【2021年10月21日(木)1面】 60年以上の歴史を持つ日本の南極地域観測事業で、海自が観測隊員たちの観測活動を支援・協力するのが海自砕氷艦「しらせ」だ。長い任務を終えても、次の出港まで国内の港で広報事業などに協力し、現地で採取した「南極の氷」は、学校などで子供たちに大きな夢を届けてくれる。国内の寄港先で、小学校の授業で活躍する地本からの投稿と併せ、10月12日に発表された次の「第63次隊」への協力内容と活動計画などを紹介する。

画像: 「しらせ」夢と希望のせて~国内寄港~|広島地本

 広島地本(本部長・鷹尾1海佐)は9月13日、海自呉基地に焼山みどり幼稚園の園児48人を含む88人を招待し、砕氷艦「しらせ」の出港を見送った。

 13日の出港の日、赤、黄、ピンクの体操帽をかぶった焼山みどり幼稚園の園児たちは、園の職員たちに導かれてFバースに集まった。園児たちは長さ138メートルの船体に「大きい」「すごい」などと目を見開き、驚きの表情を見せていた。

 出港の作業を終えて甲板上に集まった乗組員が手を振ると、園児たちも大きな船体を見上げながら、手製の国際信号旗(UW旗)を振ってそれに応えた。

 出港時刻となり、しらせが港を離れると「帽振れ」の合図で一斉にカラフルな帽子が振られ、グレー一色の呉基地がにぎやかに彩られた。見送り後は、護衛艦「とね」と「うみぎり」で艦内見学を行った。

 艦上で装備品の見学や乗組員と触れ合った後、呉地方総監部の公式キャラ「くれこ」と「やまと」が登場。愛らしい仕草で園児たちをもてなした。

 広島地本は「将来、園児たちの胸裏にこのオレンジの船体が思い起こされ、そのうちの何人かが自衛艦の乗組員となり、UW旗に見送られる未来が待ち遠しい」としている。

画像: UW旗でお見送り

UW旗でお見送り

画像: 旅立つ「しらせ」に帽振れ

旅立つ「しらせ」に帽振れ

画像: 説明に耳を傾ける園児たち

説明に耳を傾ける園児たち

画像: 大人気の「くれこ」

大人気の「くれこ」


◆関連リンク
自衛隊 広島地方協力本部
https://www.mod.go.jp/pco/hiroshima/

第63次協力、11月10日から

 統合幕僚監部は10月12日、海自砕氷艦「しらせ」による第63次南極地域観測協力についての概要を発表した。期間は、11月10日から令和4年3月30日までの予定。昨年の第62次では新型コロナウイルス感染拡大などに伴い、他国への寄港は中止したが、今回は豪州で燃料補給のために寄港。その後、南極基地へ向かう。しらせの艦長は酒井1海佐で、乗組員は約180人。

 統幕によると、人員輸送は往路が70人(海自横須賀基地~南極基地)、復路が67人(南極基地~横須賀基地)。また、物資は往路約1160トン、復路約400トン(廃棄物など持ち帰り物資)。

 支援作業は、(1)艦上観測支援(2)野外観測支援(3)基地設営支援-などで、しらせは10月27日に横須賀地区で出国行事を実施する。

 その後、新型コロナウイルス感染症拡大の状況を踏まえ、派遣に向けた準備の一環として乗組員全員に対しPCR検査を実施するとともに、14日間の乗組員の健康観察後、出国する予定で、横須賀基地の出港は11月10日。観測隊も同日、乗艦。しらせは、11月24日に燃料補給のため、豪州のフリーマントルに寄港する。

 総行動日数は141日。南極での行動は99日で、総航程は約1万8000マイルとなっている。

コロナ禍の対応方針

 新型コロナウイルス感染拡大に伴い、南極地域観測統合推進本部は6月30日に開催した第158回総会で、コロナ禍での基本的な考え方と対応方針を決めている。

 決定内容によると、基本的な考え方は(1)事業の継続(2)越冬隊の交代と物資の輸送(3)適切な感染防止対策を講じ、「しらせ」と南極での発生防止を徹底する(4)往復での燃料補給を計画し、観測期間の確保に努め、昨年実施できなかった氷床コア掘削計画や海洋観測など重要な観測を実施する-など。

 また、これらの考え方に基づく対応方針として、(1)乗船前に2週間の検疫期間を設ける(2)検疫期間前後に感染が確認された場合に備え、交代要員を用意する-などの第62次との相違点のほか、行動日数も62次実績の95日を大幅に上回る141日とすることなどを計画案として打ち出していた。


【あわせてこちらもご覧ください】
「しらせ」夢と希望のせて~南極の氷で体験学習~|福島地本
https://dailydefense.jp/_ct/17489388


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