【2021年11月2日(火)2面】 統合幕僚監部は10月23日、津軽海峡を通過し、太平洋を南下した中国とロシアの艦艇計10隻が、鹿児島県の大隅半島と種子島の間の大隅海峡を通過したと発表した。中ロの艦艇が同時に大隅海峡を通過するのを防衛省が確認したのは初めて。同18日以降、中ロが艦隊を組んで、日本列島をほぼ一周した形となり、政府、防衛省などは、極めて特異な行動とみて警戒を強めている(写真は防衛省提供)。

 岸田首相は10月25日、大阪府内の街頭演説で、中国とロシアの海軍艦艇10隻が日本列島をほぼ一周したことについて、「不穏な動きだ」と指摘。磯崎官房副長官も同日の記者会見で、「高い関心をもって注視している」と述べた。

 統幕などによると、これら10隻は、18日に津軽海峡を通過した後、20日午前1時ごろに千葉県の犬吠埼沖約130キロを南進。21日午前4時ごろには、伊豆諸島の須美寿島と鳥島との間の海峡を西進し、中ロそれぞれのフリゲート艦の艦載ヘリコプターの発着艦を海自が確認した。

 さらに、10隻は22日午後1時ごろ、高知県足摺岬の南約180キロの海域を通って大隅海峡を西進し、東シナ海へ向けて航行。23日午前10時ごろ、長崎県男女群島の南南東約130キロの海域で、海自が中国海軍レンハイ級ミサイル駆逐艦1隻の艦載ヘリの発着艦を確認した。

 大隅海峡や津軽海峡は国際海峡で、軍艦を含めて外国艦艇の通過に国際法上の問題はないが、防衛省・自衛隊では警戒を強めている。

 中ロの艦艇が初めて同時に津軽海峡を通過した際、山崎統幕長は21日の記者会見で、「両国軍による日本周辺での活動に高い関心を持って注視し、警戒・監視に万全を期したい」と述べた。

 統合幕僚監部が10月23日に発表した中国とロシアの海軍艦艇計10隻は次の通り。

 ・中国海軍=レンハイ級ミサイル駆逐艦(101)およびロシア海軍=ネデリン級ミサイル観測支援艦(331)

 ・中国海軍=ルーヤンⅢ級ミサイル駆逐艦(172)およびロシア海軍=ウダロイⅠ級駆逐艦(564)

 ・中国海軍=ジャンカイⅡ級フリゲート(573)およびロシア海軍=ウダロイⅠ級駆逐艦(548)

 ・中国海軍・=ジャンカイⅡ級フリゲート(515)

 ・中国海軍=フチ級補給艦(902)

 ・ロシア海軍=ステレグシチー級フリゲート(335)

 ・ロシア海軍=ステレグシチー級フリゲート(339)

ロシア艦艇は日本海へ

 統合幕僚監部は10月25日、海自が同23日午後10時ごろ、対馬の南西約140キロの海域で同海域を北東進するロシア海軍ウダロイⅠ級駆逐艦2隻、ステレグシチー級フリゲート2隻およびマルシャル・ネデリン級ミサイル観測支援艦1隻を確認したと発表した。

 その後、これらの艦艇が対馬海峡を北東進し、日本海へ向けて航行したことを確認した。

 また、10月24日午前10時ごろ、対馬の北東約60キロの海域でロシア海軍ステレグシチー級フリゲート1隻の艦載ヘリの発着艦を確認した。

 これらの艦艇は、10月22日午後1時ごろ、中国海軍艦艇とともに高知県足摺岬の南の海域で確認され、その後、大隅海峡を西進し、23日午前11時ごろに男女群島の南の海域で中国海軍艦艇と分離したもの。防衛省・自衛隊は、海自3ミサイル艇隊所属「おおたか」(佐世保)、12護衛隊所属「とね」(呉)、1航空群(鹿屋)および4航空群(厚木)所属「P1」により、所要の情報収集・警戒監視を行った。

 また、艦載ヘリの発着艦に対し、戦闘機を緊急発進させるなどして対応した。

 岸防衛大臣は10月26日の記者会見で、中ロの海軍艦艇計10隻が列島をほぼ一周したことについて、「このような大規模、長期間の活動は初めてで、極めて異例。わが国に対する示威活動を意図したものと考えている」とした上で、「安全保障環境が一層厳しさを増していることを如実に示すもの。重大な関心を持って注視する」と述べた。

 岸大臣は前日の25日、防衛省で米海軍のデル・トロ長官と会談した際も中ロの行動に懸念を示し、デル・トロ長官は「海軍同士での連携は重要。今後もパートナーシップの強化に努力をしたい」と述べていた。


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