帰隊した隊員を、家族・部隊の仲間が出迎え
教育の実施にあたり、厳正な選抜試験に合格した隊員らは、前段教育で地図判読、破壊、生存技術、山地・水路・空路潜入などの技術、レンジャー隊員としての基礎的な知識・技能を習得するとともに、体力調整、障害走などを通じて、強靭(きょうじん)な 体力・精神力を涵養(かんよう)した。
また、後段教育では、行動訓練を通じて、敵地で独立して戦闘する遊撃部隊の潜入・襲撃・伏撃・離脱などの要領を習得し、レンジャー部隊として困難な状況を克服して任務完遂する能力を涵養した。
11月7日、最終想定の任務を終えた11人の隊員は、滝ケ原駐へ帰隊し、家族・部隊の仲間に見守られる中、富士教導団長に全ての任務を完了した旨を報告し、精強の証しであるレンジャー徽章を授与された。
富士教導団は「新たに誕生した11名のレンジャー隊員を含め、さらに一丸となって『前へ』進んでいきます」としている。
<編集部より>
陸上自衛隊で最も過酷といわれる部隊集合教育「レンジャー」。8月26日から実施していた富士駐屯地富士教導団の第54期教育で隊員たちは己の限界に挑戦し、11人の隊員が見事、11月7日、滝ケ原駐屯地へ帰隊しました。防衛日報の本日(11月28日付)2面の記事です。
同駐に所在する普通科教導連隊長を担任官に、前段で基礎的な知識や技能を習得するとともに、体力測定、障害走などをこなし、後段には困難な状況をどう克服するか。その能力を涵養(かんよう)しました。いわば、基礎編から応用編まで、そして、最終想定までの任務を終え、晴れてレンジャー隊員の証しである徽(き)章を授与されました。
かつて、レンジャー教育の一部に同行取材をさせてもらったことがあります。それはそれは、過酷の一言でさえもすまされないほどの訓練でした。ざっくりといえば、部隊が行うさまざまな訓練をある一定期間にまとめ、さらにその内容を豊富にし(隊員にすれば、より苦しくなる)、担当の助教の檄(げき)は気合が入る分、倍加されます。冒頭に安易に「己の限界」という言葉を使ってしまいましたが、見ているだけの自分でさえもその激しさをヒシヒシと感じる、そんな肉体的にも、精神的にも追い込まれるような状況です。
ここで誤解を恐れずに、経験がある野球にたとえるとしたら、普段の放課後の練習の50本ノックが、合宿になると一気に「1000本ノック」になるようなもの。そればかりか、ほかのプレーの反復練習も半端なく増え、それこそ疲労の極致となります。もちろん、自衛隊のレンジャーと野球の練習とは天と地ほどの差があることを承知の上のあくまでも一つのたとえと思っていただけばですが、さすがに、その時は体が動かず、限界という状況を初めて感じた瞬間でもありました。
今回の富士教導団の選ばれし11人は自ら望んだ道とはいえ、極限の世界に毎日のようにいながら、来る日も来る日も過酷な日々をひたすら追い続ける約2カ月余りの期間を乗り越えました。
人間、限界だと思うような状況に陥ることは稀(まれ)かもしれません。限界近くにまで達する境地となる中、乗り越えた11人の選ばれし精鋭たち。その体力、精神力にはただただ、首(こうべ)を垂(た)れるのみです。
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