人型模型のリアルさに驚く...広報官
自衛隊の11/2トン救急車(アンビ)の見学では、参加者は車両・装備についての説明をメモを取りながら真剣な面持ちで聞いていた。説明後は実際に担架に横たわってみたり、乗車人数や上下2段の搬送用ベッドなど一般の救急車との違いについてなどの質問が飛び交った。
衛生技術体験では、負傷状態を再現した精緻な人型模型を使用して実習が行われた。参加者は医療関係の学校に通っている人が多く、人型模型のリアルさに驚く広報官をよそに、それぞれが冷静にしっかりと模型に対し、救急法、止血法を施術していた。
また、自衛隊の施設内に入ったことを喜び、売店の自衛隊グッズにも興味を示した参加者もいた。
川崎所は「衛生科という自衛隊の専門的な分野を知っていただいた。今後も、受験につながる興味のある分野を紹介し、自衛隊への理解と関心を高めていけるよう活動していきたい」としている。
<編集部より>
自衛隊の職種の多さは際立っているといえます。その中でも「自衛隊衛生」の中心的な役割を担っている陸上自衛隊衛生学校を募集対象者たちが見学しました。防衛日報の本日(10月3日付)1面で掲載した神奈川地本川崎出張所の報告です。
川崎所が引率した参加者の多くは医療関係の学校に通っており、自衛隊の救急車を見学したり、人体模型を使った衛生技術体験では救急法や止血法などを「施術」したようです。自分の学校でも机上を含め、さまざまな教育を受けていると思いますが、自衛隊の実際の教育機関となると、やはり勝手は違うものです。訓練や災害派遣などの活動による負傷者の手当てなど、まさに自衛隊の実際の任務に向けた教育現場ですから。
参加者の中には自衛隊を希望する学生もいたことでしょう。「百聞は一見に如(し)かず」であるばかりか、見るだけでなく体験するわけですから、緊張感はたっぷりです。それでも、記事中の「人体模型のリアルさに驚く広報官をよそに、冷静に対応していた」という内容は、衛生職種への進路に対する学生たちの意識の高さを感じることができました。
冒頭の職種についていえば、衛生科の隊員は、医官(医師)、歯科医官(歯科医師)、看護官(看護師・准看護師)、薬剤官(薬剤師)、医療系技官などがあり、衛生科部隊や駐屯地の医務室、自衛隊病院などに配置され、傷病者の治療に従事しています。近年では海外での大規模災害における国際緊急援助活動でも活躍していることは、ニュースなのでも取り上げられることがあります。
こうした自衛隊員の健康を守るのが衛生科であり、隊員の活動に支障がないようにする極めて重要な任務ですから、隊員に限らず自衛隊という組織をも守っているのです。衛生学校はこうした衛生科隊員に対して、任務遂行に必要な知識と技能を習得させるための教育訓練や調査研究を行っています。
所在する三宿駐屯地(東京都世田谷区)といえば、自衛隊中央病院をはじめとする、衛生関係の機関や部隊とそれを支える組織が集結している自衛隊衛生の「総本山」的な場所。自衛隊希望でなくても、この日の参加者には、こうした場所に足を運び、自分の目で見て、聞いて、体験するというこの上ない経験となったに違いありません。
国家・国民を守る自衛隊、隊員一人ひとりを守る衛生科隊員、その衛生科隊員を育てる衛生学校―。衛生の名の下、一つにつながる自衛隊の職種の素晴らしさを参加者が感じ、一人でも多くの人が自衛隊の門をくぐってほしいものだと願うばかりです。
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