政府は12月27日の閣議で令和7年度予算案を決定した。防衛関係費は、前年度比9.4%増の8兆7005億円(米軍再編関係経費などを含む)となり、過去最大を更新した。厳しさを増す日本の安全保障環境を踏まえ、令和5年度から5年間の防衛費総額を43兆円とした「国家防衛戦略」、「防衛力整備計画」に基づくもので、7つの重点分野をさらに推進させる。具体的には、衛星コンステレーションの構築などによるスタンド・オフ防衛能力の強化、島嶼(しょ)部などへの輸送にかかる各種輸送船舶の取得や民間船舶の活用など「南西シフト」に向けた態勢づくりを強化する。また、石破茂首相が掲げる自衛官の処遇改善への取り組みへの対策費用なども織り込まれた。

 7年度は「安保3文書」の改定から3年目。防衛費は5年度からの5年間で総額43兆円としており、このうち、措置されるのは7年度予算までで約62%(契約ベース)を占める。米軍再編関係経費などを除いた額も、8兆4748億円と過去最大となった。

 予算案では、①スタンド・オフ防衛能力②統合防空ミサイル防衛能力③無人アセット防衛能力④領域横断作戦能力(宇宙・サイバー・陸海空領域)⑤指揮統制・情報関連機能⑥機動展開能力・国民保護⑦持続性・強靭(きょうじん)性(弾薬・維持整備・施設の強靭化)-の7つの重点分野を高めるため、引き続き所要の措置を取る。

 防衛省は「戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面しているという基本認識の下、防衛力抜本的強化の実現に向け、引き続き必要かつ十分な予算を確保した」としている。

 重点分野では、6年度に引き続き、敵のミサイル拠点などをたたく反撃能力(敵基地攻撃能力)を持つ各種スタンド・オフ・ミサイルの整備に約9390億円を計上した。

 具体的には、12式地対艦誘導弾能力向上型(地発型)の地上装置などの取得(2式・169億円)や潜水艦発射型誘導弾の取得(30億円)に着手するほか、一定の軌道上に多数の小型人工衛星を連携させて一体的に運用する「衛星コンステレーション」の構築に2832億円を計上した。

 また、統合防空ミサイル防衛能力の事業には、約5331億円が充てられる。各種ミサイルや航空機などの多様化・複雑化・高度化する経空脅威に適切に対処するため、探知・追尾能力の向上や、ネットワーク化による効率的対処の実現、迎撃能力の強化を目指す。

 さらに、従来、有人アセットが担っていた業務の効率化や、無人アセットの導入により、新たに可能となる形態のオペレーションに無人アセットを活用することで、陸上・水上・水中・空中における非対称的な優勢を確保するための費用として、約1110億円を計上した。

 領域横断作戦能力(宇宙領域)では、運用中のXバンド防衛通信衛星「きらめき2号」の後継機として、通信能力などが向上された次期防衛通信衛星の整備費1238億円を盛り込むなど、宇宙領域における能力強化費として約5403億円が認められた。

 「新領域」の能力強化では、とくにサイバー領域に約2927億円を盛り込んだ。高度化・巧妙化するサイバー攻撃に対し、将来にわたって適切に対処する能力を獲得し、自衛隊の任務遂行を保障できる態勢を確立するととともに、防衛産業のサイバー防衛を下支えできる態勢を構築する。とくに、小型無人機などへの対処として、新たな脅威に対応可能な艦載用レーザーシステムの研究に183億円を計上した。 

 喫緊の課題となっている南西諸島など島嶼(しょ)部対策などにかかる「機動展開能力と国民保護」には約4545億円を計上。部隊を迅速に機動展開する能力を構築し、島嶼部などへ必要な部隊などを確実に輸送するために、民間船舶4隻の確保に396億円を計上した。民間船舶は現在の2隻から6隻体制となる。 

 また、島嶼部への海上輸送能力強化のため、中型級船舶・小型級船舶・機動舟艇を1隻ずつ計203億円で取得。今年度中にも編成される予定の共同部隊「自衛隊海上輸送群(仮称)」で運用する。

 令和2年度から開始した次期戦闘機の開発には、1087億円を計上した。7年度は日英伊3カ国がそれぞれ実施していた機体、エンジンの設計などの作業を実施するほか、開発と並行して、次期戦闘機に搭載する次期中距離空対空誘導弾を開発する方針だ。

 このほか、長期間戦い続ける「継戦能力」の強化など、自衛隊の運用を円滑にするため、「弾薬の確保」として約7675億円を確保した。

 来年度予算案では、石破首相が強く主張している自衛官の人的基盤に向け、取り組みを加速させるための体制づくりにも注力する。

 自衛官の現下の厳しい募集状況に鑑み、6年10月に設置された「自衛官の処遇・勤務環境の改善及び新たな生涯設計の確立に関する関係閣僚会議」で取りまとめられた基本方針を踏まえ、関連事業に係る経費として4097億円を計上した。

 具体的には、①過去に例のない30を超える手当などの新設、金額の引き上げなどの「自衛官の処遇改善」(167億円)②組織文化の改革や駐屯地・基地などにおける無線LAN環境の拡充、主要艦艇における商用低軌道衛星通信網を活用した通信環境の改善など、若い世代のライフスタイルに合った「生活・勤務環境の改善(3878億円)」③再就職先の拡充など「新たな生涯設計の確立(19億円)」-など。

 このほか、SNSやターゲティング広告などの募集広報のデジタル化・オンライン化を推進や地本の体制を充実させる費用(32億円)も盛り込まれた。

 防衛省は「自衛官であること、また、自衛官であったことの誇りと名誉を得ることができるような、令和の時代にふさわしい処遇を確立していく」としている。

 


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