「戦地シリーズの続きはどうした」という声が聞こえてきそうです。まさにその通り、ぐうの音も出ません。
実はこれを書いている時、戦地シリーズは書き終わってはいるのです。しかしどうしてもこの時期にしかできないことをしたいのです。読者の皆さま、しばしお付き合いください。
今回私がやりたいこと、それはずばり「夏休みの読書感想文について」。
読書感想文 おすすめ7選を紹介
皆さん、読書感想文は得意でしたか?
私は好きでした。最も今以上に文章が散らかっていたので、「得意である」と胸を張れるわけではないのですが……
しかし読書感想文というのは何しろ時間がかかるもの。選書し、読み込み、感想を書くというのは思っている以上にエネルギーがいることですからね。
そのうえ他にも多数の宿題を抱えている身でもあるわけで…………学生さんたちにおかれましては心中お察しいたします。大変だ。
そこで今回は、まだ読書感想文を書いていない皆さんにほんの少しでも力になりたい!ということで、「店番が選ぶ推薦図書」を始めさせて頂きます。
もちろん、もう読書感想文から卒業した皆さまにも、かつて読書感想文に向き合っていた大人の皆さまにもお読みいただけたらと思います。
戦争関連の書籍に特化した推薦図書、それではどうぞ。
「子供たちに残す戦争体験」(新潮社編)
カテゴリ:「女性・子供の戦争・暮らし」
おすすめ年代:小学校高学年~高校生
「かつての子供たち」による戦争体験集。
戦争について考えるとき、背景や情勢などから入ってもいいのですが、共感や人の感情という意味ではやはり生の声から戦争を知るのが良いでしょう。体験や人生は人それぞれ、ならば戦争もまた人それぞれの想いや体験、目に映したものは違うのです。
体験集、ということで様々な人の声が集められているのですが、ひとつひとつのエピソードは大体5~6ページなので、自分のペースで読み進められるという意味でもお勧めです。
「ねぼけ人生」(著 水木しげる)
カテゴリ:「手記・証言・談話」
おすすめ年代:小学校高学年~高校生
漫画家・水木しげる先生による、波乱万丈な半世記。
水木しげる先生といえば鬼太郎をはじめ妖怪漫画のイメージが強いですが、かなり戦争関連の漫画も描いてらっしゃいます。「総員玉砕せよ!」「敗走記」「白い旗」などもあり、そちらも勿論勧めたいのですが、今回は読書感想文ですからね。あえて文章の方を勧めたく思います。
「波乱万丈な半世紀」というとかなり派手で、武勇伝的な要素も入っていそうなイメージがします。
しかし、この本にはそういう派手な要素は入っていません。「ねぼけ人生」というタイトルや表紙のかわいらしさ、そして水木先生の性格が出ていて、大変なのだけれどどこかおかしみのある内容になっています。エピソードごとに章が分かれているので、気になったものをピックアップして感想を書いてみるのもいいかもしれません。
「ぼくは戦争は大きらい やなせたかしの平和への思い」(著 やなせたかし)
カテゴリ:「軍事教育・組織」
おすすめ年代:小学校高学年~高校生
アンパンマンでおなじみやなせ先生もまた、戦争を経験した人物のひとりでもあります。なんともあたたかみのある、優しい文章で綴られた戦争体験記なのですが、特筆すべきは「最前線ではない兵隊さんの話」という点です。
戦争体験集というと心にぐっと圧し掛かる重みがあるものが多数を占めますが、前述したとおり「戦争もまた人それぞれ」なのです。
戦争関連のものというと、どうしても読み進めていて心が苦しくなったり、辛くなったりする人がいると思います。戦争の事は知ってほしいけれど、受け止めるにはあまりに重い事だというのはよくわかっているので、そういう人には無理しなくて大丈夫だよ、手を出してくれた勇気が偉いよ、と言いたいです。
ただそれでもやっぱり知りたい、苦しいけど真実をきっちり見たい。この本はそんな人にもお勧めしたい本なのです。
「私の二・二六事件ー弟の自決」(著 河野司)
カテゴリ:「二・二六事件」
おすすめ年代:中学生~高校生
弟は二・二六事件の反乱将校だったーーーーー。
大事な弟を割腹自殺で失った兄。弟は何を考え、何を成そうとしていたのか? 兄である著者は二・二六事件の真相を追いかけ始める。
私がこの本を勧めた理由のひとつに、著者の存在があります。著者は歴史研究家や教師などではなく、一般のサラリーマン。元からその道に精通している人ではなく、一から二・二六事件について調べ上げているので、「教えてくれている」というよりは「並走して細かく話してくれている」と言った方が良いかもしれません。
また青年将校の家族であったこと、弟が自殺に用いたナイフは兄が渡したものであったことなの、様々な要素が著者を駆り立て、綿密な記録を編み上げているのです。
二・二六事件について詳しくない方も、興味があるという方にもお勧めしたい一冊です。
余談ですが、同じく当館にある「226 昭和が最も熱く震えた日」には、弟氏が自決の際に用いた実際のナイフの写真が掲載されています。読んだ後だとまた辛い……
「日本の戦時下ジョーク集」(著:早坂隆)
カテゴリ:「日本」
おすすめ年代:中学生~高校生
以前も少し紹介させていただいた「日本の戦時下ジョーク集」。戦時中に残されたものは時代を映す、とはここで何回も書いていますが、ジョークもまたその一種。笑いのツボは時代によって違うのでは?と思うかもしれませんが、現在でも通用する笑いも、その時代だからこそ生まれた笑いの形もあるのです。
近代史にあまり詳しくない人でも、「時代で生まれた笑い」「なぜこういうジョークが生まれたか?どういう背景があったのか?」を言葉の端々から想像したり、考えてみたりするといいかもしれません。その思考を言葉にすればもう、読書感想文の完成です。
もちろん近代史に詳しい人は背景も込みでジョークを咀嚼し、思ったこと、考えたことを書いてみるのも良いかもしれませんね。
「パイプのけむりシリーズ」(著 團伊玖磨)
カテゴリ:随筆
おすすめ年代:小学生高学年~高校生
「大人ならではの美味しさ」っていうのはあると思います。それはお酒のお供のおつまみだったり、苦味が強かったり、酸味があったり。ただああいう大人ならではのおいしいものって、基本的には子供が食べてもピンとしないと思うんですよ。
しかし、中には「ものすごくおいしい!なんだこれ!?」って思う子もいると思うのです。それこそ普通の菓子じゃ物足りなくなるくらい、「あれ、また食べたいなあ」って思ってしまうくらい、記憶に刻み付けられると言いますか。
そういうのって年を重ねても、「あの時食べたやつ、おいしかったな」と感情として、そして実感として自分の中に浸透し、残っていくのだと思います。
「パイプのけむり」は、そんな贅沢な味がするエッセイ集です。
小学生の皆さんには「あの時読んだ本、全部はわからなかったけど美味しかったな……」と思ってほしいし、中学・高校の皆さんはもう舌が肥えていると思うので、「あ、これ美味しい。こういう美味しさって新鮮」なんて思ってほしいのです。その美味しさは、いまのうちだからこそ楽しめる美味しさの一種であると思うので。
「帰らざる夏」(著 加賀乙彦)
カテゴリ:小説
おすすめ年代:高校生
陸軍幼年学校を舞台にした、時代に翻弄された少年の話。
こちらは小説ですね、言葉を借りてしまうと、「戦時下の特異な青春」の長編小説です。少年たちの心情や生きた背景の細やかさ、そして戦争によってゆがめられた価値観や考え方に心を痛めながら読み進めてしまいます。平和な時代に生きているからこそ、「どうして」と思うことがたくさんあると思うのです。そのやるせなさを、思ったことを言葉にすることこそ、戦争について考えることであり、「帰らざる夏」を読み終わったあなた自身への処方箋にもなるのです。
ちょっと文体が固めなのでおすすめ年代は高校生とさせて頂きましたが、できたら色々な年代の人に読んでほしい一冊です。ちょうどこの話に出てくる彼らも同じぐらいの年なので、心情的にも理解できる部分・時代ゆえに理解できない部分を見つけて、登場人物たちを身近に感じてほしいのです。
また「愛」の話でもあるのですが、このあたりになると一気に私の語彙が下がるので……一言で言うと「美しさと哀しさ」の描写が凄まじいです。実はこれ、高校の時に一度読んだことがあるのですが、以来ずっと夏が来るたび思いだす作品のひとつなんですよね。そのくらい鮮烈で、濃い影を残しています。
ちなみに検索すると普通にネタバレが出てくるので、読む人はまっさらな状態で、検索せずに手を出して欲しいですね。
いかがでしたでしょうか。できるだけお近くの図書室や本屋さんでも入手可能な本を中心に選ばせていただきました。
ちなみに「永遠の図書室」、実は学生さんは何時間でも無料となっております。お近くの方、じっくり本を選びたい方はぜひお越しくださるとうれしいですね。
それでは学生の皆さん、良い夏休みを。
アクセス
永遠の図書室
住所:千葉県館山市北条1057 CIRCUS1階
電話番号:0470-29-7982
営業時間:13時~16時(土日祝のみ17時まで) 月火定休日
システム:開館30分までの滞在は無料、それ以降は一時間ごとに500円かかります。
駐車場:建物左側にあります、元館山中央外科内科跡地にお停めできます。
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