合格者たちに、「大きな責任、覚悟、自覚を持つ幹部に」という強い思いがある。

画像: 陸自幹部候補生試験の一般大合格者を陸幕長が激励|陸上自衛隊

 令和3年度の陸上自衛隊幹部候補生試験の一般大学からの合格者に対する「フォローイベント」が10月9日、東京・市ヶ谷の陸自市ケ谷駐で開かれた。上級幹部との懇談や施設の見学などを行い、イメージアップを図るのがねらいだ。今回は、約30年ぶりに陸幕長に就任した一般大学卒業の吉田圭秀(よしひで)陸将が積極的にイベントに加わり、陸幕長として初めて激励した。陸自トップの講話に、合格者たちは改めて入隊意欲を高めていた。

 イベントは、陸幕募集・援護課が主催した。3年度の一般大学からの合格者は2回の試験で計301人(うち大学院卒11人、歯科7人、薬剤科8人)。このうち、イベントには対面形式で76人、オンライン形式で24人が参加した。

 陸幕によると、イベントは(1)将来(入隊後15~20年)のイメージアップを促進する(2)入隊予定者相互の同期の団結を醸成する-などが目的で、「入隊確度の向上を図る」(陸幕)ねらいがあるという。

 防衛白書などによると、令和2年度の陸自幹部候補生試験の一般大学からの合格者は365人(採用者は215人)。

 フォローアップイベントでは、上級幹部の講話や一般大学出身幹部との懇談、施設見学(陸幕長執務室、募集・援護課、厚生棟)などを実施したが、今年は合格者にとってうれしい「ビッグプレゼント」があった。イベントの実施を聞いた吉田陸幕長が、「ぜひ、(合格者を)激励したい」と話し、初の陸幕長による激励が実現したのだ。

 今年4月に就任した吉田陸幕長自身、東京大(工学部)の出身。防衛省によると、陸幕長は旧陸軍や一般大学出身者が就いてきたが、1990年(平成2)以降、防衛大学校出身者が続いており、約30年ぶりに一般大学出身の陸幕長となった。

 陸幕によると、吉田陸幕長は「今まで育ててもらった陸自への『恩返し』で、自身で話す機会がほしい」と担当者に要望。この日、合格者たちを前に「大学を卒業して就職を決める中で、陸自を選択したことは間違っていなかった。現在、陸幕長の職に就かせてもらっているが、初級幹部の経験が自分の原点である」と話した上で、「将来の日本を創造するのは君たちだ。さまざまな経験をして頑張ってもらいたい」と熱く語った。陸幕長が陸自幹部候補生合格者を直接、激励するのは初めてのことだった。

 トップの貴重な話を聞いた合格者たちも、興奮が冷めやらない様子。「講話に大変、感銘を受けた」(千葉大、男性)、「講話が興味深かった」(明治大、男性)などと感想を話していた。

 合格者たちは、懇談や施設見学など一連のスケジュールを終えた後も、「もともと入隊を熱望していたが、参加してさらに入隊意欲が高くなった」(学習院大、男性)、「普段見られない所や幹部の仕事が詳しく分かった」(山口大、女性)と話すなど、イベントの効果が十分に表れた形となった。

自衛隊幹部候補生とは

 一般・歯科・薬剤科のコースから各自衛隊の幹部自衛官となる者(飛行要員含む)を養成する制度。(1)一般幹部候補生(2)歯科幹部候補生(3)薬剤科幹部候補生-と採用試験には3つのコースがある。

 大学の文系および理工系から進む通常の幹部候補生コースが一般幹部候補生で、ここには、陸自の音楽要員、海空自の飛行要員が含まれる。

 大学の歯学科から進むコースとして、自衛隊の衛生分野(病院勤務など)で活躍する歯科医官となる歯科幹部候補生。薬学科から自衛隊の衛生分野(病院勤務など)で活躍する薬剤官となる薬剤科幹部候補生がある。

 各コースとも、採用と同時に陸海空の曹長に任命され、幹部候補生として一定期間の教育を受ける。幹部自衛官の養成機関である陸海空各自衛隊幹部候補生学校で、初級幹部としての必要な知識と技能を学びながら、幹部としての資質を養う。教育期間は、約1年間(歯科幹部候補生は約6週間)。防衛基礎学、戦術、戦史、戦技訓練、体育、服務、防衛教養、実技などの科目があり、陸海空の特色を生かした教育が行われている。

 卒業後、一般幹部候補生は3陸海空尉(院卒者試験合格者は2陸海空尉)に昇任、歯科・薬剤科幹部候補生は2陸海空尉に昇任、幹部自衛官となる(防衛省ホームページなどから)。

最近5年の陸上自衛隊一般幹部候補生採用者数の推移

画像: 防衛日報社作成
防衛日報社作成

 防衛白書の「自衛官などの応募および採用状況」によると、平成28年度の陸自一般幹部候補生は応募者数2879人に対し、採用者数は206人だった。その後は、一時減少していたが、令和に入り再び増加傾向となっている=グラフ参照。令和2年度は、応募者が2238人(うち女性317人)。このうち、採用されたのは215人(同28人)。倍率は10.4倍(同11.3倍)だった。

 一方、陸自以外をみると、令和2年度では、海自が1252人(同203人)の応募者に対し、81人(同12人)を採用。空自は1649人(同355人)の応募に対し、80人(同21人)が採用された。

 また、3自合計では、5139人(同875人)の応募者に対し、採用者は376人(同61人)だった。


◆関連リンク
防衛省・自衛隊
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陸上自衛隊
https://www.mod.go.jp/gsdf/


幹部と懇談 不安を払拭|福岡地本

 福岡地本(本部長・深草1陸佐)は10月9日、陸上幕僚監部が企画する令和3年度「第2回陸上自衛隊幹部候補生学校入隊予定者に対するフォローイベント」に、福岡県出身の入校予定者3人の参加を支援した。

 イベントは、市ケ谷駐で今年度の一般幹部候補生合格者を対象に全国から参加者を募り実施。陸上幕僚長による入隊予定者への激励、一般幹部候補生出身の高級幹部からの講話、同出身幹部で現在陸上幕僚監部勤務の中堅幹部との懇談(アイスブレイク)および職場見学などが行われた。

 参加者からは「入隊するまでに何を準備すれば良いか」など積極的に質問が交わされ、また、参加者はこの機会に同じ志を持つ者同志交流を深めるため、積極的に連絡先の交換を行っていた。

 また、年齢の近い一般幹部候補生出身中堅幹部と懇談の際には、当時の入隊前の心境や初級幹部時代の目標など大小さまざまな質問も交わされ、参加者から「入隊に向けた不安の払拭(ふっしょく)や将来像を確立する機会となった」などの感想があった。

 福岡地本は「今後も入隊予定者に対するフォローを充実させ、万全な状況での入隊を確立できるよう取り組んでいく」としている。

画像: 陸上幕僚監部で勤務する中堅幹部との懇談

陸上幕僚監部で勤務する中堅幹部との懇談


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