心理的ストレスの緩和図る
5日朝、胎内市に所在する養鶏場で鳥インフルエンザの疑いが発生し、6日、検査の結果、鳥インフルエンザ陽性が確定。30普連長は新潟県知事から鶏の殺処分などの支援に係る災害派遣要請を、同日午前8時に受理した。
30普連は災害派遣活動開始にあたり、5日に県庁へ連絡員を派遣して情報収集をするとともに、6日早朝、養鶏場へ部隊を派遣して活動を開始した。
活動は隊員約180人が12化防の防疫指導の下、ローテーションにより24時間態勢で行い、殺処分となる約35万羽のうち、鳥インフルエンザ発生鶏舎、隣接鶏舎の約14万羽を担当した。
活動は3日間にわたって行われたが、じ後の防疫処置は自治体のみで可能となったことから、8日午後9時、県知事より災害派遣撤収要請を受けて、活動を終了した。
活動期間中は、メンタルヘルスケア対策の一環として「解除ミーティング」を行った。現場から駐屯地へ帰隊後も、活動を通して体感したことや感情を同じ現場で活動したグループごとで話し合い、心理的なストレスの緩和を図った。
<編集部より>
自衛隊といえば、災害派遣です。最大の任務である「国防」がありますが、多くの国民にとっては今、自衛隊に大きな期待が寄せられる最重要任務の一つとなりました。
「~なりました」というのは、近年、コロナ対策や鳥インフルエンザ、山や海での救難・救助に至るまで、災害派遣の対象となる事象が増加の一途をたどっていることにあります。それだけ、任務が自然災害にとどまらなくなっていることの証左でもあるといえるでしょう。
その鳥インフルもまた、毎年のように全国で発生します。防衛日報の本日(12月18日付)2面でも、陸上自衛隊12旅団30普連と12化学防護隊が新潟県胎内市で発生した案件で鶏の殺処分、衛生対応などにあたった報告を掲載しました。
こうした事例は拡大を防ぐためにも初動がとても重要です。自治体などと協力しながら、自らの衛生管理にも努め、180人が対応したとのことです。じ後の防疫処置などが自治体に任せることができるまで計8日間にわたって活動を続けました。
今回の報告を聞いて思うことがありました。
鶏の殺処分はやむを得ない方法ではありますが、そこには苦労して育てた養鶏場側の苦渋の選択があります。その心情に寄り添いながら処分をする隊員たちにもまた、さまざまな思いがあるでしょう。
もう一つ。厚生労働省などによれば、鳥インフル自体は文字通り、鳥が感染するインフルエンザウイルスです。通常、ヒト(人間)に感染することはないとされていますが、感染した鶏に濃厚接触をした場合には、きわめて稀(まれ)にヒトが感染することがあるとされています。任務では万全の防護態勢を取ってはいますが、やはり、じ後の対策には神経を使うことは言うまでもないことです。
12旅団の報告の最後のコメントには、上記の2つのことに関連しているような文言がありました。
「メンタルヘルスの一環として、『解除ミーティング』を行い、現場から駐屯地へ着隊後も、活動を通して体感したことや感情を同じ現場で活動したグループごとで話し合い、心理的なストレスの緩和を図った」と。
殺処分が任務の第一義であることは当然ですが、そこにはいろいろな感情が渦巻くとともに、衛生面での実体験が大きな経験となったことだと思います。
他記事は防衛日報PDF版をご覧ください。