<北海道>陸自7師団(師団長・松永陸将)は11月6日から7日にわたり、千歳、苫小牧両市で公道自走を含む長距離機動訓練を実施した。
公道自走も実施
訓練は、機動運用される師団として、運用の実効性を向上させるとともに、公道自走の実施に係る関係部外機関との連携強化を図ることを目的として実施した。
訓練部隊は、72戦車連隊、73戦車連隊、7偵察隊を基幹とし、11普連、7特科連隊、7高射特科連隊、7後方支援連隊から所要の部隊を配属して編成され、戦車、各種装甲車、装輪車が参加した。
各部隊は、東千歳駐から千歳、苫小牧両市の公道を安全かつ斉々と自走した後、北大演東千歳地区第2滑走路に開設した給油所、整備所で路傍給油、整備を実施した。
この間、東千歳駐正門、苫小牧市内の経路沿いでは、自治体の関係者をはじめ、自衛隊協力団体からあたたかい激励と声援があり、隊員の士気は大きく高揚した。
7師団は「日本国内のあらゆる地域に速やかに機動展開し、その強靭(きょうじん)性を発揮できるよう、陸上自衛隊唯一の機甲師団として与えられた任務を完遂すべく、日々の訓練に邁進(まいしん)していく」としている。
<編集部より>
自衛隊車両、とりわけ戦車が公道を走るというのはなかなかないことです。地域によっては「街中を走ること=戦争を想起させる」などのイメージが優先され、批判的に受け止められるところもあります。それは歴史的な背景などもからむ地域となれば、仕方のない部分でもあります。
しかし、現実的な問題からすれば有事の始まりは地域がある程度限定され、現在は全国に配備されている自衛隊の各部隊から「応援」の名の下、長距離移動をこなしながらその地に向かい、増強部隊の一員となって活動に入る。そんなケースが想定される以上、訓練は絶対に必要となるのです。
防衛日報の本日(12月3日付)2面に掲載した陸上自衛隊7師団の「長距離機動訓練」は、こうした想定を現実のものとして、いかに迅速に、いかに地域住民らに影響を与えずに、いかに関係機関と連携を強化できるのか、そして最終的には長距離を動けるかを確認したわけです。
千歳、苫小牧で公道自走や給油などをいざというときのため、戦車のほか各種装甲車や装輪車が参加し、交通量が少ない夜中を中心に移動し、所望の目的を果たしたようです。
7師団からは今回、報告とともに寄せられた写真の数々が時系列で寄せられました。夜を徹して活動し、車両が通った後には道路を清掃し、ある場所では沿道に自治体関係者らがノボリを掲げて見守り、訓練を後押ししてくれていました。
とくに、道路の清掃は「ご迷惑をお掛け致します。あとはきれいにしますので…」という思いの証しともいえるでしょう。冒頭にも述べましたが、自衛隊に対する消極的な声が依然として残る中、地域こそ違えど、一つの配慮というか義務的といってもいい対処なのだと個人的には思いました。
有事には日本国内、どの地域にも速やかに機動展開することは昨今の安全保障環境を考えれば、当然の訓練です。そこには、地域や関係機関の理解が欠かせません。報告と写真からもこうした7師団の思いが伝わってきました。
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