突然死の原因

日本での突然死の95%が心臓による突然死です。なんと1日に約200人、7分に1人が心臓突然死で亡くなっています。
そしてその原因の90%が心室細動(VF)と呼ばれるものです。

心臓は全身へ血液を送り出すいわばポンプの役目をしています。ところがこのポンプ(心室)が細かく痙攣して、血液を全身に送り出せなくなった状態が心室細動です。見かけでは心臓が止まっている様に見えるので心停止と言いますが、実際には細かく痙攣している状態です。

心室細動に陥ると数秒で意識を失い、対処しないと全身の痙攣、また脳に酸素が届かない為、重篤な脳障害も引き起こし、命に危険を及ぼします。

AEDの救命効果

実はこの心室細動を取り除くには電気をかける以外方法がありません。

人口呼吸や心臓マッサージ(胸骨圧迫)をいくらおこなったところで心臓本来の機能は回復しません。人口呼吸や心臓マッサージの目的は救命率の高い時間を伸ばすことです。(大体6分間)

すなわち1秒でも早く電気をかける必要があり、それを可能にしたのがAED(自動体外式除細動器)であり、出来れば3分以内に使用する事が求められます。
そしてAEDを用いれば心停止の50%以上が救われ、その内85%が社会復帰する事が可能です

画像: AEDの救命効果

この救命効果を裏付ける事例として
平成17年の愛知万博(愛地球博)と毎年開催される東京マラソンがあります。
前者では心臓が原因で倒れた患者4名中4名が
AEDにより救命されました。
後者の東京マラソンでも競技中に心停止になったランナーが複数名いますが、その全てはAED
によって救命されています。
つまりAEDにより人の命が100%助かっているのです。

AEDに関する誤解

専門資格や特別な医療知識・技術を必要とせず誰でもどこでも救命が行える革命的な救命具であるAEDですが様々な誤解もあります。
ここではその誤解を取り除き、有用な知識をお伝えしていきます。

・通電時に体に触れると確実に感電し気絶 (誤解)

大前提としてAEDによる心電図解析中、また通電時に傷病者に触れてはいけません(理由は下記、"AEDの心電図解析"にて説明しています)

万が一触れてしまった!
こういった場合でも、AEDは基本的に電極パッドと電極パッドの間にしか電気は流れていないため、気絶するまでに至ることはほぼありません。

・貴金属を身につけていると火傷 (誤解)

これも同様の理由です。ネックレスを付けているからといって通電時に火傷はしません。

・女性の場合、下着(ホック)がショートし火傷するため下着は外す (誤解)

先にも述べた通り、電極パッド間にしか通電しない為、ホックがショートし火傷する事はありません。素肌に電極パッドを正しく貼れさえすれば電気は流れます。その為、わざわざ服を脱がせたり下着を外す必要もありません。

ここで大切な事を一つ。

AEDの心電図解析中(傷病者から離れてくださいなどの音声ガイド中)は絶対に傷病者に触れないで下さい。
例えば自分が着ている服の一部でも触れるとAEDは電極パッドが正しく装着されていないと認識してしまいます。これは傷病者に服などを通して、他の人の体から発生している電気信号が伝わってしまうからです。
そうなると正しく心電図解析が出来ず、結果として電気をかけることが出来なくなってしまいます。

普及率と課題

AEDはホテル、ショッピングモールやデパートなどの大規模施設。空港や駅構内、また学校などにも設置され、目にする機会も多くなったと思います。

事実、日本国内に設置されているAEDの台数は約60万台と言われており、これは世界No.1の普及率となっています。
しかし、
○ AEDを設置した場所の登録が義務化されていない。
○ どこにAEDがあるか把握しきれない。
○ 一般市民が率先して使える救命具にはなりきっていない(救命教育の課題)
など十分に活用できていない現状があります。
こういった課題に対する方策として

・設置場所を義務化する自治体
・AED適性配置に関するガイドライン提示
・AED配置情報がわかるアプリ
・最新鋭で実践的内容の救命講習

などが課題解決に向けて進められたり、実施されています。

AEDまとめ

非医療従事者でも心停止した人を誰でもどこでも救命する事を可能にした革命的な救命具であるAED。
しかし実際は十分に活用されているとは言い難いのが現状です。その理由としては先にもありましたが、それよりも大きな要因はAEDを使用する際のためらいではないかと考えます。
これは人の意志に関わる部分であり、直ぐには変えられません。

ただ、目の前で倒れている人があなたのかけがえのない友人、恋人、家族だったら‥

それでも、あなたはためらっているでしょうか? そこにAEDという命を助ける道具があるにも関わらずに‥。

このような現状を変えていくためにも防災教育や日々の啓発活動、救命講習を通じて、一人ひとりが有用な知識と技術を身につける事が必要です。
そうする事でためらいが無くなり、何より救命への意志が強くなっていくと考えます。

改めて言うと大切な事は、目の前の命を救おうとするあなたの意志であり行動です。
そしてそれを実現出来る可能性を持った救命具こそがAEDなのです。

参考資料
・我が国におけるAEDの実態.効果.展望(論文)
・総務省消防庁:令和2年版救急.救助の現況
・公益財団法人 日本AED財団 : AEDの知識
・コンバット・メディックの最前線(書籍)

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